ステロイドの点鼻薬をもらったけど、全身の副作用は起きない?~内服と点鼻の大きな違い
記事の内容
回答:起きないと考えて良い
点鼻薬は、鼻だけで作用し、全身に作用しないように作られています。
内服薬と異なり、血液中に吸収されて全身に作用を及ぼすことがありません。そのため、ステロイド薬の全身的な副作用(糖尿病になる、胃潰瘍になる、骨がもろくなる、顔が丸くなる等)は起こりません。
ただし、長期で大量に使用した場合など、極端な使用をしていた場合にはこうした副作用が出る可能性もゼロではありませんので、必ず医師・薬剤師の指導に従って使用してください。
回答の根拠:飲んだ薬のうち、どれくらいを薬として利用できるか?という指標
使った薬が、”どれだけ全身の循環血液に到達するのか?”ということを推し量る指標に、「生物学的利用能(バイオアベイラビリティ)」というものがあります。
言葉は難しいですが、単なる割合を表すものです。
100mgの薬を飲んだとき、「バイオアベイラビリティ」が90%であれば、90mgが血液に乗って効果を発揮するということです。10%は胃で分解されたり、肝臓で分解されたり、そもそも消化管から吸収されなかったり、といった理由で利用できない、という意味です。
バイオアベイラビリティを高くする
薬が全身で効果を発揮するためには、その成分をなるべく効率良く血液中へ到達させる必要があります。そのため、「バイオアベイラビリティ」が高くなるように設計する必要があります。
例えば、内服の抗生物質である『サワシリン(一般名:アモキシシリン)』は88.7%で、飲んだ薬の大部分が血液中に移行し、効果を発揮できるようになっています1)。
1) サワシリン錠 インタビューフォーム
バイオアベイラビリティを低くする
逆にステロイドの点鼻薬は、鼻でだけ作用して全身に作用しないことよう、「バイオアベイラビリティ」が低くなるように設計されています。
『ナゾネックス(一般名:モメタゾンフランカルボン酸エステル水和物)』は、この「バイオアベイラビリティ」が0.2%未満とされています2)。
2) ナゾネックス点鼻液 インタビューフォーム
これは、使用した薬の成分のうち、0.2%未満の量しか全身に到達しない、ということです。そもそも、点鼻薬の1回使用量は内服薬と比べてもごく微量です。その上、その微量な内の0.2%未満しか全身に到達しないため、全身に作用することはほとんどない、と言えます。
+αの情報①:目的に応じた使い方をする
ステロイドの点鼻薬は、全身の副作用を防ぐため、「バイオアベイラビリティ」が低くなるような使い方をします。
一方、”ニトロ”と呼ばれる狭心症の薬は、普通に服用しても「バイオアベイラビリティ」が極めて低いため、効果が期待できません。そのため、「バイオアベイラビリティ」を高くするために”舌下に置く”という特殊な使い方をします。
このように、効果と副作用の両面から、最も安全かつ有効に使う方法が”用法”として決められています。薬は自己流で使わず、きちんと用法を守るようにしましょう。
+αの情報②:アレルギーの点鼻薬には、「ステロイド」と「血管収縮剤」の2タイプがある
アレルギーに用いる点鼻薬には、「ステロイド」と「血管収縮剤」の2タイプがあります。
「ステロイド」の点鼻薬は、花粉症のシーズンを通して、しばらく続けて使う必要のある薬です。
「血管収縮剤」の点鼻薬は、どうしても鼻づまりを解消したい時にピンポイントで使うもので、症状が治まったら使用を止める薬です。
それぞれ正しい使い方は異なりますので、混同しないよう注意してください。
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
この記事へのコメントはありません。