「アルドステロン・ブレイクスルー」って何?~メカニズムと『セララ』の効果
記事の内容
回答:薬で抑えているはずの「アルドステロン」が増えること
「アルドステロン」は、高血圧の他にも動脈硬化・心肥大・腎障害など、様々な病態に関係しています。
そのため、高血圧の治療では「ARB」や「ACE阻害薬」を使って「アルドステロン」を減らす治療を行います。
ところが、「ARB」や「ACE阻害薬」で「アルドステロン」を抑えていても、何らかの原因で「アルドステロン」が増えてきてしまうことがあります。
これを「アルドステロン・ブレイクスルー」と言います。
このようにして増えた「アルドステロン」によって、気付かないうちに血管や臓器にダメージが蓄積してしまうこともあり、高血圧治療の課題として注目されています。
回答の根拠:「アルドステロン・ブレイクスルー」のメカニズム
「アルドステロン・ブレイクスルー」の正確なメカニズムは明らかになっていませんが、主に以下の2つの仮説が立てられています1)。
※「アルドステロン・ブレイクスルー」のメカニズム(仮説)
1. 「ACE阻害薬」によって大量に蓄積した「アンジオテンシンⅠ」が、フィードバック作用で「レニン」活性を上昇させ、「レニン・アンジオテンシン系」全体を活発化させる
2. 「レニン」の前駆物質である「プロレニン」が、「アンジオテンシンⅡ」を介さないルートで、「アルドステロン」を産生する
1) Hypertension.40(1):28-33,(2002) PMID:12105134
「アルドステロン・ブレイクスルー」の何が怖いのか
「アルドステロン・ブレイクスルー」では、実際に「アルドステロン」が増えます。
このとき、血圧が高くなれば「アルドステロン・ブレイクスルー」に気付き、対処することができます。
ところが実際には、血圧に影響するほど「アルドステロン」が増えず、それでいて動脈硬化や臓器への酸化ストレス障害を引き起こすことがあります。
つまり、知らない間に血管や臓器にダメージが蓄積してしまうことが怖いところです。
『セララ』の効果
『セララ(一般名:エプレレノン)』は、「アルドステロン」をブロックする薬です。
そのため、「アルドステロン・ブレイクスルー」が起きている人に追加投与することで、この現象を食い止めることができます。
実際に、「アルドステロン・ブレイクスルー」が起きている患者に『セララ』を追加投与したところ、血圧の低下と尿中アルブミン排泄の抑制効果が得られたことも報告されています2)。
このことから、今後ガイドラインなどでも『セララ』追加投与が推奨されることが期待されています3)。
2) Hypertens Res.36(10):879-84,(2013) PMID:23864056
3) Curr Hypertens Rep.18(5):34,(2016) PMID:27072827
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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