腎機能を計算する方法は?~Cockcroft-Gault式とeGFRの共通点と、それぞれの弱点
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回答:eGFRは体表面積で補正した値
「クレアチニン・クリアランス(Ccr)」と「糸球体濾過量(GFR)」は、どちらも「体重」、「年齢」、「血清クレアチニン濃度」から推算することができます。(※eはestimated(推算)の意味です。)
「クレアチニン・クリアランス(Ccr)」の推算方法 (Cockcroft-Gault式)
男性のeCcr = {(140 - 年齢)×体重[kg]}÷(72 × 血清クレアチニン[mg/dL])
女性のeCcr = 男性のCcr × 0.85
※Cockcroft-Gault式(eCcr)は体重による変動が大きく、肥満傾向にある人の腎機能を過大評価してしまう恐れがあります。
「糸球体濾過量(GFR)」の推算方法 (体表面積(1.73m2)あたりの補正あり)
男性のeGFR = 194 × 血清クレアチニン[mg/dL]-1.094 × 年齢[歳]-0.287
女性のeGFR = 男性のeGFR × 0.739
※eGFRは小柄な高齢者の腎機能を過大評価してしまう恐れがあります。
一般的に、薬の投与計画を立てる際には、日本人の標準的な体格・体表面積で補正したeGFRの方が優れています。しかし、eGFRにも弱点があるため、それぞれの違いを把握しておく必要があります。
回答の根拠①:共通の弱点~男女で式が異なる理由
eCcrやeGFRは、共に「血清クレアチニン濃度」の値を使って推算します。
しかし、「クレアチニン」は筋肉の運動エネルギー源として、元から体内にある物質です。そのため、筋肉量の多い人ほど「血清クレアチニン濃度」が高くなる傾向があります。
その結果、筋肉質な人は腎機能が低下していないにも関わらず、eCcrやeGFRが低くなる(腎機能を過小評価する)傾向があります。
逆に、筋肉量が少ない女性や高齢者の場合、そのまま単純に計算するとeCcrやeGFRが高くなる(腎機能を過大評価する)傾向があります。(女性の場合、0.85や0.739をかけて補正します)
また、肉をたくさん食べたり、運動をすることによっても「クレアチニン」は簡単に増加します。逆に栄養状態が悪いと減少します。
こうした「腎機能以外の影響」によって大きく変動する値のため、推算したCcrやGFRはあくまで「推算値」であり、多少のズレが必ず含まれることを念頭に置く必要があります。
※通常、「血清クレアチニン濃度」は0.6mg/dL程度です。0.4よりも低い測定値だった場合には、「腎機能以外の影響」を考慮し、0.6を代入する方法も提唱されています1)。
1) 熊本大学薬学部付属育薬フロンティアセンター 「腎薬ニュース第10号」 (2012)
回答の根拠①:Cockcroft-Gault式(eCcr)の弱点
Cockcroft-Gault式(eCcr)は「体重」による変動が大きく、特に肥満傾向にある人の腎機能を過大評価してしまう恐れがあります。
例えば、同じ体重80kgの50歳男性が居たとします。
一人は筋肉質で「血清クレアチニン濃度」が 1.0mg/dL、もう一人は肥満傾向で「血清クレアチニン濃度」が 0.8mg/dLである場合、Ccrを計算すると、
この例ではどちらも腎機能に異常ありませんが、Cockcroft-Gault式(eCcr)では肥満傾向にある人の腎機能を高く評価する傾向があることがわかります。
回答の根拠②:eGFRの弱点
eGFRは小柄な高齢者の腎機能を過大評価してしまう恐れがあります。
例えば、体重40kg、血清クレアチニン値 0.4mg/dLの80歳女性が居たとします。この人のCcrとGFRを計算すると、
eCcr = 70 (軽度低下)
eGFR = 111 (正常値)
となり、腎機能評価に差が出ます。
このとき、「eGFRの方が、体表面積で補正されているので正確だろう」と安易に判断することは危険です。この例のような小柄な高齢者の場合、eGFRが高く算出され、腎機能を過大評価してしまう恐れがあります。
+αの情報:eGFRは、日本人の標準的な体格で補正されている
eGFRは、日本人の標準的な体格(身長170cm、体重63kg)の体表面積(1.73m2)で補正されています。そのため、厳密に推算するためには、自分の身長・体重によって補正する必要もあります。
※Du Bois公式
体表面積[m2]=71.84 × 身長[cm]0.725 × 体重[kg]0.425 ×100-4
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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