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消化性潰瘍治療薬 似た薬の違い

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『タケキャブ』と『タケプロン』、同じ胃酸を抑える薬の違いは?~P-CABとPPI、ピロリ除菌の成功率

回答:『タケキャブ』は『タケプロン』より個人差が小さく、ピロリ除菌の成功率が高い

 『タケキャブ(一般名:ボノプラザン)』と『タケプロン(一般名:ランソプラゾール)』は、どちらも胃酸を抑える薬です。

 『タケキャブ』は「カリウムイオン競合型アシッドブロッカー:P-CAB」と呼ばれる薬で、『タケプロン』などの従来のPPIよりも個人差が小さい薬です。そのため、『タケキャブ』を使ったピロリ除菌の成功率も高いのが特徴です。
タケキャブとタケプロン
 ただし、『タケキャブ』は新しい薬のため値段も高く、ジェネリック(後発)医薬品も無いため、『タケプロン』でも治療に問題がなければ、敢えて高い薬を選ぶ必要はありません。

回答の根拠①:代謝酵素「CYP2C19」による個人差

 『タケプロン』は、主に代謝酵素「CYP2C19」によって分解・代謝されます。そのため、遺伝的にこの酵素がよく働く人とあまり働かない人とでは、薬の効き目にも差が生まれてしまうことになります。
タケプロンとCYP2C19
 実際、『タケプロン』は「CYP2C19」の遺伝子型によって、最高血中濃度(Cmax)は約40%血中濃度-時間曲線下面積(AUC)は約67%も低くなってしまうことがあります1)。
 『タケキャブ』もこの酵素によって一部代謝されますが、他の代謝酵素が関与する部分も多いため、「CYP2C19」の遺伝子型が与える影響は35%以下と小さいことが確認されています2)。
タケキャブとタケプロン~CYP2C19の影響
 1) タケプロンOD錠 インタビューフォーム

 2) タケキャブ錠 インタビューフォーム

 このことから、『タケキャブ』は遺伝的体質の影響をあまり受けない、個人差の小さい薬と言えます。

回答の根拠②:『タケキャブ』の高いピロリ除菌成功率

 『タケキャブ』を使った場合の一次除菌の成功率は92.6%と、『タケプロン』を使った場合の75.9%よりも大幅に高くなっています2)。
 また『タケキャブ』は二次除菌でも成功率98.0%と、極めて高い除菌成功率を発揮します3)。

 3) Gut.65(9):1439-46,(2016) PMID:26935876

 これは、主に『タケキャブ』の個人差が小さく、安定した効果を発揮することが要因と考えられています。

薬の個人差と除菌成功率の関係

 胃のpHが3.0(酸性)付近では、ピロリ菌にはほとんど抗生物質が効きません。
 そのため、ピロリ菌を除菌する際には、抗生物質と一緒に「プロトンポンプ阻害薬(PPI)」を使って、胃のpHを4.5以上にしておく必要があります4)。

 この時、PPIの効き目が弱いと十分に胃のpHが上昇せず、抗生物質の効果が弱まって除菌に失敗してしまうことがあります。実際、PPIの個人差によって、ピロリ除菌の成功率に23.5%もの差が生まれるという報告もあります5)。

 4) Aliment Pharmacol Ther.36(10):972-9,(2012) PMID:23009227
 5) Clin Pharmacol Ther.81(4):521-8,(2007) PMID:17215846

速く効くことも要因の一つ

 『タケプロン』などの従来のPPIは、胃酸による活性化を受けてから薬としての効果を発揮します。そのため、効果が現れるまでに若干時間がかかります。
 『タケキャブ』にはこうした活性化は必要なく、そのままの形で作用を発揮するため、従来のPPIよりも速く効果が現れます2)。

 『タケキャブ』のピロリ除菌成功率が高いのは、こうした「立ち上がりの速さ」も一つの要因と考えられています。

薬剤師としてのアドバイス:値段との相談も必要

 『タケキャブ』は、『タケプロン』などのPPIよりも様々な点で改良されている分、値段も高価です。ジェネリック医薬品もまだ無いため、医療費の負担は高額になる傾向があります。

 従来のPPIでも十分に安定した効果が得られる場合には、敢えて高価な新薬に手を出す必要もありません。値段とも相談しながら良い治療を行うことをお勧めします。

※『タケキャブ』の薬価(2018年改訂時)
『タケキャブ(一般名:ボノプラザン)』・・・10mg(134.40)、20mg(201.60)

※PPIの薬価(2018年改訂時)
『タケプロン(一般名:ランソプラゾール)』・・・15mg(71.00)、30mg(124.80)
『オメプラール(一般名:オメプラゾール)』・・・10mg(67.70)、20mg(111.30)
『パリエット(一般名:ラベプラゾール)』・・・・  5mg(55.50)、10mg(99.90)、20mg(190.10)
『ネキシウム(一般名:エソメプラゾール)』・・・10mg(70.00)、20mg(121.80)

ポイントのまとめ

1. 『タケキャブ』は、効き目に個人差が小さい
2. 『タケキャブ』を使ったピロリ除菌の成功率は、一次・二次ともに90%以上と高い
3. 『タケプロン』でも治療に問題がなければ、安くて済む

添付文書、インタビューフォーム記載内容の比較

◆薬効分類
タケキャブ:カリウムイオン競合型アシッドブロッカー(プロトンポンプ阻害薬) / P-CAB
タケプロン:プロトンポンプ阻害薬 / PPI

◆名前の由来
タケキャブ:田薬品工業のP-CAB
タケプロン:田薬品工業のプロポンプ阻害薬

◆適応症
タケキャブ:胃・十二指腸潰瘍、逆流性食道炎、低用量アスピリン・NSAIDs投与時における胃・十二指腸潰瘍の再発抑制
タケプロン:胃・十二指腸潰瘍、逆流性食道炎、吻合部潰瘍、Zollinger-Ellison症候群、非びらん性胃食道逆流症、低用量アスピリン・NSAIDs投与時における胃・十二指腸潰瘍の再発抑制(※15mgのみ)

◆ピロリ除菌に対する適応
タケキャブ:あり(一次除菌成功率92.6%
タケプロン:あり(一次除菌成功率75.9%)

◆「CYP2C19」による影響
タケキャブ:35%以下
タケプロン:Cmax40%低下、AUC67%低下

◆用法
タケキャブ:1日1回
タケプロン:1日1回

◆投与制限
タケキャブ:胃潰瘍(8週)、十二指腸潰瘍(6週)、逆流性食道炎(8週)
タケプロン:胃・吻合部潰瘍(8週)、十二指腸潰瘍(6週)、逆流性食道炎(8週)
※どちらも、再燃を繰り返す逆流性食道炎の維持療法は制限なし

◆剤型の種類
タケキャブ:錠(10mg、20mg)
タケプロン: OD錠(15mg、30mg)、カプセル(15mg、30mg)、静注

◆製造販売元
タケキャブ:武田薬品工業
タケプロン:武田薬品工業

+αの情報:ピロリ菌の「偽陰性」を示す可能性

 『タケキャブ』は、ピロリ菌の「ウレアーゼ活性」に対する抑制作用を持っていません2)。
 しかし、ピロリ菌の活動を抑える静菌作用により「偽陰性」を示す可能性があり、従来のPPIと同様、判定前には少なくとも2週間の休薬期間を設ける必要があります6)。

 6) 日本ヘリコバクター学会 「H.pylori感染の診断と治療のガイドライン(2016)」

~注意事項~

◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。

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コメント

    • Fizz-DI
    • 2016年 10月 06日

    【修正】
     『タケキャブ』には「ウレアーゼ活性」への作用が無いことから、当初はピロリ菌検査にも影響しないものと解釈していましたが、実際には偽陰性が起こるケースもあり、改訂になったガイドラインでも休薬が必要とされたため、その旨を修正しています。

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