片頭痛の予防薬にはどんなものがある?~頭痛を防ぎ、経済的負担も軽減する予防薬のメリット
記事の内容
回答:ガイドラインで指定される予防薬
片頭痛の予防薬として主に使用されているのは、以下の薬です1)。
推奨レベルA
『デパケン(一般名:バルプロ酸)』 (抗てんかん薬)
『トピナ(一般名:トピラマート)』 (抗てんかん薬) ※保険適用外
『インデラル(一般名:プロプラノロール)』 (β遮断薬)
『セロケン、ロプレソール(一般名:メトプロロール)』 (β遮断薬) ※保険適用外
『トリプタノール(一般名:アミトリプチリン)』 (抗うつ薬) ※保険適用外
推奨レベルB
『ミグシス(一般名:ロメリジン)』 (Ca拮抗薬)
『ワソラン(一般名:ベラパミル)』 (Ca拮抗薬) ※保険適用外
『ブロプレス(一般名:カンデサルタン)』 (ARB) ※保険適用外
『ゼストリル、ロンゲス(一般名:リシノプリル)』 (ACE阻害薬) ※保険適用外
『ハイボン(一般名:リボフラビン)』 (ビタミンB2製剤) ※保険適用外
1) 日本頭痛学会「慢性頭痛の診療ガイドライン2013」 予防療法エビデンスサマリ
詳しい回答①:予防薬はどうやって選ぶのか
どの予防薬を選べば良いか、という明確な選択基準は今のところありません2)。
そのため、上記の推奨レベルの高いもので、なおかつその患者にとって副作用の恐れの少ないものを選ぶ、という方法になります。
2) Cephalalgia.17(2):73-80,(1997) PMID:9137841
飲み始めてすぐに効果が得られるものではないため、およそ2~3ヶ月かけて効果を判定する必要があります。
また、1年ほど続けて予防薬を服用した後、少しずつ薬を減らしていき、最終的には薬を飲まなくても頭痛を起こさない、という状態を目指すのが理想です。
詳しい回答②:なぜ予防薬が必要なのか
「慢性頭痛の診療ガイドライン2013」では、片頭痛が月に2回以上、もしくは6日以上起こる場合には予防療法について検討するよう言及されています1)。
これは、NSAIDsなどの鎮痛薬や片頭痛治療薬の「トリプタン製剤」をあまり頻繁に使用していると、薬の使い過ぎによる「薬物乱用性頭痛」を起こす恐れがあるためです。
また、頻繁に頭痛を起こしていると神経が過敏になり、ちょっとした刺激で痛みを感じるようになる傾向(アロディニア)もあります。
こうしたトラブルを防ぐために、予防薬によって”そもそも頭痛を起こさせない”、という対処は極めて有効です。
更に、頓服薬である「トリプタン製剤」は非常に高価ですが、一方で予防薬はいずれも安価です。そのため、予防薬を定期的に服用した方が痛みもなく、経済的負担を軽減することもできます。
薬価の比較
(トリプタン製剤)
『アマージ錠(一般名:ナラトリプタン)』・・・1錠893.4円
『イミグラン点鼻(一般名:スマトリプタン)』・・・1キット1043.6円
(予防薬)
『ミグシス(一般名:ロメリジン)』・・・1錠33.5円 (用法は1日2回)
『トリプタノール(一般名:アミトリプチン)』・・・1錠9.6円 (用法は1日1回)
1ヶ月の薬価概算
頓服薬の『アマージ錠』を3回使った場合・・・2680.2円
予防薬の『ミグシス』を1日2回、1ヶ月間続けて使った場合・・・1825.6円
予防薬の『トリプタノール』を1日1回、1ヶ月間続けて使った場合・・・268.8円
薬剤師としてのアドバイス:「トリプタン製剤」は予防的に使用できない
「トリプタン製剤」は、痛みがない状態で飲んでも、片頭痛を予防することはできません。
全般的に「トリプタン製剤」は半減期も短く、すぐに体内から消失してしまいます。いざ、頭痛が生じ始めた頃には薬が抜けてしまっている、ということになってしまうため、予防には極めて不向きです。
※生理周期によって増悪する片頭痛には『アマージ』を予防的に使うこともあります。
「トリプタン製剤」は、痛みを感じ始めてから、兆候に気付いてから使うようにしてください。
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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