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抗血小板薬 似た薬の違い

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『エフィエント』と『プラビックス』、新旧の抗血小板薬の違いは?~代謝酵素による個人差

回答:『エフィエント』は、『プラビックス』の個人差を小さくした改良版

 『エフィエント(一般名:プラスグレル)』と『プラビックス(一般名:クロピドグレル)』は、どちらも血液をサラサラにする抗血小板薬です。

 『エフィエント』は、遺伝的素質や持病・生活習慣で効き目に個人差が出ないよう、『プラビックス』を改良した薬です。
エフィエントとプラビックス
 ただし、新薬である『エフィエント』は値段も高く、また使用実績や適応症の広さは『プラビックス』の方が優れています。

回答の根拠①:『エフィエント』の個人差~「CYP2C19」の影響

 『プラビックス』は、そのままの構造では薬として作用しません。吸収された後、主に肝臓の代謝酵素「CYP2C19」による代謝を受けて初めて、薬としての作用を発揮するようになります1)。
 そのため、この酵素が働く人と働かない人の間では『プラビックス』の効果に差が生じてしまいます。いくつかの臨床試験では、実際の治療効果に差が生じることも報告されています1)。
プラビックス~CYP2C19による個人差
 1) プラビックス錠 添付文書

 特に、日本人の約20%はこの「CYP2C19」の働きが遺伝的に弱いことから2)、『プラビックス』で個人差が生まれてしまう最大の原因となっています。

 2) Pharmacogenomics.8(9):1199-210,(2007) PMID:17924835 

 一方で『エフィエント』は、この「CYP2C19」をはじめとする代謝酵素や、肝機能・腎機能、喫煙の有無などによって効き目に影響しないことが確認されています3)。
エフィエント~代謝酵素、腎肝機能、喫煙

 3) エフィエント錠 インタビューフォーム

 つまり、『エフィエント』は遺伝的素質や持病、生活習慣などによって効果に個人差が出にくい、多くの人に安定した効果を発揮する薬と言えます。

「アスピリン」との併用効果も高い

 『エフィエント』と『プラビックス』は、どちらも『バイアスピリン(一般名:アスピリン)』などの「アスピリン」製剤と併用されます。
 このとき、『エフィエント』+「アスピリン」の治療効果は、『プラビックス』+「アスピリン」の効果よりも高かったことが報告されています4)。

 4) N Engl J Med.357(20):2001-15,(2007) PMID:17982182

回答の根拠②:『プラビックス』の広い適応症

 『エフィエント』は新しい薬のため、まだ「心臓」領域にしか適応症はありません。
 しかし『プラビックス』は古い分、既に世界でも広く使用され、使用実績が豊富です。そのため、「脳」・「心臓」・「末梢」の3つの領域で適応症を持っています(※ジェネリック医薬品では異なる場合があります)。
プラビックスとエフィエント~適応症
※エフィエントの適応症
5)
心臓・・・経皮的冠動脈形成術(PCI)が適用される急性冠症候群、安定狭心症、陳旧性心筋梗塞

※プラビックスの適応症 1)
心臓・・・経皮的冠動脈形成術(PCI)が適用される急性冠症候群、安定狭心症、陳旧性心筋梗塞
脳・・・・・虚血性脳血管障害(心原性脳塞栓症を除く)の再発抑制
末梢・・・末梢動脈疾患における血栓・塞栓形成の抑制

 5) エフィエント錠 添付文書

薬剤師としてのアドバイス:出血の恐れがある手術前には休薬が必要

 『エフィエント』や『プラビックス』といった抗血小板薬は、血液を固まりにくくする薬なので、出血もしやすくなります。
 そのため、内視鏡処置や抜歯など、出血する恐れのある処置を受ける場合には、事前に薬を中止あるいは減量するなど、適切な対応をしておく必要があります。

 特に、抗血小板薬は薬を止めてもしばらく効果が続くため、一般的には処置の7~14日前から対応しておく必要があります。
 処置の前日になってからでは遅いので、できるだけ早めに医師に薬の内容を伝えるようにしてください。

 また、処置があっても状況によっては薬を中止・減量しないこともあります。自己判断で薬の量を変えたりしないようにしてください。

ポイントのまとめ

1. 『エフィエント』は、「CYP2C19」が働かない約20%の日本人でも、十分な効き目を発揮する
2. 『エフィエント』は、他の代謝酵素や腎臓・肝臓の機能、喫煙などの影響も受けない
3. 『プラビックス』は「心臓」だけでなく、「脳」と「末梢」にも適応がある

添付文書・インタビューフォーム記載事項の比較

◆有効成分
エフィエント:プラスグレル
プラビックス:クロピドグレル

◆適応症
エフィエント:
 1.心臓・・・経皮的冠動脈形成術(PCI)が適用される急性冠症候群、安定狭心症、陳旧性心筋梗塞
プラビックス:
 1.脳・・・・・虚血性脳血管障害(心原性脳塞栓症を除く)の再発抑制
 2.心臓・・・経皮的冠動脈形成術(PCI)が適用される急性冠症候群、安定狭心症、陳旧性心筋梗塞
 3.末梢・・・末梢動脈疾患における血栓・塞栓形成の抑制

◆用法
エフィエント:1日1回
プラビックス:1日1回

◆薬物代謝酵素(CYP2C19)を阻害する薬剤との併用注意
エフィエント:なし
プラビックス:併用注意の記載あり

◆錠剤の種類
エフィエント:錠(2.5mg、3.75mg、5mg、20mg)
プラビックス:錠(25mg、75mg)

◆製造販売元
エフィエント:第一三共
プラビックス:サノフィ

+αの情報①:『パナルジン』→『プラビックス』→『エフィエント』の改良

 チエノピリジン系の抗血小板薬は、『パナルジン(一般名:チクロピジン)』から、副作用を減らした『プラビックス』、更に個人差を減らした『エフィエント』と、少しずつ進化してきています。
パナルジン~プラビックス~エフィエントの改良
 特に、代謝酵素による個人差を減らし、安定した効果を得るための工夫は、最近の新薬によく見られる特徴です。

※個人差を減らす工夫を施した新薬の例
『タケキャブ(一般名:ボノプラザン)』・・・PPIの個人差を軽減
『インヴェガ(一般名:パリペリドン)』・・・「リスペリドン」の個人差を軽減

+αの情報②:休薬期間が短くて済む『ブリリンタ』

 『ブリリンタ(一般名:チカグレロル)』も個人差の少ない抗血小板薬ですが、血小板に対する作用が可逆的なため血小板機能が早い薬です。そのため、休薬期間も最低5日で済む場合があります6)。

 6) ブリリンタ錠 添付文書

~注意事項~

◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。

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