口内炎に、胃潰瘍の薬『プロマック』が処方されたのは何故?~亜鉛の薬の可能性
記事の内容
回答:粘膜を修復し、亜鉛を補給する
『プロマック(一般名:ポラプレジンク)』は、潰瘍などが起きている部分にくっついて覆い、粘膜を修復させる効果があります。
口の中も粘膜であり、胃粘膜と似た構造をしています。そのため、口内炎にも使用されることがあります。
抗がん剤の副作用で起きた口内炎に対して、『プロマック』と『アルロイドG(一般名:アルギン酸)』を混ぜたうがい薬が、高い効果を発揮することも知られています。
また、『プロマック』は亜鉛を含む薬のため、亜鉛不足に対して用いる場合もあります。亜鉛不足は繰り返す口内炎を起こすこともあります。
ただし、現在のところ適応はあくまで”胃潰瘍”のみです。口内炎に対しては、通常は塗り薬で対応することがほとんどです。
回答の根拠①:『プロマック』の多様な薬効薬理
『プロマック』は非常に多くの薬理作用を持っています。
※『プロマック』の薬効薬理の例 1)
1. 胃粘膜に付着し、潰瘍部位を覆う
2. 胃粘膜血流量の減少を抑制
3. 抗酸化作用による細胞保護効果
1) プロマック錠 添付文書
特に、粘膜にくっついて潰瘍部位を覆い、保護効果と治癒促進効果を発揮するという作用は、他の胃粘膜保護薬にはない特徴です。
胃粘膜だけでなく口腔粘膜にも効果があるのは、こうした特徴的な作用が要因ではないかと考えられています。
回答の根拠②:口内炎に対する実際の効果
抗がん剤による副作用の口内炎に、『プロマック』と『アルギンG』のうがい薬が提案されています2)。(うがい薬のレシピ:『プロマック顆粒』3gを乳鉢で微粉化、『アルロイドG(5%アルギン酸Na)』100mLに加える)
2) 厚生労働省 重篤副作用疾患別対応マニュアル(案)「薬物性口内炎」
『プロマック』も『アルロイドG』も、共に潰瘍のある部位にくっついて、粘膜を保護するように覆い、修復効果を発揮します。この相乗効果によって、抗がん剤などの副作用による酷い口内炎も治療することが可能です。
また、『プロマック』を飴状にして投与することで、口内炎に効果が得られたとする報告もあります3)。
3) 医薬ジャーナル Vol.49 No.10:2439-43,(2013)
回答の根拠③:亜鉛補給による効果
亜鉛は必須微量元素の1つであり、亜鉛が不足すると食欲低下、皮膚病変、味覚障害などの障害を起こすことが知られています。
特に、亜鉛不足による味覚障害に対しては、『プロマック』によって改善することが報告されています4)。
4) 口咽科.24(1):67-74,(2011)
繰り返す口内炎は亜鉛不足が関係していることも示唆されているため、『プロマック』を亜鉛補給の目的で使用することも十分に考えられます。
薬剤師としてのアドバイス:これから適応が広がる可能性
『プロマック』は現在のところ、胃潰瘍にしか適応がありません1)。そのため、口内炎や亜鉛補給の目的で使用することは保険適応外の使い方になります。
それでも、多くの医療機関で使用実績が増えてきているため、今後適応が追加される可能性もあります。
ただし、こうした可能性は『プロマック』の特殊な作用によるものです。決して、他の胃粘膜を保護する効果を持つ薬も全て口内炎に対する効果が期待できるわけではありません。薬の特殊な使用方法については、必ず医師の指示に従い、自己判断で使用しないようにしてください。
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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