子どもの熱に『カロナール』を使ったが効かない。追加で飲ませるべき?~解熱薬で平熱まで熱を下げる必要はない
記事の内容
回答:まず、4時間は待つ必要がある
『カロナール(一般名:アセトアミノフェン)』を追加で飲む場合、前の服用から最低でも4時間(できれば6時間程度)の間隔をあける必要があります。
またその際、熱冷ましの薬(解熱薬)を使う目的は、「高熱による辛さを解消すること」であって、「体温を平熱まで下げること」ではないことにも注意が必要です。
回答の根拠:「効かない」と感じるのは何故か?
『カロナール』などの解熱薬が効かないと感じる場合、その状況は主に以下の3つのケースが考えられます。
①薬を飲んでも、熱が少ししか下がらない
②薬がまだ効き始めていない
③まだ熱が上がっている状態
①薬を飲んでも、熱が少ししか下がらない
『カロナール』などの解熱薬は、「36~37℃程度の平熱まで熱を下げる」ような薬ではありません。効果には個人差がありますが、基本的に使用から1時間で0.7~1.3℃ほど体温を下げる効果とされています1)。
1) J Pediatr (Rio J).86(3):228-32,(2010) PMID:20436978
たとえ0.2~0.3℃程度しか下がらなかったとしても、高熱によるだるさ・辛さが少しでも和らぐのであれば、解熱薬を使う目的は十分に達せられている、と言えます。
②薬がまだ効き始めていない
『カロナール』などの「アセトアミノフェン」製剤には内服薬(飲み薬)と坐薬がありますが、どちらも1時間で1.0℃ほど体温を下げる、という効果に違いはありません1)。
内服薬でも坐薬でも、体内に吸収されて血中濃度が最大値になるまでには30~60ほどかかります2,3)。その間は、薬が効き始めるまでしばらく待つ必要があります。
2) カロナール細粒 添付文書
3) カロナール坐剤 添付文書
①まだ熱が上がっている状態
『カロナール』などの解熱薬を飲んでも熱が全く下がらない場合、確かに薬が合っていない可能性や量が不足している可能性を考えたくなります。しかし、基本的に子どもの解熱薬は体重に合わせて厳密な計算のもとに処方されるため、「薬が足りない」という可能性はあまり一般的ではありません。
※子どもの解熱薬の用量
「アセトアミノフェン」:10~15mg / kg
こういった場合、まだ「熱が上がり続けている状態」で解熱薬を使った、という可能性が考えられます。
つまり、薬を使っていなかったらもっと高熱になっていたところ、薬によって熱が上がらず、かといって下がりもしなかった、という状態です。
この場合、効果は目に見えないものの、薬の効果は得られていることになります。まだ高熱による辛さが残っているとしても、『カロナール』は次の服用まで最低でも4時間の間隔をあける必要があります2)。それまでの間は保冷剤を使うなど、薬以外の方法で対応することをお勧めします。
熱が上がっている状態での「解熱薬」は、悪寒が強まることがある
熱が上がっている時には、ヒトは「寒気」を感じる傾向にあります。この状態で解熱薬を使ったり身体を冷やしたりすると、この「寒気」がひどくなる恐れがあります。
『カロナール』などの解熱薬は、あくまで「高熱による辛さを和らげる」ための対症療法です。不快感が増すような場合は、無理に薬を使う必要はありません。
薬剤師としてのアドバイス:解熱薬は、「高熱による辛さ」を和らげるための対症療法
解熱薬のことを「平熱まで体温を下げる薬」や「発熱があれば必ず使わなければならない薬」と考えている人は少なくありません。
しかし、解熱薬はあくまで「高熱による辛さ」を和らげるための対症療法です。そもそも、発熱は細菌やウイルス感染に対する生体の防御反応のため、発熱時には平熱まで無理に体温を下げる必要もなければ、発熱していれば解熱薬を使わなければならないわけでもありません。
『カロナール』などの解熱薬は、高熱によって身体がだるい・つらい・眠れないといった場合に、その不快な症状を和らげる目的で、適宜使うようにしてください。
+αの情報①:インフルエンザの時は、『カロナール』を使う
インフルエンザの時の解熱剤としては『カロナール』が安全であると、日本小児神経学会から評価されています。他の『ロキソニン(一般名:ロキソプロフェン)』や『ボルタレン(一般名:ジクロフェナク)』などの解熱鎮痛薬は使用を避ける必要があります。
特に小児の場合、インフルエンザの時に『ロキソニン』などの解熱鎮痛薬を使うと、「インフルエンザ脳症」を起こす恐れがあります。
大人の場合は使用することもありますが、「インフルエンザ脳症」が起こらないわけではありません。家に『ロキソニン』や『ボルタレン』があるからといって、自己判断で使用しないようにしてください。
+αの情報②:痛みの場合は『ボルタレン』の坐薬という選択肢もある
『カロナール』の鎮痛効果は優しめです1)。そのため、痛みが強い場合には十分な効果が得られないこともあります。
その場合、1歳から使える強力な鎮痛薬として、坐薬の『ボルタレンサポ』があります。
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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