薬を飲む前に授乳すれば、それで大丈夫?
回答:そうとも限らない
確かに、すぐに身体から出て行ってしまうような薬であれば、「薬が身体から抜けている時に授乳し、その後に薬を飲む」という方法でも問題ありません。
しかし、薬を飲む前の状態が、必ずしも”身体に薬の成分が残っていない状態”とは限りません。身体に24時間以上残る薬もたくさんあります。
また、薬を飲むタイミングと、授乳のタイミングが常に合致するわけでもありません。この時間差をストレスに感じることは非常に不利益です。
医師・薬剤師は、出来る限り授乳を続けられるような服薬の方法(授乳に対する薬の安全性評価、乳児に移行する薬の量を概算する方法など)について様々な角度からアドバイスすることができます。自分一人で考え込まずに、一度病院や薬局で相談するようにしてください。
回答の根拠:身体から薬が抜けるのに必要な時間
薬には、「半減期」というものがあります。身体の中の薬の濃度が、半分に減るまでにかかる時間のことを言います(「半減期」は、薬1つ1つで全て異なるため、個々の薬について知りたい場合はかかりつけの薬剤師へ質問してください)。
通常、この「半減期」の8倍が経過すると、完全に身体から薬が抜け切った、と判断することができます。これは、身体の中の薬の濃度が、
半減期の1倍・・・50%
半減期の2倍・・・25%
半減期の3倍・・・12.5%
半減期の4倍・・・6.25%
半減期の5倍・・・3.125%
半減期の6倍・・・1.5625%
半減期の7倍・・・0.78125%
半減期の8倍・・・0.390625%
と減っていく際、ピークの0.3%程度では薬が何かの作用を発揮することはない、と考えることができるからです。しかし、ほとんどの場合は多少なりとも身体に薬が残っている状態で授乳をすることになります。
このとき、母体に残っている薬の量、乳児が飲量、薬が血液中から母乳へ移行する率などから、乳児がどの程度の薬を飲むことになるのかを概算することができます。また、授乳に対する薬の安全性評価の基準もあります。
こうしたデータや基準から、どのような服用と授乳をするべきかを考えることもできます。
薬剤師としてのアドバイス:できる限り授乳は続ける
授乳は、乳児の免疫獲得、母親のオキシトシン分泌など、母子ともに極めてメリットの大きなものです。「薬を使っている時は授乳してはいけない」と思い込まず、できる限り授乳を続ける方法を医師・薬剤師と相談するようにしましょう。
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
この記事へのコメントはありません。