今シーズン(2015-2016)から、日本でも「インフルエンザワクチン」が4価に
2015~2016年のシーズンから、日本でも4価(4種混合)の「インフルエンザワクチン」が使われることになりました。これによって、流行するインフルエンザのタイプをほぼ網羅することができるようになります。
予防接種の値段・料金がほとんどの医療機関・都道府県で値上がりしていますが、これはワクチンが”レベルアップした”ことが理由です。
つまり、何が変わるのか
これまで3価(A型2株 + B型1株)であったワクチンが、4価(A型2株 + B型2株)になります。B型インフルエンザのワクチンを1種類追加することになります。
主に流行するB型インフルエンザは、「山形系統」か「ビクトリア系統」と呼ばれる2つのタイプです。これまでは、両方が同時に流行することが少なかったため、シーズン前にどちらが流行するかを予測し、一方だけをワクチンに入れていました。
しかし、今シーズン(2015-2016)からは、両方が入っているワクチンになります1)。
1) 厚生労働省 第10回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会研究開発及び生産・流通部会配布資料
これによって、どちらのB型インフルエンザが流行しても、もし両方が流行したとしても、効果を発揮できるようになります。
4価、とはどういうことか
「そのワクチンを使うことで、何種類のウイルスや細菌に対して免疫を獲得することができるのか」を”価”として表現します。
ウイルスや細菌も、ヒトと同じように様々に異なる遺伝子を持ち、色々な特徴を持っています。ヒトの免疫は、”指名手配書”を使って犯人を検挙するように、外敵のデータベースを基に働きます。
ワクチン接種は、この外敵のデータベースに、新しいウイルスや細菌の情報を追加することを意味します。
そして、「4価のワクチン」とは、4種類の指名手配犯をデータベースに追加できるワクチン、ということです。
これまで、日本では4価のワクチンを作れなかった
日本では、「生物学的製剤基準」によって、薬に含まれるタンパク質の上限量が定められています。この制限は、薬に病原性のあるタンパク質が混入すること等を防ぐために必要なものですが、この制限によって、インフルエンザのワクチンを3株までしか入れることができませんでした。
そのため、B型インフルエンザのうち、主に流行する2つの株から、”今シーズンは、どちらが流行するのか?”を予測して、どちらか一方だけをワクチンに入れる方法がとられてきました。
これまで、世界保健機関(WHO)も3価(A型2株 + B型1株)のインフルエンザワクチンを推奨していたこともあり、正しい予測がされれば問題ありませんでした。しかし、最近は2株のB型インフルエンザが同時流行する傾向が増えてきたため、4価のインフルエンザワクチンが求められていました。
アメリカでは日本に先立って2013-2014のシーズンから4価のワクチンを導入し、A型・B型インフルエンザを予防する際に有効であることを報告しています。
薬剤師としてのアドバイス:ワクチンの接種を受けよう
インフルエンザワクチンの接種には、発症予防や、万が一発症しても重症化を防ぐ効果があります。
小さな子どもの場合、ワクチン接種をしておくことで「インフルエンザ脳症」を防ぐことができるとされています。
また、「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015」においても、ワクチン接種が推奨されています。
更に、近年は抗ウイルス薬に耐性を持ったインフルエンザウイルスが出現しています。2014-2015のシーズンには、日本で『タミフル(一般名:オセルタミビル)』や『ラピアクタ(一般名:ペラミビル)』に耐性を持ったウイルスが検出されています2)。
2) 国立感染症研究所及び全国地方衛生研究所「抗インフルエンザ薬耐性株サーベイランス」
こうした状況からも、インフルエンザの予防接種を受けることをお勧めします。
もし、貴方1人が予防接種を受けなくても、もしかするとインフルエンザにはならないかもしれません。でもそれは、周りの人たちが予防接種を受けて”感染源”を減らしてくれているからに他なりません。
また、一部ネット上では「インフルエンザワクチンは打たないで」というデマのまとめが広まっていますが、古い情報と誤解による誤った情報です。
+αの情報:料金も値上がり
ワクチンに含まれるウイルス株が増えたことで、ワクチンの価格も1.5倍に値上がりしています。
ただし、インフルエンザの予防接種は自由診療にあたり、接種の価格・料金は医療機関が独自に設定するものです。具体的な値段は各医療機関へお問い合わせください。
※昨シーズン(2014-2015)の全国平均:接種1回あたり2,500円程度(およそ2,000~4,000円)
本記事は2015年10月4日の「LINEニュース」に引用されました。
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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