■サイト内検索


スポンサードリンク

薬の誤解 殺菌・消毒薬

/

「うがい」に風邪の予防効果はある?~「うがい薬」は逆効果という誤解

回答:水だけの「うがい」でも効果はあるが、丁寧な「うがい」が必要

 水だけの「うがい」でも、十分に風邪を予防することができます。

 ただし、雑な「うがい」では効果は得られません。1回につき15秒以上の「うがい」を3度繰り返す、これを1日に3セットという正しい方法で「うがい」をする必要があります。
 多くの人が考える「うがい」よりも、相当気合の入った「うがい」であることに注意が必要です。
水でのうがいと風邪の予防効果
 ここまで気合の入った「うがい」を続けることは大変なので、インフルエンザの流行期などには「うがい薬」の力を借りることも選択肢の一つです。

回答の根拠①:「うがい」の風邪予防効果

 水での「うがい」で、風邪の発症を約36%抑えることができる、とする報告があります1)。多くの人は、これによって「うがい薬」は不要である、としています。

 1) Am J Prev Med.29(4):302-7,(2005) PMID:16242593

 しかしこの研究で行われた「うがい」は、1回につき15秒以上の「うがい」を3度繰り返す、これを1日に3セット行うことです1)。これは、多くの人が考える「うがい」よりも、相当気合の入った「うがい」です。

 1回あたりの「うがい」の時間が短かったり、1日の「うがい」の回数が少なかったり、あるいはそもそも「うがい」の方法を間違っているような場合には、これだけの効果は得られません。

殺菌よりも、異物や微粒子を洗い流す

 水の「うがい」でも風邪の予防効果があるということは、「うがい」が喉の消毒・殺菌ではなく、喉や口の中に細菌やダニ、ハウスダストなどの異物・微粒子を洗い流すことによって、感染予防効果を発揮していると考えることができます。
水でのうがいで風邪を予防できる理由
 そのため、「うがい」では喉だけでなく、口の中もすすぐ必要があります。

回答の根拠②:「うがい薬」はウイルスを不活化する

 『イソジン(一般名:ヨウ素)』などのヨード液は、「インフルエンザ」をはじめとする厄介な感染症の原因となるウイルスを不活化させる効果があります。

※『イソジンガーグル液』で不活化できるウイルスの例 2)
インフルエンザウイルス・・・14倍希釈(0.5%)で30秒
アデノウイルス・・・14倍希釈(0.5%)で30秒
ロタウイルス・・・14倍希釈(0.5%)で30秒
ポリオウイルス・・・14倍希釈(0.5%)で30秒
単純ヘルペスウイルス・・・70倍希釈(0.1%)で30秒
SARSウイルス・・・15倍希釈(0.47%)で60秒
鳥インフルエンザウイルス・・・30倍希釈(0.23%)で10秒

 2) イソジンガーグル 添付文書

 こうしたウイルスが喉に付着していると、そこから感染が成立し、感染症を起こす恐れがあります。特定の厄介なウイルスを退治するためには、「うがい薬」が効果的です。
 

回答の根拠③:うがい薬を使うと風邪をひきやすくなる、という誤解

 「うがい」にヨード液などの消毒・殺菌剤を使うと、喉の常在菌を倒してしまうために、かえって感染しやすくなる可能性が示唆されています。
 その結果、「うがい」で得られる効果が相殺されてしまうため、水でうがいした時よりも効果が低くなることが報告されています1)。

※現在議論されている、「うがい薬」でうがいの効果が低下する理由の例

①元から居る”常在菌”を倒してしまうことで、菌のバランスが崩れ、感染しやすくなる
②「うがい薬」を飲み込みたくない、と思うことで、水よりも浅いところでしか「うがい」をしない
③「うがい薬」があるからと、水よりも短い時間しか「うがい」をしない

 ただし、水で丁寧な「うがい」をした場合と比べて効果が落ちる可能性があるということであって、「うがい」をしない場合よりも風邪をひきやすくなるという意味ではありません

 「うがい薬」はどのように使えば最も感染予防効果を得られるのか、信頼に足るデータが未だ無いため、これからの検証が期待されています。

薬剤師としてのアドバイス:状況に応じて使い分けを

 風邪の予防のために行う日常的な「うがい」は、水道水で十分です。

 しかし、インフルエンザが流行している時や、自分が喉を痛めていて感染しやすい時などは、「うがい薬」の力を借りることをお勧めしています。
うがい~状況に応じた使い分け
 先述のように「うがい薬」が十分に効果を発揮するためには、ある程度の濃度と時間が必要です。薬を薄めすぎたり、うがいの時間が短すぎたりすると効果は得られません。

 また、喉だけでなく口の中も漱ぐ必要があります。たかが「うがい」と侮らずに、正しい方法を心がけましょう。

正しい「うがい」の方法の例

①口をゆすいで、吐き出す
②新しい水で、喉の奥をガラガラと洗浄する
③喉でガラガラするとき、首を左右に傾けて細かいや端の方も「うがい」するよう意識する

 

~注意事項~

◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • follow us in feedly

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

■主な活動

【書籍】
■羊土社
薬の比較と使い分け100(2017年)
OTC医薬品の比較と使い分け(2019年)
ドラッグストアで買えるあなたに合った薬の選び方を頼れる薬剤師が教えます(2022年)
■日経メディカル開発
薬剤師のための医療情報検索テクニック(2019年)
■金芳堂
医学論文の活かし方(2020年)
服薬指導がちょっとだけ上手になる本(2024年)

 

【執筆】
じほう「調剤と情報」「月刊薬事」
南山堂「薬局」、Medical Tribune
薬ゼミ、診断と治療社
ダイヤモンド・ドラッグストア
m3.com

 

【講演・シンポジウム等】
薬剤師会(兵庫県/大阪府/広島県/山口県)
大学(熊本大学/兵庫医科大学/同志社女子大学)
学会(日本医療薬学会/日本薬局学会/プライマリ・ケア連合学会/日本腎臓病薬物療法学会/日本医薬品情報学会/アプライド・セラピューティクス学会)

 

【監修・出演等】
異世界薬局(MFコミックス)
Yahoo!ニュース動画
フジテレビ / TBSラジオ
yomiDr./朝日新聞AERA/BuzzFeed/日経新聞/日経トレンディ/大元気/女性自身/女子SPA!ほか

 

 

利益相反(COI)
特定の製薬企業との利害関係、開示すべき利益相反関係にある製薬企業は一切ありません。

■ご意見・ご要望・仕事依頼などはこちらへ

■カテゴリ選択・サイト内検索

スポンサードリンク

■おすすめ記事

  1. OTCの痛み止め(内服・外用)、各成分の特徴から考える使い分…
  2. 『ノルバデックス』と『アリミデックス』、同じ乳がん治療薬の違…
  3. 『アムロジン』・『ワソラン』・『ヘルベッサー』、同じCa拮抗…
  4. 添付文書に記載された副作用頻度の数字を、単純に比較してはいけ…
  5. ステロイド外用剤の『リンデロン』、DP・V・VG・Aの違いは…
  6. 『ラシックス』・『ダイアート』・『ルプラック』、同じループ利…
  7. 『セレネース』と『リスパダール』、新旧の統合失調症の薬の違い…

■お勧め書籍・ブログ

recommended
recommended

■提携・協力先リンク

オンライン病気事典メドレー

banner2-r

250×63

スポンサードリンク
PAGE TOP