漢方薬と西洋薬は、何が違うの?~研究・開発の考え方から異なる薬
回答:3つの違い
大きな違いとして、以下の3点が挙げられます。違い①:含まれる有効成分の種類
西洋薬は、1種類だけの有効成分を含み、その成分単独による薬理効果を期待した薬です。漢方薬は、多種多様な生薬を組み合わせて作ったもので、それぞれの生薬の薬理作用と相互作用を利用した効果を期待するものです。
例:『ロキソニン錠』に含まれる有効成分・・・ロキソプロフェンナトリウム60mg
例:『葛根湯エキス顆粒』に含まれる有効成分・・・葛根4.0g、大棗3.0g、麻黄3.0g、甘草2.0g、桂皮2.0g、芍薬2.0g、生姜2.0g
違い②:開発方法
”ある植物の根を煎じて飲むと、身体が温まる”ということが判明したとします。西洋薬では、「この根に含まれるたくさんの成分のうち、どれが身体を温める効果を持っているのか?」という視点で、薬理効果を持つ物質を1つに特定する研究開発が始まります。
漢方薬では、「身体を温める効果がある他のものと一緒に飲んだら、もっと温まるんじゃないか?」という視点で、風邪を治せるくらいの効果を発揮できる組み合わせを探す研究開発が始まります。
違い③:薬の効き方
西洋薬は、鎮痛薬は痛みを抑える、降圧薬は血圧を下げる・・・といったように、症状を1つずつピンポイントで治していきます。漢方薬は、症状の原因となっている体質を改善することで、治していきます。
例:『ロキソニン』を使う目的の例・・・痛み、熱を抑える
例:『葛根湯』を使う目的の例・・・熱が籠っていることで起きている症状(風邪、肩凝りなど)を解消させる
一般的に西洋薬は、特定の酵素を阻害したり、特定の受容体を刺激したり遮断したりすることで作用を発揮します。酵素や受容体にはそれぞれ役割があるので、そこに作用することでどういった薬理作用を発揮するか、ということが明確です。
一方、漢方薬は「昔からこういう配合で使うと、効くんだよ」という伝承のような側面があり、ほとんどが経験の蓄積によるものです。『葛根湯』などは紀元前200年頃に書かれた医学書「傷寒論」や「金匱要略」の中でも既に風邪の初期症状や肩凝りに効くと紹介されています。つまり漢方薬は2000年以上の試行錯誤から生まれたものと言えます。
今では、生薬に含まれるどういった成分がどんな薬理作用を示すのか、が明らかになっているものもたくさんあります。しかし、経験上効くのはわかっているものの、何故効くのかよくわからない、というものもあります。
薬剤師としてのアドバイス:適材適所で使おう
西洋薬と漢方薬は、どちらが優れているか、ではなく、今の状態に対してどちらを選択するのが適切か、という視点で考えることをお勧めします。足首を怪我して痛がっている人に、のんびりと痛みを和らげる漢方薬を飲ませるのは、あまり適切とは言えません。『ロキソニン』等の痛み止めを使う方が良いでしょう。
また、冬になるとずっと調子が悪くて頻繁に風邪をひく、という人に、毎回咳止めやアレルギー薬を飲ませるのも考え物です。どういった体質が原因かを考えて漢方薬を使う方が良いと言えるでしょう。
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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