1日1回が用法の『ネキシウム』を、1日2回で処方されたのは何故?~難治性逆流性食道炎の治療方法
記事の内容
回答:1日1回で治らない場合の、例外的な処方
『ネキシウム(一般名:エソメプラゾール)』などのPPI(プロトンポンプ阻害薬)の用法は1日1回です。1日1回の服用で胃酸を抑える効果が持続するからです。
しかし、用法通りに服用しても治らない場合には、例外的に1日2回で処方されることもあります。
回答の根拠:難治性の逆流性食道炎の治療方法
現在、PPIは逆流性食道炎の第一選択薬(最も優先される薬)とされています。服用も1日1回で済むため負担も少ないことから、広く使用されています。
しかし、逆流性食道炎の10~20%程度は「難治性」で、PPIで8週間の治療を行っても改善しないことが報告されています1)。
1) Gastroenterology.112(6):1798-810,(1997) PMID:9178669
こうした場合、PPIの服用回数を増やすことによって治療効果が改善することがあります。
これは『ネキシウム』だけに限らず、『パリエット(一般名:ラベプラゾール)』でも1日2回の投与で胃酸分泌抑制効果が強くなるとされています2)。
2) Aliment Pharmacol Ther.19(1):113-22,(2004) PMID:14687173
+αの情報:夜間の胃酸過多に対する特別なPPIの使い方
PPIを服用しているにも関わらず、夜間に胃酸過多が起こる難治性の逆流性食道炎(NAB)に対して、例外的にPPIとH2ブロッカーを併用することがあります。
同じ難治性であっても、どのタイミングで症状が強いのかによって次に打つ手は変わります。自分の症状は正確に伝えるようにしましょう。
+αの情報:PPIの適用は今後広がる可能性も
逆流性食道炎のほか、PPIには胃潰瘍や十二指腸潰瘍などにも使用します。しかし、胃潰瘍では8週間、十二指腸潰瘍では6週間まで、という投与制限があります。この期間を越えてPPIを使うことは、保険の関係上難しい
そのため、現在は制限期間の投与が終わった後は、原因となっているピロリ菌の除菌を行ったり、『ガスター(一般名:ファモチジン)』などのH2ブロッカーを使用したり、という方法をとります。
しかし、PPIは長期使用でも副作用リスクが増えないことが報告され、「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015」では、H2ブロッカーよりもPPIを推奨しています。今後は、投与制限などが緩和される可能性もあると考えられます。
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
この記事へのコメントはありません。