水を飲んでいたら脱水症状にならない?~「水」と「電解質」のバランスで考える3つの脱水パターン
回答:水を飲んでいても脱水症状になる
通常は、水を飲むだけでも脱水症状や熱中症の予防になります。しかし、高熱がある時や、汗を大量にかいた時などは、「水」だけでなく”塩”などの「電解質」も身体から失われています。そのため、「水」と一緒に塩分(電解質)を補給する必要があります。
こうした場合には、単なる水ではなく経口補水液などを使って、「水」と「電解質」の両方を補給することをお勧めします。
また、お酒やコーヒーなどの飲料では水分補給にならないことにも注意が必要です。
回答の根拠:「水」と「電解質」のバランスから考える、3つの脱水症状
身体の水分には、ナトリウム(Na)やカリウム(K)などの「電解質」が含まれています。 健康な状態では、この「電解質」の濃度が一定に保たれているため、「水」と「電解質」のバランスも良い状態になっています。
この「水」と「電解質」のバランスが何らかの原因で崩れると、脱水症状を起こします。
①「水」が減って、身体の「電解質」濃度が高くなる脱水症状(高張性脱水)
一般的に、動物にとって「水」よりも「電解質」の方が手に入れにくいため、優先して守ろうとします。そのため、運動などで自然に汗をかいた時には、「電解質」よりも「水」の方が多量に失われます。
このとき、身体の中では「電解質」の濃度が高くなっているため、「水」が欲しい状態、いわゆる「喉が渇いた」状態になります。※塩辛いものを食べたら「喉が渇く」のも同じ原理です。
「水」があまりに減って「脱水症状」に陥ると、血液もドロドロになって流れが滞るので、全身の臓器にエネルギーが供給されにくくなります。その結果、集中力が低下したり、胃腸の動きが鈍って食欲不振を起こしたりします。
このタイプの「脱水症状」は、ただの水を飲むだけでも治ります。
②「水」も「電解質」も減ってしまう脱水症状(等張性脱水)
下痢や嘔吐などで急速に体液を失った場合、身体は「電解質」を守ることができないので、「水」も「電解質」も一緒に失ってしまいます。このタイプの「脱水症状」が起こると、全身の体液・血液量が減るために血圧も下がってしまいます。
特に高齢者や乳幼児は、元々身体の水分量が少ないため、ちょっとした下痢や嘔吐でも致命的な脱水症状につながる恐れがあります。
「水」を飲むだけでは解消しないので、塩分を摂ったり経口補水液を使ったりして、「電解質」も一緒に補給する必要があります。
③「電解質」の濃度が下がってしまう脱水症(低張性脱水)
大量の汗をかいたり、下痢や嘔吐をしている時に、「水」ばかりガブガブと飲んでいると、今度は「水」が過剰になってきて、「電解質」の濃度が下がっていきます。このとき、身体は不足した「電解質」を調達しようと、神経や筋肉にあるNaやKを使って補おうとします。
その結果、NaやKを失った神経や筋肉は正常な働きができなくなり、脚がつったり、手がしびれたり、筋肉に力が入らなくなったり、といった症状が現れます。
こうした脱水症状を防ぐために、夏場に激しい運動をする場合、炎天下で作業する場合、下痢や嘔吐が激しい場合には、「水」だけでなく「電解質」も必ず補給する必要があります。
薬剤師としてのアドバイス:夏は、普通に生活しているだけでも脱水症状を起こすことも
いずれの「脱水症状」も、はじめのうちは自覚症状もなく進行します。特に、夏場は運動をしたり、下痢や嘔吐をしたわけでなくとも、普通に生活しているだけで脱水症状を起こすこともあります。
最近は「OS-1」をはじめとする”経口補水液”の宣伝も活発になり、脱水症状に対する正しい認識も広まってきましたが、夏場は特に「水」と「電解質」のバランスに気を付けた生活を心がける必要があります。
例:大塚製薬が販売する経口補水液「OS-1」
「OS-1」などの”経口補水液”は、「水」と「電解質」を適度なバランスで補給できる飲料です。
日常的に利用する必要はありませんが、夏場や体調が悪いときのために2~3本程度は備えておくことをお勧めします。
「アクエリアス」などのスポーツドリンクでも代用できますが、糖分の撮り過ぎには注意が必要です。
+αの情報:お酒やコーヒーでは水分補給にならない
お酒やコーヒーでは水分補給になりません。 これは、お酒やコーヒーに含まれる「アルコール」や「カフェイン」は利尿作用があるため、飲料として摂れる水分量よりも、尿として排泄される水分量の方が多くなるからです。
長時間のフライトでは、脱水症状による「エコノミークラス症候群」を起こす恐れがあります。その際、「お酒やコーヒーを飲んでいるから大丈夫」というわけではないことは、知っておいてください。
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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