「虚血再灌流障害」とはどんなもの?~心筋梗塞やクラッシュ症候群の総称
回答:止まっていた血流が復帰した時に起こる障害
「虚血再灌流障害」とは、血流が止まることで酸素不足(虚血)になっていた組織に、血流が復帰(再灌流)することによって起こる障害のことです。急性心筋梗塞、脳梗塞などの血管トラブルや、阪神大震災で有名になった「クラッシュ症候群」などが当てはまります。
詳しい回答:虚血再灌流障害の仕組み
普段、血液は身体の隅々まで酸素や栄養を送り届けるために、絶えず全身を巡っています。心筋梗塞や脳梗塞では血管が細くなって詰まることで、「クラッシュ症候群」では物理的に圧迫されることによって、それぞれ血流が一時的に止められてしまいます。
血流が途絶えると、組織には新しい血液が送られてこなくなり、組織は酸素不足に陥ります。酸素不足がしばらく続くと、組織の細胞が壊れ始めてしまいます。
このとき、細胞からは内容物が外へと漏れ出してしまうことになります(参考:ネクローシス)。
ここで、血流を止めている原因が取り除かれると、血流が復帰(再灌流)します。この時、復帰した血流は、組織に蓄積していた”細胞からの流出物”を一緒に流していきます。
最も致命的な例を挙げると、筋肉の損傷によってカリウムが蓄積している場合です。この大量のカリウムが復帰した血流に乗って心臓へ戻ると、心臓の動きを止めてしまう事態が起こり得ます。
そこまで致命的でなくとも、急に回復した血流によって、あちこちに浮腫(むくみ)が起こります。更に、豊富に供給された酸素は「活性酸素」を作ります。この「活性酸素」が血流に乗ってあちこちの組織へダメージを与えます。
加えて、血流に含まれる白血球も刺激されて炎症反応を起こします。
こうした様々なダメージが全身のあちこちで生じることを、「虚血再灌流障害」と呼びます。
+αの情報:スカベンジャー
こうした「虚血再灌流障害」への対策としては現在、血流を復帰させる際に、活性酸素を除去する「(ラジカル)スカベンジャー」を一緒に流す方法がとられています。ビタミンE誘導体などの抗酸化薬、エンドセリン受容体拮抗薬、造血ホルモン「エリスロポエチン」など様々なものに「虚血再灌流障害」を防ぐ効果があると期待されています。
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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