薬の名前にはどんな意味があるの?~医薬品の商品名の4つの由来
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回答:由来は4パターンある
薬の名前の由来には、大きくわけて以下のようなものがあります。
1. 化学物質としての名前に由来するもの (例:ロキソニン → 一般名:ロキソプロフェン)
2. 薬の分類に由来するもの (例:タケプロン → 武田薬品工業のプロトンポンプ阻害薬)
3. 薬の効果を表現したもの (例:キプレス → キープ=維持 + レスト=寛解)
4. 薬の開発・販売に向けた意気込みなど、特に脈絡のないもの (例:クラビット →Crave it(待ち望まれた薬))
何の薬か覚えるのも大変な場合は、由来を紐解いてみるもの手です。
似たようなカタカナの名前ばかりですが、ご自分が使っている薬については、できるだけ正確な名前を憶えておくことをお勧めします。
①化学物質としての名前に由来するもの
薬には販売する時の”商品名”と、化学物質としての”一般名”があります。他にも分子式や世界共通の命名法に基づいた”化学名(IUPAC)”などが存在します。
例:『ロキソニン』
商品名:ロキソニン錠60mg
一般名:ロキソプロフェンナトリウム(Loxoprofen Sodium)
分子式:C15H17NaO5・2H2O
化学名:Monosodium 2-{4-[(2-oxocyclopentyl)methyl]phenyl}propanoate dihydrate
このうち、”一般名”をもとに名前をつける薬が多く存在します。商品名と有効成分が類推できるため、何の薬か覚えやすい反面、後発医薬品と名前が類似したり、別の有効成分とも似たりした場合は、ミスにつながります。
『アムロジン』 → 一般名:アムロジピン
『オメプラール』 → 一般名:オメプラゾール
『オルメテック』 → 一般名:オルメサルタン
『クラリシッド』 → 一般名:クラリスロマイシン
『クラリス』 → 一般名:クラリスロマイシン
『セレコックス』 → 一般名:セレコキシブ
『ニューロタン』 → 一般名:ロサルタン
『パキシル』 → 一般名:パロキセチン
『ヒルドイド』 → 一般名:ヘパリン類似物質(ヒル属が持つ血を固まらせない成分と、似たもの「~oid」)
『プルゼニド』 → 一般名:センノシド(純粋なセンノシド=Pure sennnoside)
『メチコバール』 → 一般名:メコバラミン
『メマリー』 → 一般名:メマンチン
『ロキソニン』 → 一般名:ロキソプロフェン
『ワーファリン』 → 一般名:ワルファリン
②薬の分類に由来するもの
薬は効果・効能によってある程度の分類ができます。胃薬が「胃粘膜保護薬」・「H2ブロッカー」・「プロトンポンプ阻害薬」などに分類されるのが例です。
薬の分類に由来した名前がついた薬は、メーカーや薬効が類推できるため、覚えやすい薬と言えます。
『タケキャブ』 → 武田薬品工業のP-CAB
『タケプロン』 → 武田薬品工業のプロトンポンプ阻害薬
『ブロプレス』 → アンジオテンシンⅡ受容体を「ブロック」して、血圧(pressure)を下げる
『リンデロン』 → 副腎皮質(Nebennierenrinde)のrinde
③薬の効果を表現したもの
”よく眠れる”、”痛みがとれる”など、効果を表現した言葉で名付けられた薬もあります。
意味を知れば覚えやすいので、一度インタビューフォームを見てみることをお勧めします。
『アーチスト』 → 高血圧、狭心症を劇的かつ個性的に治療する芸術家、という意味
『アリセプト』 → 「アルツハイマー」を、Achレセプターを阻害して治療する
『アレロック』 → 「アレルギー」症状を、「ブロック」する
『キプレス』 → 喘息治療の目標である「寛解(レスト)」を、「維持(キープ)」する
『グルファスト』 → 食後の「グルコース」の上昇を、速やかに(fast)改善する
『シングレア』 → 1日1回(single)で、呼吸(Air)を楽にする
『ジェイゾロフト』 → 日本「Japan」 + ラテン語の心「Zo」 + 持ち上げる「Loft」
『デパス』 → 病的状態から離れて(De)、通り過ぎる(Pass)
『ナウゼリン』 → 吐き気(nausea)から
『ノルバスク』 → Normalize Vascular(血管を正常化させる)の意味
『パリエット』 → 胃の壁細胞(parietal cell)から
『ハルシオン』 → 風や波を静め、凪を呼ぶ古代ギリシャの伝説の鳥「Halcyon」に由来
『プログラフ』 → Protect of graft rejection(移植片拒絶反応の抑制)の意味
『マイスリー』 → My Sleepの略
『ミカルディス』 → 心筋(myocardial)と心血管(cardiovascular)の疾患(disease)に効く
『ムコスタ』 → 粘膜(mucosal)の安定化(stabilizer)
『リピトール』 → 脂質(lipid)から
『リフレックス』 → 回復(recovery)もしくは寛解(remmission) + しなやかさ(flexibility)
『リリカ』 → Lyrical(叙情的な)が由来。読み、聞き、書いた場合に印象が良い言葉
『ルネスタ』 → 月(Luna)と星(Star)
『レミニール』 → 記憶に関する「remind」や「remember」から
『ロゼレム』 → ”健やかな眠りを取り戻し、バラ色の夢を見ましょう”の願いで「バラ(Rose)」 + レム睡眠
④意気込みなど、特に由来のないもの
インタビューフォームには特に由来について明記されていない薬もたくさんあります。ですが、莫大なコストをかけて開発した薬に、てきとうな名前を付けることはないはずです。どんな意味が込められているのかを考えるのも面白いものです。
『クラビット』 → Crave it(待ち望まれた薬)という意味
『クレストール』 → 頂上を意味するCrestから
『ネキシウム』 → Next Millenniumの略。千年に一度の薬だという意気込み
『ザイザル』 → ※公式には由来なし(これより良い薬はない最終兵器「xyz」、という抗アレルギー薬「al」という意気込みか?と薬剤師界隈では話題)
参考)各医薬品インタビューフォーム
+αの情報:同じ薬でも、販売者が違うと別の名前で売り出される
『シングレア』と『キプレス』、『アムロジン』と『ノルバスク』のように、全く同じ薬であるにも関わらず、販売会社が異なるために別の名前がつけられている薬もあります。
こういった薬は、名前が違うので別の薬のように思われますが、全く同じ薬です。
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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