「機能性表示食品」って何?~トクホとの2つの違い
回答:機能表示が認められる食品のこと
「機能性表示食品」は2015年4月に新しく設けられたカテゴリで、「特定保健用食品(トクホ)」や「栄養機能食品」と同じように、「お腹の調子を整える」などの機能の表示が認められている食品です。「特定保健用食品(トクホ)」、「栄養機能食品」、「機能性表示食品」はそれぞれ異なる特徴を持つ食品です。正しく理解し、活用するようにしましょう。
特定保健用食品(トクホ)との違い
①ターゲットが異なる 1,2)「特定保健用食品(トクホ)」 : 生活習慣病などに”罹患する前の人”、もしくは”境界線上の人”
「機能性表示食品」 : ”疾病に罹患していない人” ※未成年や妊婦・授乳婦を除く
②国の審査の有無
「特定保健用食品(トクホ)」 : 国が有効性と安全性の審査を、個別に行った上で許可を与える
「機能性表示食品」 : 国は有効性と安全性についての審査を行っていない(臨床データの届け出を受けているのみ)
1) 消費者庁 「特定保健用食品の許可審査手続きに関する説明資料」
2) 消費者庁 「機能性表示食品の届出書作成に当たっての留意事項」
詳しい回答①:機能性の表示ができる食品3つ
食品のうち、「お腹の調子を整える」や「脂肪の吸収を抑える」などの機能性の表示ができるのは、「特定保健用食品(トクホ)」、「機能性表示食品」、「栄養機能食品」の3つだけです。これ以外のものが機能性を表示することは禁じられています。紛らわしいものに、「栄養補助食品」や「健康補助食品」、「栄養調整食品」などの名前がありますが、こういったものは機能性の表示が許可されていない、一般的な食品に該当します。
また、いずれの食品も「糖尿病の人に」といったような、特定の病気を予防・治療できるかのような表現は使用できません。病気の治療は”医薬品”の領域です。
詳しい回答②:なぜ新しいカテゴリが登場したのか?
「機能性表示食品」は、「特定保健用食品(トクホ)」と同じように、健康の維持増進に役立つことが、科学的根拠に基づいて証明された食品です。 「特定保健用食品(トクホ)」の認定を受けようとすると、まずその食品そのものを使った臨床試験を行う必要があります。その上で、国が有効性と安全性を審査し、消費者庁が食品1つずつに許可を与える、というものでした。
非常に厳しい審査によって国から有効性と安全性を保証されるものでしたが、開発・販売するにはお金と時間がかかります。そのため、導入から20年で1000品目程度しか許可されていません。
そこで、国ではなく、”企業が自身の責任において”有効性と安全性を保証するだけで、販売できるようにしよう、というのが「機能性表示食品」です。
ここで必要なことは、臨床データを消費者庁に届け出るだけで、国がそれを審査することはありません。あくまで企業が自主的に行うものです。
トクホがあまりにハードルが高く、経済活動が阻害されているため、1つハードルの低いカテゴリを作り、食品業界を活性化しようという側面があります。
詳しい回答③:栄養機能食品とは
「栄養機能食品」は、ビタミンやミネラルなど20種の成分を、一定の基準量含むものであれば、特に届出もなく表示できるものです。ビタミンやミネラルは、既に有効性や安全性について十分な科学的根拠が確立されているため、特別改めて何かの許可や届出が不要、ということになっています。
薬剤師としてのアドバイス①:病気は薬で治そう
こうした食品を購入する人は健康志向が高い人の他に、既に健康に不安のある人も多いのが実情です。そのため、「副作用が怖い薬より、安心な健康食品で病気を治そう」と考える方が多いようで、実際に薬局でもそういったお話を伺います。 しかし、先述の通り、「特定保健用食品(トクホ)」も「機能性表示食品」も、健康な人を対象としたものであって、病気の予防や治療を目的したものではありません。
治療するためには、きちんと医師の指示通りに薬を服用する必要がありますので、自己判断で薬を止めたりしないでください。
また、中には薬との飲み合わせが悪いものもありますので、こうした食品を摂取している場合には薬局で薬剤師に伝えるようにもしてください。
薬剤師としてのアドバイス②:謳い文句には気を付けよう
※「機能性表示食品」と、含まれる成分の例・「ロートV5粒」・・・ルテイン、ゼアキサンチン (ロート製薬)
・「パーフェクトフリー」・・・難消化性デキストリン (麒麟麦酒)
・「食事の生茶」・・・難消化性デキストリン (麒麟麦酒)
・「ナイスリムエッセンス」・・・ラクトフェリン (ライオン)
・「ヒアロモイスチャー240」・・・ヒアルロン酸 (キユーピー)
・「アミールWATER300」・・・ラクトトリペプチド (カルピス)
現状、「特定保健用食品(トクホ)」でも許可をとれそうな大企業が多いですが、今後は中小企業の参入も考えられます。
「機能性表示食品」はあくまで企業の自己申告に委ねられるところが大きいものです。果たして本当に信頼できる臨床データが届け出られているのか、その謳い文句に誇張表現はないのか、慎重に見極めていく必要があります。
※医薬品でないものが、効果・効能を謳うと「薬事法」違反です。
※消費者が誤解するような表現を使って販売すると「景品表示法」違反です。
※誇大な表現や虚偽の情報で健康食品などを販売すると「健康増進法」違反です。
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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