『アスタット』・『ルリコン』・『ゼフナート』・『ラミシール』、同じ水虫の塗り薬の違いは?~抗真菌薬の優劣
記事の内容
回答:水虫の治療効果に差はない
『アスタット(一般名:ラノコナゾール)』・『ルリコン(一般名:ルリコナゾール)』・『ゼフナート(一般名:リラナフタート)』・『ラミシール(一般名:テルビナフィン)』は、全て水虫(白癬)の治療に使う「抗真菌薬」の塗り薬です、
水虫の治療に使う場合、効果や安全性に大きな違いはありません。
そのため、医師による経験上の判断や、軟膏・クリーム・ローションなどの剤型のタイプなどから、患者に合った薬を選ぶのが一般的です。
回答の根拠①:「ビホナゾール」との同等性で認可された薬
「抗真菌薬」の塗り薬の多くは、臨床試験で『マイコスポール(一般名:ビホナゾール)』と同等の効果・安全性が得られたという結果を受けて認可されたものです1)。そのため、基本的に薬剤間に効き目や副作用の優劣はないとされています2)。
1) 各インタビューフォーム
2) 日皮会誌.119(5):851-62,(2009) 「皮膚真菌症診断・治療ガイドライン」
その中で、『アスタット』・『ルリコン』・『ゼフナート』・『ラミシール』はいずれも「最小発育阻止濃度(MIC)」が小さく3)、強い抗真菌作用を持っています。
3) 日皮会誌.117(2):149-52,(2007) CiNii:130004708503
このことから、いずれも水虫に対して高い効果が期待できる薬だと言えます。
『アスタット』と『ルリコン』がよく使われる理由
MICが小さく強い抗真菌作用を持つ薬の中でも、『アスタット』と『ルリコン』は菌種による効き目のばらつきが少ないとされています3)。
このことから、最初に試す「抗真菌薬」として『アスタット』や『ルリコン』が選ばれる傾向にあります。
回答の根拠②:効かなかった場合は系統を変える
「抗真菌薬」には以下の5つの系統があります。そのため、薬が肌に合わなかった場合や、効き目がいまひとつだった場合には、別の系統の薬に変えて治療を試みることができます。
1.イミダゾール系
『ニゾラール(一般名:ケトコナゾール)』
『アトラント(一般名:ネチコナゾール)』
『アスタット(一般名:ラノコナゾール)』
『ルリコン(一般名:ルリコナゾール)』
2.チオカルバメート系
『ゼフナート(一般名:リラナフタート)』
『ハイアラージン(一般名:トルナフタート)』
3.アリルアミン系
『ラミシール(一般名:テルビナフィン)』
4.ベンジルアミン系
『メンタックス(一般名:ブテナフィン)』
5.モルホリン系
『ペキロン(一般名:アモロルフィン)』
※赤字はMICが小さい抗真菌薬 2)
ただし、効き目に優劣がないのは「白癬菌」による感染症であって、カンジダなど別の感染症では第一選択薬が決まっている場合があります。
回答の根拠③:剤型にも違いがある
水虫の塗り薬には、「軟膏」・「クリーム」・「外用液」・「スプレー」など色々なタイプの剤型があります。
一般的に、「軟膏」は刺激が少ないもののべたつきが多く、逆に「外用液」はべたつきが少ないものの刺激を感じることが多い剤型です。「クリーム」はその中間くらいです。
そのため、傷や炎症などの皮膚の状況によって、適した剤型のものを選ぶことができます。
※『アスタット』の剤型
軟膏、クリーム、外用液
※『ルリコン』の剤型
軟膏、クリーム、液、(爪外用液『ルコナック』)
※『ゼフナート』の剤型
クリーム、外用液
※『ラミシール』の剤型
クリーム、外用液、外用スプレー
薬剤師としてのアドバイス:薬の選択より正しい使い方に注意を
水虫治療が成功するかどうかは、「どの薬を選ぶか」よりも、「いかに正しく薬を使うか」にかかっています。
赤みや痒みといった自覚症状が治まった時点で薬を止めてしまう人が少なくありませんが、薬は「菌が完全に居なくなるまで」使い続ける必要があります。症状が治まった時点ではまだ菌が皮膚に残っていることが多く、ここで薬を中断すると水虫を何度もぶり返してしまうことになります。
また、赤みや痒みのある部分にしか薬を塗らない人も多いですが、自覚症状のない部分にも菌は潜んでいるため、症状のない部分も含め、両足の全体に薬を塗る必要があります。この場合、軟膏やクリームは1ヶ月で30~40g程度の量を使うのが一般的です。
自己判断で薬を止めてしまったり、薬をケチって使ったりすると、かえって治療が長引き、使う薬の量も増えてしまうことになります。「正しい使い方」を徹底し、一度の治療で完治させるようにしてください。
ポイントのまとめ
1. 『アスタット』・『ルリコン』・『ゼフナート』・『ラミシール』は、水虫の治療効果は大きく変わらない
2. 軟膏・クリーム・外用液・スプレーといった剤型の違いから選ぶこともできる
3. 水虫治療が成功するかどうかは、薬の選び方より、正しく使うかどうかの方が大きく影響する
添付文書・インタビューフォーム記載事項の比較
◆薬の分類
アスタット:イミダゾール系の抗真菌薬
ルリコン:イミダゾール系の抗真菌薬
ゼフナート:チオカルバメート系の抗真菌薬
ラミシール:アリルアミン系の抗真菌薬
◆適応症
アスタット:白癬・カンジダ症・癜風
ルリコン:白癬・カンジダ症・癜風
ゼフナート:白癬
ラミシール:白癬・カンジダ症・癜風
◆臨床試験の比較対象
アスタット:ビホナゾール
ルリコン:ビホナゾール
ゼフナート:ビホナゾール
ラミシール:ビホナゾール
◆剤型の種類
アスタット:軟膏、クリーム、外用液
ルリコン:軟膏、クリーム、液、(爪外用液『ルコナック』)
ゼフナート:クリーム、外用液
ラミシール:クリーム、外用液、外用スプレー
◆製造販売元
アスタット:マルホ
ルリコン:ポーラファルマ
ゼフナート:鳥居薬品
ラミシール:サンファーマ
+αの情報①:水虫とステロイド
水虫は、白癬菌による感染症です。「ステロイド」は、過剰な免疫を抑える薬です。
そのため、水虫で足が痒いからと「ステロイド」を使うと、白癬菌を抑える免疫が弱まり、かえって病状が悪化することになります。
しかし、水虫にステロイドは絶対に使わない、というわけではありません。患部の炎症や痒さが酷く、抗真菌薬を使える状況でない場合には、一旦「ステロイド」で炎症・痒みを抑えてから治療を始めるというケースもあります。
ただし、こうした優先順位や薬の判断は医師が行うものです。自己判断で勝手な使い方はしないようにしてください。
+αの情報②:爪の水虫には『クレナフィン』や『ルコナック』
水虫の菌が爪に入り込んでしまうと、塗り薬で治療することが困難です。
そのため、『ラミシール(一般名:テルビナフィン)』・『イトリゾール(一般名:イトラコナゾール)』といった内服の抗真菌薬や、『クレナフィン(一般名:エフィナコナゾール)』・『ルコナック(一般名:ルリコナゾール)』といった爪白癬専用の塗り薬を使う必要があります。
これらの薬は市販されていないため、病院を受診して処方してもらう必要があります。水虫で爪が濁っているような場合は、一度病院を受診し、きちんとした治療を始めるようにしてください。
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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