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知っておくべきこと 妊娠、授乳

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妊娠に気付かず薬を飲んでいた時は、どうすれば良い?~「禁忌」の意味と、妊娠の4つの時期

回答:気付いた時点で、主治医と相談を

 妊娠に気付いた時点で主治医に連絡し、対応を相談するようにしてください。

 自己判断で薬を中止してしまうと、母体の健康を損ない、胎児により大きな悪影響を及ぼす可能性があります。

 妊娠中でも安全に使える薬はたくさんあります。
 また、「妊婦に禁忌」とされる薬の中にも、妊娠の時期や病気の状態によっては、薬を使った方が母子共にメリットが大きく、治療に使うケースもあります。

 単に添付文書やインターネット上の情報に「禁忌」と書かれているからというだけで、怯える必要はありません。

回答の根拠①:妊娠中でも安全に使える薬がたくさんある

 薬には、妊娠中でも安全に使える薬がたくさんあります。

 世の中に「絶対安全」というものは存在しませんが、妊娠中の薬の安全性評価の一つである「オーストラリア基準」では、最も安全性評価の高い【A】を、以下のように表現しています。

 これまでに多くの妊婦や妊娠可能年齢の女性に使用されてきた薬だが、それによって奇形の頻度や胎児に対する有害作用の頻度が増す、という”いかなる証拠”も観察されていない。

 
 例えば、ステロイドである『プレドニン(一般名:プレドニゾロン)』や、ペニシリン系抗生物質である『サワシリン(一般名:アモキシシリン)』などが【A】と評価されています。
 このような薬を自己判断で止めてしまうと、母体が健康を損ない、かえって胎児に悪影響を与える恐れがあります。

 しかし、妊娠していないことを前提に処方された薬は、妊娠が判明した後でも最適かどうかはわかりません。まずは主治医に連絡し、今後の対応を相談するようにしてください。

回答の根拠②:「妊婦に禁忌」という原則を見ただけでは、正しい判断はできない

 添付文書やそれを基にしたインターネット上の情報に書かれた「禁忌」とは、あくまで原則であって、必ずしも全ての人にとって絶対に避けるべき禁忌とは限りません

 我々薬剤師も、添付文書の原則だけを基にした判断や指導は行っていません。他にもオーストラリア基準などの客観的な安全性評価を参考にし、具体的なリスクの内容を知った上で使用の是非を考えています。

「妊婦に禁忌」という表現の中身には、ばらつきがある

 例えば、薬の添付文書上で「妊婦に禁忌」とされている薬に、吐き気止めの『ナウゼリン(一般名:ドンペリドン)』と、胃薬の『サイトテック(一般名:ミソプロストール)』があります1,2)。

 1) ナウゼリン錠 添付文書
 2) サイトテック錠 添付文書

 原因不明の吐き気に『ナウゼリン』を飲んでいたところ、後になって妊娠による「つわり」であることがわかった、といった事態は起こり得ます。
 そうした場合でも、今回の妊娠を諦めるといったような必要はなく、気づいた時点で医師に連絡し、薬を変更してもらうといった対応で十分です。

 これは、『ナウゼリン』は妊娠がわかっている人に敢えて使うメリットはないものの、悪影響を与える可能性はそれほど大きくないからです。
 妊娠中の薬の安全性評価である「オーストラリア基準」でも【B2】に該当し、何がなんでも絶対に避けなければならない薬ではありません

 一方で、胃薬の『サイトテック』も添付文書に「妊婦に禁忌」と書かれています。
 これは、妊婦が使用すると流産を起こすリスクがあるからです。そのため、先ほどの「オーストラリア基準」でも【X】の絶対禁忌に指定されています。

 このような薬の場合、そもそも妊娠を考える時点で医師に伝え、予め薬を変更しておかなければなりません。
 何らかの事情により、服用中に妊娠に気付いた場合は、気づいた時点ですぐに主治医に連絡し、今後の対応を相談する必要があります。

 いずれにせよ、気付いた時点で主治医にすぐ連絡をとる、という行動が最善であることに違いはありません。

回答の根拠③:妊娠の4つの時期で、禁忌の薬も変わる

 妊娠の時期によっても、薬のリスクは変わってきます。そのため、単に「妊婦に禁忌」という表現だけでは正しい判断を下すことはできません。

◆妊娠前
 薬が身体に長期間蓄積するようなタイプの薬を使っている場合のみ、その影響に気を付ける必要があります。『チガソン(一般名:エトレチナート)』などが該当します。
 妊娠を考える場合は、事前に主治医と相談するなどの対応が必要です。

◆All or Noneの時期(受精から妊娠3週末まで)
 受精~2週の期間は、ほとんど妊娠と気づくこともありません。胎児もまだ器官形成を始めていないため、もし致命的な影響を受けた場合は、そもそも着床しません。
 しかし、多少の影響であれば、受精卵は完全に修復されて健康体になります。つまり、薬による「催奇形性」の可能性はゼロです。

◆最も注意が必要な時期(妊娠4週~12週末まで)
 4週~15週の期間は、胎児が最も薬に敏感になる時期です。この時期、胎児は心臓や中枢神経、消化管、四肢などを形成している状態のため、薬による「催奇形性」が問題になります。
 妊娠に気づいた際は、その時点で早めに主治医から適切な指導を受ける必要があります。

◆催奇形性の危険がなくなる時期(妊娠13週以降)
 13~15週以降になると、胎児は大人と同じ臓器を持つようになっています。そのため、服用した薬はそのまま大人と同じような薬理作用を発揮することになります。
 このときホルモンを抑える薬を服用すると、胎児のホルモンも同様に抑えられることになり、胎児の臓器機能を低下させる恐れがあります。

薬剤師としてのアドバイス:「禁忌」という表現に惑わされない

 インターネットを使えば、薬の「添付文書」にも簡単にアクセスできてしまいます。
 しかし、そこに「妊婦に禁忌」と書かれているからといって、絶対に自己判断で薬を中止したり、人工中絶を選択したりしないでください。

 先述の通り、「妊婦に禁忌」という原則だけで正しい判断を下すことはできません。必ず、妊娠に気付いた時点で主治医に相談し、今後の治療方法について指導を受けるようにしてください。

 多くの場合は、気付くまでに飲んでしまった薬による悪影響について、心配する必要はありません。まずは落ち着き、いつから、どんな薬を、どれだけの期間・量を飲んでいたのか、医師に正確に伝えるようにしてください。

 

~注意事項~

◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。

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