■サイト内検索


スポンサードリンク

消化性潰瘍治療薬 薬の特別な使い方

/

口内炎に、胃潰瘍の薬『プロマック』が処方されたのは何故?~亜鉛の薬の可能性

回答:粘膜を修復し、亜鉛を補給する

 『プロマック(一般名:ポラプレジンク)』は、潰瘍などが起きている部分にくっついて覆い、粘膜を修復させる効果があります。
 口の中も粘膜であり、胃粘膜と似た構造をしています。そのため、口内炎にも使用されることがあります。

 抗がん剤の副作用で起きた口内炎に対して、『プロマック』と『アルロイドG(一般名:アルギン酸)』を混ぜたうがい薬が、高い効果を発揮することも知られています。

 また、『プロマック』は亜鉛を含む薬のため、亜鉛不足に対して用いる場合もあります。亜鉛不足は繰り返す口内炎を起こすこともあります。

 ただし、現在のところ適応はあくまで”胃潰瘍”のみです。口内炎に対しては、通常は塗り薬で対応することがほとんどです。

回答の根拠①:『プロマック』の多様な薬効薬理

 『プロマック』は非常に多くの薬理作用を持っています。

※『プロマック』の薬効薬理の例 1)
1. 胃粘膜に付着し、潰瘍部位を覆う
2. 胃粘膜血流量の減少を抑制
3. 抗酸化作用による細胞保護効果

 1) プロマック錠 添付文書

 特に、粘膜にくっついて潰瘍部位を覆い、保護効果と治癒促進効果を発揮するという作用は、他の胃粘膜保護薬にはない特徴です。
 胃粘膜だけでなく口腔粘膜にも効果があるのは、こうした特徴的な作用が要因ではないかと考えられています。

回答の根拠②:口内炎に対する実際の効果

 抗がん剤による副作用の口内炎に、『プロマック』と『アルギンG』のうがい薬が提案されています2)。(うがい薬のレシピ:『プロマック顆粒』3gを乳鉢で微粉化、『アルロイドG(5%アルギン酸Na)』100mLに加える)

 2) 厚生労働省 重篤副作用疾患別対応マニュアル(案)「薬物性口内炎」

 『プロマック』も『アルロイドG』も、共に潰瘍のある部位にくっついて、粘膜を保護するように覆い、修復効果を発揮します。この相乗効果によって、抗がん剤などの副作用による酷い口内炎も治療することが可能です。

 また、『プロマック』を飴状にして投与することで、口内炎に効果が得られたとする報告もあります3)。

 3) 医薬ジャーナル Vol.49 No.10:2439-43,(2013)

回答の根拠③:亜鉛補給による効果

 亜鉛は必須微量元素の1つであり、亜鉛が不足すると食欲低下、皮膚病変、味覚障害などの障害を起こすことが知られています。
 特に、亜鉛不足による味覚障害に対しては、『プロマック』によって改善することが報告されています4)。

 4) 口咽科.24(1):67-74,(2011)

 繰り返す口内炎は亜鉛不足が関係していることも示唆されているため、『プロマック』を亜鉛補給の目的で使用することも十分に考えられます。 

薬剤師としてのアドバイス:これから適応が広がる可能性

 『プロマック』は現在のところ、胃潰瘍にしか適応がありません1)。そのため、口内炎や亜鉛補給の目的で使用することは保険適応外の使い方になります。
 それでも、多くの医療機関で使用実績が増えてきているため、今後適応が追加される可能性もあります。

 ただし、こうした可能性は『プロマック』の特殊な作用によるものです。決して、他の胃粘膜を保護する効果を持つ薬も全て口内炎に対する効果が期待できるわけではありません。薬の特殊な使用方法については、必ず医師の指示に従い、自己判断で使用しないようにしてください。
 

 

~注意事項~

◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • follow us in feedly

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

■主な活動

【書籍】
■羊土社
薬の比較と使い分け100(2017年)
OTC医薬品の比較と使い分け(2019年)
ドラッグストアで買えるあなたに合った薬の選び方を頼れる薬剤師が教えます(2022年)
■日経メディカル開発
薬剤師のための医療情報検索テクニック(2019年)
■金芳堂
医学論文の活かし方(2020年)
服薬指導がちょっとだけ上手になる本(2024年)

 

【執筆】
じほう「調剤と情報」「月刊薬事」
南山堂「薬局」、Medical Tribune
薬ゼミ、診断と治療社
ダイヤモンド・ドラッグストア
m3.com

 

【講演・シンポジウム等】
薬剤師会(兵庫県/大阪府/広島県/山口県)
大学(熊本大学/兵庫医科大学/同志社女子大学)
学会(日本医療薬学会/日本薬局学会/プライマリ・ケア連合学会/日本腎臓病薬物療法学会/日本医薬品情報学会/アプライド・セラピューティクス学会)

 

【監修・出演等】
異世界薬局(MFコミックス)
Yahoo!ニュース動画
フジテレビ / TBSラジオ
yomiDr./朝日新聞AERA/BuzzFeed/日経新聞/日経トレンディ/大元気/女性自身/女子SPA!ほか

 

 

利益相反(COI)
特定の製薬企業との利害関係、開示すべき利益相反関係にある製薬企業は一切ありません。

■ご意見・ご要望・仕事依頼などはこちらへ

■カテゴリ選択・サイト内検索

スポンサードリンク

■おすすめ記事

  1. 『アダラート』・『カルブロック』・『アテレック』、同じCa拮…
  2. 『ラシックス』・『ダイアート』・『ルプラック』、同じループ利…
  3. 『キサラタン』と『チモプトール』、同じ緑内障の点眼薬の違いは…
  4. 「リン酸コデイン」は12歳未満に使っても良い?~呼吸抑制と日…
  5. 『ラシックス』と『フルイトラン』、同じ利尿薬の違いは?~ルー…
  6. 『ロキソニン』と『ボルタレン』、同じ鎮痛薬の違いは?~効果の…
  7. 『ミラペックス』と『ペルマックス』、同じパーキンソン病治療薬…

■お勧め書籍・ブログ

recommended
recommended

■提携・協力先リンク

オンライン病気事典メドレー

banner2-r

250×63

スポンサードリンク
PAGE TOP