『ロキソニン』をたくさん飲んだらどうなる?~効かない時の対応
記事の内容
回答:副作用で別の痛み・トラブルを起こす恐れ
『ロキソニン(一般名:ロキソプロフェン)』をたくさん飲んでも、痛み止めとしての効果が高くなるわけではありません。むしろ、胃粘膜を刺激したり、小腸で潰瘍を作ったりといった、消化管にトラブルを起こす恐れだけが高くなります。
また、痛み止めを日常的に大量に使い続けていると、薬が原因の頭痛「薬物乱用性頭痛」を引き起こす恐れもあります。
そのため、『ロキソニン』を用法・用量を超えて使うことは全くお勧めできません。
薬を使う時は、必ず医師・薬剤師の指示を守り、大量に飲んだりしないようにしてください。
回答の根拠①:用法・用量を守っていても起こる『ロキソニン』の副作用
『ロキソニン』を過量摂取した場合、どういった中毒症状が出るのか、具体的なデータはありません1)。
しかし、『ロキソニン』は用法・用量を守って使っていても、2.25%の頻度で消化器系の副作用(胃部不快感、腹痛、悪心・嘔吐、食欲不振など)が出ることがわかっています1)。
1) ロキソニン錠 インタビューフォーム
そのため、必要以上にたくさん服用した場合には、こうした副作用がより高い頻度、強い症状で現れることが考えられます。
実際、『ロキソニン』などNSAIDsの副作用で起こる胃潰瘍は件数も多く、ピロリ菌の統計にも影響を与えている可能性が考えられています。
回答の根拠②:薬物乱用性頭痛のリスク
『ロキソニン』などのNSAIDsを1ヶ月に100回以上使用するような状態が4~5年続くと、「薬物乱用性頭痛」に至ることが知られています2,3)。
『ロキソニン』の場合、1日3回を何年間も続けて使っていると、この基準を超えてしまう可能性があります。
2) CNS Drugs.19(6):483-97,(2005) PMID:15962999
3) Neurology.59(7):1011-4,(2002) PMID:12370454
月10回以上が基準となる片頭痛の治療薬「トリプタン製剤」よりは起こりにくいですが、『ロキソニン』の方が気軽に使える薬のため注意が必要です。
薬剤師としてのアドバイス①:ロキソニンが効かない時に、まず考えること
『ロキソニン』を飲んでも痛みが治まらない時、原因は3つ考えられます。
① ロキソニンの量が足りない
② ロキソニンがまだ効き始めていない
③ そもそも、ロキソニンで治まる痛みではない
薬の量を増やしたり、追加で薬を飲んで効果が期待できるのは、①のケースのみです。
『ロキソニン』は通常、30~40分ほど、遅くとも1時間経てば効果が現れ始めます。飲んだら秒単位で効果が出るものではありませんので、まずはこの時間を待つ必要があります。
この時間は、1錠飲んでも2錠飲んでも同じで、たくさん飲んだからといって早く効き始めるわけではありません。
また、神経の痛みに対しては『ロキソニン』は効果がありません。ビリビリと電気が走るような痛みはこの神経の痛みである可能性があります。
神経の痛みには『リリカ(一般名:プレガバリン)』や『ノイロトロピン(一般名:ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液)』など、専用の鎮痛薬を使う必要があります。
『ロキソニン』が効かない場合、安易に薬を追加するのではなく、②や③の可能性も考える必要があります。
薬剤師としてのアドバイス②:万が一のときの補償を受けられるように
用法・用量を守らずに薬を使って副作用が起きた場合、補償を受けることもできません。
そのため、『ロキソニン』を飲んでも痛みが治まらない場合、自己判断で安易に薬の量を増やすのではなく、痛みの原因をはっきりさせるために主治医と相談するようにしてください。
+αの情報:小腸・大腸の狭窄・閉塞の副作用が追加
2016年3月、『ロキソニン』の副作用に「小腸・大腸の狭窄・閉塞」が追加されたことが話題になっています。これは、小腸・大腸に潰瘍が起こることが原因とされています4)。
4) ロキソニン錠 添付文書
『ロキソニン』が消化器系に潰瘍を作ることは既によく知られた事実で、特に驚くような報告ではありません。
この報告の症例では、どの程度の頻度・量で『ロキソニン』を使っていたのか明らかではありませんが、必要以上にたくさん飲むと、こうした副作用のリスクが高まることは言うまでもありません。
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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