余った薬、どうして他人にあげたらダメなの?~ダメな理由3つ
回答:薬が合っているかわからないし、もし副作用が起きても補償を受けられないから
自分の薬が余ったからといって、たとえ家族であっても他人に薬をあげることは全くお勧めできません。これには、以下の3つの理由があります。①薬が症状に合っているかどうか、わからない
②自分は大丈夫でも、他の人には副作用が出る恐れがある
③万が一、大きな副作用が出ても、他人の薬を使った場合には補償を受けられない
自分が安易に譲った薬で、相手が大きな副作用に見舞われた場合、公的機関の補償も受けられず、責任のとりようもありません。絶対に、自分の薬を他人にあげたりしないでください。
回答の根拠①:薬が症状に合っているかどうか、わからない
病気やその原因を診断し、治療方針を決めるのは”医学”の専門家である医師の仕事です。素人が自己流でできるものではありません。一見、同じような症状であっても、その原因を正しく見極めなければ薬が逆効果になることもあり、大変危険です。
※痛み止めの『ロキソニン(一般名:ロキソプロフェン)』でよく起こる間違い
『ロキソニン』が効きにくい片頭痛や神経の痛みに対しては、薬の量を増やしても効きません。安易に薬の量を増やすと副作用で胃潰瘍などを起こす恐れがあります。
特に、胃が荒れてお腹が痛い時に『ロキソニン』を使うと、更に胃が荒れて痛みが悪化する恐れがあり、危険です。
※炎症止めの「ステロイドの塗り薬」でよく起こる間違い
「ステロイドの塗り薬」は様々な痒み・炎症に使いますが、水虫などの感染症に使うと菌がより元気になり、症状が悪化することがあります。
また、手や足など皮膚の厚い部位に使う強い「ステロイドの塗り薬」を、皮膚の薄い顔や子どもに使うと、皮膚が薄くなるなどの副作用を起こす恐れがあります。
回答の根拠②:自分は大丈夫でも、他人には副作用が起こる可能性がある
薬には、薬そのものに対する過敏症・アレルギーが起こるリスクがあります。 これは、卵アレルギーや蕎麦アレルギーと同じように、人によってどんなアレルギーを持っているかは個々に異なります。
そのため、自分が大丈夫だったからといって、他の人でも大丈夫である保証はどこにもありません。
回答の根拠③:万が一のときの補償~「医薬品副作用被害救済制度」
日本には、薬を正しく使用していたにも関わらず、副作用が起きて健康被害を受けてしまった人に対して、医療費の実費や生活補償、年金を給付することで救済を図る制度「医薬品副作用被害救済制度」があります。しかし、この制度を受けられるのは、”薬を正しく使用”していた場合に限ります。他人の薬をもらって使ったようなケースは対象外になります。
薬剤師としてのアドバイス:大切な相手であるならばなおさら、自分の薬を譲ったりしてはいけません
家族や友人など、自分にとって大切な存在が何かの病気で苦しんでいる場合、薬を分けてあげたくなる気持ちは十分に理解できますが、相手が大切であるならばなおさら、安易な薬の譲渡はやめるべきです。極端な話ですが、薬を他人にあげるという行為は「薬が合わなくて苦しんだり、何の補償も受けられなくて困ったりしても構わない」というくらい、無責任で危険な行為であるという認識でいる必要があります。
絶対に薬は譲ったりせず、きちんと病院で処方してもらうようにしてください。
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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