β遮断薬は、高血圧治療の第一選択薬ではない?
記事の内容
回答:第一選択薬からは外れたが、積極的適応はある
高血圧治療ガイドライン(JSH2014)で、β遮断薬は高血圧治療の第一選択薬から外れました。
しかし、心不全や頻脈、狭心症や心筋梗塞後など、特定の病態を持つ人にとっては積極的に使うべき主要降圧薬の一つであり、高血圧治療に使わなくなったわけではありません。
回答の根拠①:高血圧治療ガイドライン2009からの変更
従来の「高血圧治療ガイドライン2009」では、高血圧治療の第一選択薬として以下の5種が指定されていました。
1. Ca拮抗薬
2. ARB
3. ACE阻害薬
4. 利尿薬
5. β遮断薬
この5種は、2014年に改訂された「高血圧治療ガイドライン2014」でも「主要降圧薬」に指定されており、まずは心不全や心筋梗塞・糖尿病・骨粗鬆症など、その高血圧患者が持つ持病から、適した薬を選ぶことになっています1)。
1) 日本高血圧学会 「高血圧治療ガイドライン2014 主要降圧薬の積極的適応」
しかし、こうした積極的適応がない場合は①~④の薬から選ぶことになり、そこにβ遮断薬は含まれていません。つまり、特別な持病がない場合の初期治療には使わなくなった、ということを意味しています。
回答の根拠②:β遮断薬が外された理由
β遮断薬が第一選択薬から外れたのは、他の薬と比べて効果が劣るとする結果が、エビデンスレベルも高い多くの報告で得られたからです。
※β遮断薬の効果が劣るとされた試験の例
糖尿病の発症抑制に対してマイナスに働く 2)
ARBやACE阻害薬・Ca拮抗薬と比べて、臓器や血管に対する保護効果が低い 3)
2) Lancet.369(9557):201-7,(2007) PMID:17240286
3) Am J Med.115(1):41-6,(2003) PMID:12867233
また、ARB・ACE阻害薬+Ca拮抗薬、ARB・ACE阻害薬+利尿薬の組み合わせと比べると、β遮断薬+利尿薬の組み合わせで得られる効果は低いことも報告されています4)。
4) JAMA.290:2805,(2003)
しかしこうした報告は、古いβ遮断薬を使ったもので、新しい『アーチスト(一般名:カルベジロール)』であれば結果が変わる可能性もあります5)。
5) JAMA.292(18):2227-36,(2004) PMID:15536109
回答の根拠③:β遮断薬の「積極的適応」
第一選択薬から外された「β遮断薬」ですが、心疾患を持つ高血圧患者にとっては「積極的適応」として使うべき薬に指定されています1)。
※積極的適応の例 1)
・左室肥大 → Ca拮抗薬、ARB・ACE阻害薬
・心不全 → ARB・ACE阻害薬、利尿薬、β遮断薬
・頻脈 → Ca拮抗薬(非ジヒドロピリジン系)、β遮断薬
・狭心症 → Ca拮抗薬、β遮断薬
・心筋梗塞後 → ARB・ACE阻害薬、β遮断薬
・慢性腎不全(蛋白尿がない場合) → Ca拮抗薬、ARB・ACE阻害薬、利尿薬
・慢性腎不全(蛋白尿がある場合) → ARB・ACE阻害薬
・糖尿病 → ARB・ACE阻害薬
・骨粗鬆症 → 利尿薬
・誤嚥性肺炎 → ACE阻害薬
特に、心不全に適応を持つ『アーチスト』や『メインテート(一般名:ビソプロロール)』などの薬の使用実績が構築されることが期待されています。
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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