コレステロールはもう気にしなくて良くなった?~摂取制限が撤廃された真意
記事の内容
回答:LDLコレステロール値が高いことは、相変わらず悪いこと
「2015年日本人の食事摂取基準」において、これまで定められていたコレステロール値の基準が撤廃されました。
これによって「もうコレステロールを気にしなくて良い!」と言っている人たちが居られますが、そういう意味ではありません。
むしろ、LDLコレステロール値を減らすためには、食事による摂取量を減らすだけでは駄目で、野菜や海藻の積極的な摂取、タバコ・お酒の減量、減塩、1日30分以上の有酸素運動などを行い、多方面からアプローチしなければならない、という意味です。
LDLコレステロール値が高いことは、心筋梗塞や脳梗塞などの危険因子であることに、変わりはありません。
回答の根拠①:LDLが高いことは、血管トラブルの元
悪玉コレステロールであるLDLの血中濃度が高いと、心筋梗塞や脳梗塞などの危険因子になります1)。
1) Circ J.76(1):221-9,(2012) PMID:22094911
そのため、基準値を越えている場合には「スタチン製剤」などの薬物治療によって下げる必要があります。
回答の根拠②:撤廃の理由は、食事制限の大きな個人差
食事制限をしても、LDLコレステロール値がほとんど下がらない人も居ます。
これは、LDLコレステロール値が高い原因は人によって様々で、一概に食事からのコレステロール摂取を制限すれば解決するものではない、ということを意味しています。
つまり、食事制限の効果は”個人差”が大きいため、基準として設けるに適したものではない、ということです。これが基準撤廃の理由です。
また、肉や乳製品、卵といった、いわゆる”コレステロールの高い食品”が悪者扱いされ、健康志向の高い高齢者から忌避される傾向が高まっていました。
しかし、最近では「サルコペニア」などの概念が生まれ、特に高齢者の低栄養が問題視されています。高齢者にとっては低栄養である方が問題で、むしろ積極的に肉や乳製品、卵といった”栄養価の高い食品”を摂るべきという考え方も広まってきています。
こうした背景から、一概に「コレステロールの摂取を減らせば良い」という問題でもない、という考え方に変わってきています。
薬剤師としてのアドバイス:従来通り、”食事にも”気を付けるべき
先述の通り、LDLコレステロール値が高い原因は人によって様々です。単純に、摂取するコレステロールが多い場合には、これまで通り摂取量を減らせば良いです。
LDLコレステロール値は、バターなどの動物性油脂、肉の脂身などに含まれる飽和脂肪酸の過量摂取で上昇します。また、生クリームなども飽和脂肪酸が多いものとして知られています。
こういった食品を多く摂取するとLDLコレステロール値は上がってしまいますので、従来通りに注意を続けるべきです。
また、コレステロールの排出量が少ない場合には、コレステロールの排出を促す食品を積極的に摂取する必要があります。魚や大豆製品が代表的です。
更に、LDLコレステロールが多いと最終的に動脈硬化につながることから、動脈硬化のリスクを生活の中から排除していくことも効果的です。タバコや過量のアルコール、塩分の摂り過ぎ、運動不足などは動脈硬化の代表的な危険因子です。
特に、1日30分以上の有酸素運動を続けることは、動脈硬化の予防に効果があるとされています2)。
2) 日本動脈硬化学会 「動脈硬化性疾患予防ガイドライン (2012)」
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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