『ソバルディ』ってどんな薬?~「インターフェロン」が要らないC型肝炎治療薬と、医療費の助成制度
記事の内容
回答:「インターフェロン」注射からの解放を実現する薬
『ソバルディ(一般名:ソホスブビル)』は、C型肝炎ウイルスを退治する「抗ウイルス薬」です。
これまで、C型肝炎は「インターフェロン」が治療の主軸でした。しかし、「インターフェロン」は注射薬である上、使い始めには発熱や倦怠感といった副作用が頻繁に起こることなど、患者にとって負担の大きな薬でもありました。
『ソバルディ』は、飲み薬だけでC型肝炎を治療できる薬です。つまり、従来の「インターフェロン」注射からの解放を実現する新薬と言えます。
なお、『ソバルディ』は単独では使用せず、『コペガス(一般名:リバビリン)』や『レベトール(一般名:リバビリン)』と併用して使います。また、1錠61,799円と非常に高価なため、治療には保険だけでなく助成制度が必須になります。
回答の根拠①:内服薬だけで、高い治療効果を発揮
『ソバルディ』を使った治療では、「インターフェロン」を使わなくとも、C型肝炎のウイルス除去率96.4%という高い治療効果を発揮します1)。
1) ソバルディ錠 添付文書
また、「インターフェロン」治療はウイルス量が多い症例には効きにくいという弱点がありましたが、『ソバルディ』を使った治療では、ウイルス量の多い症例に対しても高い効果を維持できることが報告されています2)。
2) ソバルディ錠 インタビューフォーム
回答の根拠②:「インターフェロン」と比べ、少ない副作用
『ソバルディ』を使った治療でも、副作用が全くないわけではありません。主に貧血(11.4%)や頭痛(5%)、鼻咽頭炎(5%)などの副作用が報告されています1)。
しかし、「インターフェロン」の治療では、使用初期に発熱や倦怠感、その後も脱毛などの副作用が頻繁に起こるほか、間質性肺炎やうつ症状など、大きな副作用も珍しいものではありません。
こうした副作用の多さから、「インターフェロン」の治療を続けられない、といった人も少なくありませんでした。
「インターフェロン」の副作用の多さと比べると、『ソバルディ』を使った治療で起こる副作用は非常に少なく、治療のハードルも低くなっています。
+αの情報①:ウイルスの「ジェノタイプ」による違い
『ソバルディ』は、現在のところ「ジェノタイプ2」のC型肝炎にしか保険適用がありません1)。
日本人のC型肝炎患者は、約70%が「ジェノタイプ1」、約30%が「ジェノタイプ2」のウイルスが原因です3)。
このうち、大部分を占める「ジェノタイプ1」には「インターフェロン」の治療も効きにくく、難治性のC型肝炎として大きな問題となっています。
3) MSD(株) C型肝炎Webサイト「C型肝炎ウイルスの正体」
しかし、この『ソバルディ』を別の抗ウイルス薬「レジパスビル」と組み合わせることで、難治性である「ジェノタイプ1」のC型肝炎に対しても、ウイルス除去率100%の高い効果を発揮するというデータもあり4)、C型肝炎の治療は大きく進歩しています。
4) N Engl J Med.370(20):1889-98,(2014) PMID:24725239
※『ハーボニー』は、『ソバルディ』と「レジパスビル」を組み合わせた、「ジェノタイプ2」のC型肝炎に対する治療薬です。
+αの情報②:医療費の助成制度
『ソバルディ』は1錠61,799円と高額で、3ヶ月間続けて使用すれば医療費が500万円を超えることになります。単なる保険だけでは負担も大き過ぎるため、一般的には国の助成制度の対象になることが必須です。
※B型・C型肝炎治療に対する医療費の助成制度 6)
甲種(世帯の市町村民税の所得割課税年額が235,000円以上の場合)・・・自己負担限度額20,000円/月
乙種(世帯の市町村民税の所得割課税年額が235,000円未満の場合)・・・自己負担限度額10,000円/月
6) 厚生労働省「肝炎総合対策の推進 医療費助成」
ただし、B型・C型肝炎の治療全てが助成対象になるわけではありませんので、個別のケースは必ず事前に確認・相談するようにしてください。
+αの情報③:偽の塩基でウイルスを騙す「チェーン・ターミネーター」
ウイルスは、細菌と違って自力で数を増やすことができません。必ず、別の生物の細胞に感染し、その細胞の材料やシステムを盗用する必要があります。
C型肝炎のウイルスも、ヒトの肝細胞に感染し、勝手にタンパク質などを盗用して増殖しています。
ウイルスの遺伝情報は、「グアニン(G)」・「アデニン(A)」・「シトシン(C)」・「ウラシル(U)」という4種類の塩基によって構成されています。ヒトの肝細胞にも同じ4種類の塩基が存在するため、ウイルスはこれを盗用して自分の遺伝情報をコピーします。
このとき、「NS5Bポリメラーゼ」という酵素は、コピーに必要な塩基を運んでくる役割を担っています。
『ソバルディ』は、4種類の塩基のうち、「ウラシル(U)」と非常に似た構造をしています。
塩基を運ぶ「NS5Bポリメラーゼ」は正しい塩基「ウラシル(U)」と、偽の塩基『ソバルディ』の区別がつきません。そのため、間違って『ソバルディ』を運んできます。
普通、正しい塩基が繋がっていれば、遺伝情報は終点に到達するまでコピーが続きます。しかし、間違って『ソバルディ』が組み込まれるとそこで強制的にコピーが停止してしまいます。
その結果、ウイルスは完成しないまま中途半端なところで止まります。
このように『ソバルディ』は遺伝情報であるRNAのコピーを途中で停止させる薬です。こういった作用を持つ薬を「チェーン・ターミネーター」と呼びます。
※チェーン・・・DNAやRNAの鎖のこと
※ターミネーター・・・終点、終末のこと
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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