『クラバモックス』が黄色く変色している、飲まない方が良い?~薬の安定性と保管方法
記事の内容
回答:薬の効果・安全性に問題はない
『クラバモックス(一般名:アモキシシリン + クラブラン酸)』は、熱や湿気で薬が黄色く変色することがあります。
しかし見た目が黄色く変色していも、薬の効果や安全性には影響しないため、そのまま服用して問題ありません。
ただし、黄色く変色しているかどうかに関わらず、残っていた薬を自己判断で使うことは薬が効かない「耐性菌」を生む原因にもなり、大変危険です。抗生物質を処方された際は、症状が良くなっても最後まで飲み切るようにし、何らかの事情で残ってしまった場合でも廃棄するようにしてください。
回答の根拠①:「アモキシシリン」と「クラブラン酸」の安定性
『クラバモックス』には、ペニシリン系の抗生物質である「アモキシシリン」と、β-ラクタマーゼ阻害剤である「クラブラン酸」が配合されています。
それぞれ、熱や湿気に対する安定性が検討されていますが、黄色く変色する程度では薬としての効力に影響しないことが確認されています。
※「アモキシシリン」の安定性 1)
熱・・・・外観が黄色っぽくなるが、薬としての効力に影響はない。
湿気・・・影響はない。
※「クラブラン酸」の安定性 1)
熱・・・・外観がわずかに黄色くなるが、薬としての効力に影響はない。
湿気・・・湿気に極めて弱く、空気中の水分を吸収して最終的に褐色の液体状になる(効果も減弱)。
1) クラバモックスドライシロップ インタビューフォーム
このことから、『クラバモックス』が多少黄色っぽくなっている程度であれば薬としての効果・安全性に影響はなく、そのまま服用しても問題ないと言えます。
回答の根拠②:茶色くベタベタになっていた場合の対応は?
『クラバモックス』が茶色っぽくベタベタになっていた場合でも、抗生物質である「アモキシシリン」の効果に影響はない1)ため、基本的にはそのまま服用して問題ありません。
しかし、そもそも「何故、薬がそんな状況になっているのか」という原因によっては、適切な対応は変わってきます。
可能性1:だいぶ前に処方された『クラバモックス』ではないか?
そもそも、抗生物質である『クラバモックス』は通常3~7日程度しか一度に処方されないため、家庭で長期間保管するものではありません。
そのため、『クラバモックス』が茶色く変色して液体状になっている場合、その薬は今回の病気に処方されたものではなく、昔に処方された薬である可能性があります。
抗生物質は、感染症の原因菌によって厳密に使い分ける必要があります。
薬が効かない「耐性菌」を生まないためにも、症状が良くなっても最後まで飲み切って残さないようにし、何らかの事情で残ってしまった薬も自己判断で使うようなことはせず、廃棄するようにしてください。
つまり、茶色くベタベタになっている『クラバモックス』が、だいぶ前に処方された薬である場合は、変質しているかどうかに関わらず、飲んではいけません。
可能性2:薬の分包紙が破れていないか?
通常、『クラバモックス』が処方された期間のうちに茶色い液体状にまでなってしまうことはありません。
しかし、薬の分包紙が破れていたり穴が空いていたりすると、1日で変色してしまう恐れがあります1)。
1回分をちぎる際は別の袋が傷付かないよう注意し、袋が破れたり穴が空いたりしてして1包だけ変色し始めたような場合には、その袋から先に服用するようにしてください。
可能性3:薬の保管状況に問題はないか?
『クラバモックス』は、室温で保管する薬です1)。冷蔵庫で保管していると、出し入れするたびに水滴がついて湿気やすくなります。
乾燥している冬場はそのままでも問題ありませんが、湿気の多い梅雨~夏には「海苔」や「おかき」などと同じように乾燥剤と一緒に袋に入れて保管するなど、できるだけ湿気を避けて保管するようにしてください。
もし飲み切る前に全ての薬が茶色くベタベタになってしまった場合には、一度病院・薬局へその旨を連絡し、飲み切るべきか、別の薬を処方してもらうべきか、指示を仰ぐようにしてください。
薬剤師としてのアドバイス:抗生物質は、症状が良くなっても用法通りに飲み切る
中途半端な使い方で抗生物質を飲むと、菌が薬に対する「耐性」を獲得してしまい、次から薬が効かなくなってしまう恐れがあります。
抗生物質の使い過ぎについてテレビや新聞などでも大きく報道されていますが、飲む回数や量を減らすといった自己判断の工夫は、むしろ「耐性菌」をより多く生んでしまう間違った工夫です。
必要があって処方された抗生物質は、症状が良くなっても用法通りに最後まで飲み切るようにし、古い薬は自己判断で使わないようにしてください。
ポイントのまとめ
1. 『クラバモックス』は、熱や湿気で黄色っぽくなるが、効果や安全性に影響はない
2. 抗生物質は、自己判断で止めたり、残っている薬を使ったりしてはいけない
3. 『クラバモックス』は室温で保管、冷蔵庫に入れると湿気やすくなる
+αの情報:「クラブラン酸」は食事の影響も受ける
「クラブラン酸」は、食後に服用すると効果が弱まってしまいます。そのため、『クラバモックス』は食直前で服用する必要があります1)。
ただし、食後で飲んだ場合でも、効果が完全なゼロになってしまうわけではありません。飲み忘れた場合は食後でも良いので、必ず1日2回の服用を続けるようにしてください。
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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