『ベルソムラ』と『ロゼレム』、新しい睡眠薬の違いは?~作用のメカニズムと「ベンゾジアゼピン系」の薬との差
記事の内容
回答:『ベルソムラ』は覚醒を司る「オレキシン」、『ロゼレム』は体内時計を司る「メラトニン」に作用する
『ベルソムラ(一般名:スボレキサント)』と『ロゼレム(一般名:ラメルテオン)』は、どちらも不眠の治療に使う睡眠薬です。
『ベルソムラ』は、「覚醒」を司る「オレキシン」をブロックする睡眠薬です。寝付きの悪い「入眠障害」と、熟睡できない「中途覚醒」の両方に効果があります。
『ロゼレム』は、「体内時計」を司る「メラトニン」の働きを助ける睡眠薬です。特に、昼夜逆転しているような不眠症に効果的です。
どちらも従来の「ベンゾジアゼピン系」の睡眠薬とは異なる作用を持つ新しい睡眠薬です。それぞれ作用が異なるため、不眠の症状によって使い分けます。
回答の根拠①:『ベルソムラ』の効果と「オレキシン」
「オレキシン」は、脳の「覚醒」を維持するために重要な働きをしています。『ベルソムラ』は、この「オレキシン」の作用をブロックすることで、脳を「覚醒」から「睡眠」の方向へと傾ける新しいタイプの睡眠薬です1)。
1) ベルソムラ錠 インタビューフォーム
従来の「ベンゾジアゼピン系」の睡眠薬では、寝付きの悪い「入眠障害」には作用時間の短いもの、熟睡できない「中途覚醒」には作用時間の長いもの、といったように、使い分けや併用をする必要がありました。
しかし、『ベルソムラ』は「入眠障害」と「中途覚醒」の両方に効果があり2)、こうした睡眠薬の多剤併用を減らせる薬としても期待されています。
2) Biol Psychiatry.79(2):136-48,(2016) PMID:25526970
副作用や相互作用も多いことに注意
『ベルソムラ』は、副作用で悪夢を見ることがしばしばあります1)。
また、代謝・分解が主に「CYP3A」で行われるため、飲み合わせの悪い薬(併用禁忌)が非常にたくさんあります1)。
他にも、突然の急な睡魔に襲われる「ナルコレプシー」の症状を悪化させる恐れがあるなど、扱いは難しく、「ベンゾジアゼピン系」の睡眠薬より全ての点で優れた新薬というわけではありません。
回答の根拠②:『ロゼレム』の効果と「メラトニン」
「メラトニン」は、眼からの光刺激(主に太陽光)で分解されるため、日中に減って夜間に増えます。この増減リズムによって、脳は「体内時計」を調節しています。
『ロゼレム』はこの「メラトニン」の働きを助けることで、「体内時計」を「夜」に調節し、眠気を誘う睡眠薬です3)。
3) ロゼレム錠 添付文書
作用の特徴上、特に昼夜逆転してしまっているような不眠症に効果的です。また、オリンピック選手の「時差ボケ」防止として、『ロゼレム』を強い光刺激と組み合わせる方法も紹介されています4)。
4) 公益財団法人日本オリンピック委員会 「JOC Conditioning Guide for Rio 2016」
副作用も少ないが、単独では効き目も弱い
『ロゼレム』は、従来の「ベンゾジアゼピン系」の睡眠薬と異なり、日中に眠くなることが少なく、また「筋弛緩作用」もないため夜中にふらつく心配もありません5)。
また、「ベンゾジアゼピン系」の睡眠薬で問題となる「せん妄」を防ぐ効果も報告されています6)。
5) J Clin Sleep Med.5(1):34-40,(2009) PMID:19317379
6) JAMA Psychiatry.71(4):397-403,(2014) PMID:24554232
このように『ロゼレム』は副作用の少ない薬ですが、単独では効き目も弱い7)ため、神経症的な傾向が強い不眠症には「ベンゾジアゼピン系」の睡眠薬を使うなど、症状に合わせて使い分ける必要があります。
7) 日本睡眠学会 「睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン (2013)」
薬剤師としてのアドバイス:今の睡眠薬は安全性も高いが、ずっと使い続けるものでもない
眠れない状態は、心身ともに大きな悪影響を与えます。必要に応じて睡眠薬の力を借り、適切な睡眠を確保することは非常に大切です。
今の睡眠薬は、昔の睡眠薬よりも遥かに安全性が高いため、副作用を怖がって余計な我慢をする必要はありません。
しかし、睡眠薬はずっと使い続けるものでもありません。あくまで一時的な避難として使うに留め、「薬がなければ眠れない」と頼り切りにならないよう注意しなければなりません。
そのため、睡眠薬と併せて、不眠の原因となっているような生活習慣の改善を行う必要があります。
また、睡眠薬には正しい減らし方・止め方があります。自己判断で飲み方を変えてしまうと、それによって副作用が起こる恐れもあります。必ず、主治医の指導のもとで薬を減らしていくようにしてください。
ポイントのまとめ
1. 『ベルソムラ』は「オレキシン」、『ロゼレム』は「メラトニン」に作用する、新しいタイプの睡眠薬
2. 『ベルソムラ』は、入眠障害と中途覚醒の両方に効果があるが、副作用や相互作用も多い
3. 『ロゼレム』は、特に昼夜逆転・時差ボケに有効で、副作用も少ないが、効き目はやさしめ
添付文書、インタビューフォーム記載内容の比較
◆薬効分類
ベルソムラ:オレキシン受容体拮抗薬
ロゼレム:メラトニン受容体作動薬
◆適応症
ベルソムラ:不眠症
ロゼレム:不眠症における入眠困難の改善
◆用法
ベルソムラ:就寝直前
ロゼレム:就寝前
◆併用禁忌の薬
ベルソムラ:CYP3Aを阻害する薬物全般(例:イトラコナゾール・クラリスロマイシン・リトナビル・サキナビル・ネルフィナビル・インジナビル・テラプレビル・ボリコナゾール)
ロゼレム:フルボキサミン
◆食事の影響
ベルソムラ:AUCに影響なし
ロゼレム:食直後ではCmaxが16%低下
◆剤型の種類
ベルソムラ:錠(10mg、15mg、20mg)
ロゼレム:錠(8mg)
◆製造販売元
ベルソムラ:MSD
ロゼレム:武田薬品工業
+αの情報:『ロゼレム』はいつ飲むのが良いか?
規則的な生活をしていると、就寝の約2時間前から「メラトニン」が分泌され始める、とされています8)。
8) Continuum (Minneap Minn).19(1 Sleep Disorders):132-47,(2013) PMID:23385698
このことから、『ロゼレム』は他の睡眠薬と異なり、およそ就寝の1~2時間前に飲んでおくのが良いと考えられます。
ただし、食事のすぐ後に服用すると吸収が悪い3)ため、食事中や食直後の服用は避ける必要があります。また、『ロゼレム』を飲んだ後は「メラトニン」の作用を助けるために、パソコンやスマートホンなどの明るい液晶画面を見ることは避けることをお勧めします。
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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