寝たらお酒は抜ける?睡眠とアルコール分解速度~二日酔いを防ぐ方法
記事の内容
回答:抜けない、むしろ睡眠中は分解が遅くなる
寝てもお酒は抜けません。
むしろ、寝ると分解が遅れ、お酒は抜けにくくなります。
お酒を飲んでも”ひと眠り”すればお酒が抜けるので運転できる、といった考え方は全くの誤りです。意図せぬ飲酒運転を招き、重大な事故を起こす恐れがありますので、絶対にやめましょう。
回答の根拠:アルコールの分解速度に対する睡眠の影響
アルコールの分解は、睡眠によって遅延することが報告されています1,2)。
1) 第15回国際アルコール医学生物学会議「睡眠によるアルコール分解への影響」,(2010)
2) Clin Pharmacokinet.42(1):1-31,(2003) PMID:12489977
これは、睡眠中はアルコールの分解酵素の働きが低下するために起こると考えられています。
実際、飲酒後に「5時間ずっと起きていた場合」と、「5時間のうち4時間は眠っていた場合」とで、血中に残ったアルコール濃度を比較する実験を、札幌医科大学が行っています。
その結果、「眠っていた場合」のアルコールの分解速度は、半分程度にまで落ちることが報告されています3)。
3) J Alcohol & Drug Dependence.46(1):146-56,(2011) PMID:21485142
薬剤師としてのアドバイス①:二日酔いを防ぐ方法は、水を飲みながらの夜更かし
二日酔いは、アルコールの分解が遅れ、中間生成物のアセトアルデヒドが身体に蓄積することが原因の一つです。そのため、お酒を飲んですぐに眠ってしまうと、アルコールの分解が遅れて二日酔いを起こしやすくなります。
このことから、飲み過ぎた場合は早く寝るのではなく、むしろ夜更かしてアルコールの分解を促すことが合理的です。
また、起きていると喉が渇いて水を飲むため、アルコールの分解に必要な水分を補給することもできます。
つまり、水を飲みながら少し夜更かしし、ある程度酔いが醒めてきてから眠るのが、二日酔いを避けるお勧めの方法と言えます。
また、二日酔いの頭痛には、脱水や糖分不足も関わっています。『ロキソニン(一般名:ロキソプロフェン)』などの痛み止めは安易に使わず、まず水分・糖分補給をすることをお勧めします。
薬剤師としてのアドバイス②:1時間に4gという分解量の目安
アルコールの分解速度には個人差がありますが、一般的な日本人であれば1時間に4gを分解できるとされています。
これは、日本酒1合もしくはビール500mLを飲酒した場合、完全に分解するには5時間ほどかかる計算になります。
「日本酒1合、ビール500mL=起きている5時間」と考え、さらに睡眠によって分解が遅れることを念頭に置いておくようにしてください。
ポイントのまとめ
1. 寝たらお酒が抜けるわけではない、むしろ分解が遅れる
2. アルコールの分解には水が必要なので、水分補給を心掛ける
3. 日本酒1合、あるいはビール500mLでも、完全に分解するには5時間ほどかかる
+αの情報:飲酒運転に対する法律の解釈
2016年2月13日、京都地裁は「アルコールが体内に残っていたことを認識していなかった」として、飲酒運転にはあたらないという判決を下し、議論を呼んでいます4)。
4) 産経新聞 2月13日(土)11時20分配信
しかし、たとえ飲酒運転として罰せられなくとも、事故を起こすメリットは被害者・加害者ともに全くはありません。
アルコールの分解には、思っている以上に時間を要することを、正しく知っておくことをお勧めします。
本記事は2016年2月13日の「LINEニュース」で引用されました。
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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