『ベピオ』ってどんな薬?~耐性菌の心配がないニキビ薬、髪や服の脱色に注意
記事の内容
回答:耐性菌の心配が少ない、ニキビの薬
『ベピオ(一般名:過酸化ベンゾイル)』は、ニキビ治療の塗り薬です。
ニキビの治療には、原因となる「アクネ菌」を退治する抗生物質を使いますが、こうした抗生物質は使い続けることで「耐性菌」が生まれ、薬が効きにくくなってしまう場合があります。
一方、『ベピオ』はこれまでの抗生物質とは異なり、使い続けていても「耐性菌」が生まれる心配が少なく、また既に「耐性」を得ている菌に対してもよく効きます。
このことから、既に欧米ではニキビ治療の中心(第一選択薬)として使われています。
ただし、『ベピオ』が髪や服に付くと脱色されてしまうことがあります。お気に入りの衣服などを着た状態で薬を使うのは避けることをお勧めします。
回答の根拠①:『ベピオ』の作用機序~耐性菌が生まれにくい理由
『ベピオ』を塗ると、薬の有効成分である「過酸化ベンゾイル」は分解され、「酸化ベンゾイルラジカル」や「フェニルラジカル」などのフリーラジカルを発生させます。
このフリーラジカルが、細菌の細胞膜や遺伝子情報などを破壊することで、抗菌作用を発揮します1)。
1) ベピオゲル 添付文書
耐性が生まれにくい理由
細菌も生物なので、細胞壁やタンパク質・DNAなど、生命活動に必要な物質を合成しています。
抗生物質は、こうした合成に関わる酵素や基質を邪魔することによって、抗菌力を発揮します。
※抗生物質の種類と、作用点
β-ラクタム系:細胞壁の合成(酵素)
グリコペプチド系:細胞壁の合成(基質)
アミノグリコシド系:タンパク質の合成
マクロライド系:タンパク質の合成
キノロン系:DNAの複製
そのため、こうした合成に関わる酵素や基質の形が変わってしまうと、薬が効かなくなってしまうことがあります(耐性の獲得)。
一方、『ベピオ』は細胞構造や遺伝子情報などあちこちの場所に直接作用します。そのため、細菌が一部分を変化させても十分な耐性にはならず、抗菌作用は弱まりません。
このことが、『ベピオ』では耐性が生まれにくい要因と考えられています。
また『ベピオ』は、既に「クリンダマイシン」や「エリスロマイシン」に耐性を持った「アクネ菌」に対しても抗菌力が変わらず、効果は十分に得られることが確認されています2)。
2) Antimicrob Agents Chemother.55(9):4211-17,(2011) PMID:21746943
回答の根拠②:漂白作用~お気に入りの服を着て使わないように
『ベピオ』には、「オキシドール(過酸化水素水)」と同じ漂白作用があるため、髪や衣服に付着すると脱色して白くなってしまう恐れがあります1)。
お気に入りの服を着たまま薬を使うと、服が白くなってしまうといったトラブルの元になります。入浴時など、服への付着の心配がないタイミングでの使用をお勧めします。
薬剤師としてのアドバイス:乾燥・ベタベタはニキビの大敵
ニキビは、皮膚の乾燥も大きな原因の一つです。
皮膚が潤いを失うと、代わりに脂を出して皮膚を守ろうとします。そのため、ベタベタしているのに乾燥している、といった状態になります。
よく、既にベタベタしているから保湿剤は要らない、と言われることがありますが、脂は水と違って毛穴を詰まらせやすく、ニキビの原因になります。
ベタベタしている状態を脱するためにはまず、保湿剤を使って皮膚に潤いを取り戻す必要があります。
ニキビ治療では『ヒルドイド(一般名:ヘパリン類似物質)』などの保湿剤を一緒に処方されることがありますが、抗菌剤だけ使うのではなく、きちんと保湿によるスキンケアも心がけるようにしてください。
+αの情報:1日1回の配合剤『エピデュオ』
ニキビの治療では、『ヒルドイド』→『ディフェリン(一般名:ディフェリン)』→抗菌剤という3つの薬を重ね塗りすることがあります。それぞれが別の薬だと、重ね塗りが非常に面倒なために、少し良くなると薬を塗らなくなってしまうケースが少なくありません。
そのような手間を減らすために、『ディフェリン』と『ベピオ』が最初から混ざった配合剤『エピデュオ』が2016年11月4日に発売されます。
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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