「漢方薬」に副作用は無い?~間質性肺炎と偽アルドステロン症
記事の内容
回答:副作用はある
漢方薬にも副作用はあります。西洋薬と比べると頻度も少なく、程度も軽い場合がほとんどですが、副作用がゼロというわけではありません。
また、ごく稀に「間質性肺炎」や「偽アルドステロン症」といった重篤な副作用を起こす可能性もあるため、体調に異変を感じた際は医師・薬剤師と相談してください。
漢方薬で起こる、重篤になり得る副作用の例
◆間質性肺炎
・初期症状:息切れ、咳、発熱
・該当漢方:小柴胡湯、柴朴湯、柴苓湯、柴胡桂枝乾姜湯、辛夷清肺湯、清肺湯、大柴胡湯、半夏瀉心湯
◆偽アルドステロン症
・初期症状:血圧の上昇、むくみ、筋肉のけいれん
・該当漢方:「甘草」を含むもの(特に併用によって1日に5g以上の「甘草」を摂取する際は注意)
回答の根拠①:効果の強い”下薬”を含む漢方
例えば、「生姜(しょうが)」を食べ過ぎると身体が火照る可能性もあります。これも立派な副作用です。
自然のもの、天然由来のものであれば安全というわけでもありません。身近なアサガオの種は強力な下剤になりますし、有名な毒物「トリカブト」も植物から摂れます。フグの毒「テトロドトキシン」も自然由来のものですが、致命的な毒です。
このように、生薬にも安全なものや危険なものがあります。そのため、生薬も安全性から上・中・下の3種類に分類されています。”下薬”に分類される生薬は、効果も強い反面、大量に摂取すると副作用を起こすこともある生薬とされています。
◆現在も漢方薬に使われている下薬の例
「大黄(だいおう)」
「附子(ぶし)」
「半夏(はんげ)」
「桔梗(ききょう)」
「黄柏(おうばく)」
「連翹(れんぎょう)」
回答の根拠②:間質性肺炎という副作用
また、生薬の組み合わせによっては大きな副作用を起こす恐れのある処方もあります。
かつて、漢方薬は副作用が少ない、ということが信じられてきました。ところが、1996年に『小柴胡湯』の副作用によって死者が出たことから、漢方薬の安全神話は崩れ、医療従事者にも衝撃が走りました。
このときに起きた重篤な副作用は”間質性肺炎”と呼ばれる特殊な肺炎です。
通常、細菌に感染して肺炎を起こした場合は、空気交換をする「肺胞」の内部に炎症を起こします。ところが、”間質性肺炎”の場合は、この「肺胞」の壁に炎症が起こります。
壁に炎症を起こした「肺胞」は硬くなってしまい、膨らんだり縮んだりという動きができなくなります。このように肺が伸縮できなくなると呼吸ができなくなるため、呼吸困難で死に至ることもあります。
こうした薬剤性の”間質性肺炎”という副作用は、インターフェロン製剤で10万人に182人であるのに対し、『小柴胡湯』では10万人に4人と、1/45 程度の頻度です1)。
1) ツムラ企業レポート 「小柴胡湯事件」
薬理学的にどういった機序で『小柴胡湯』に含まれる生薬が”間質性肺炎”を起こすのか、といった詳細は明らかになっていません。しかし、何かの病気に対して有効な薬理作用を持っている、ということは、裏返せば何かの副作用を持っている、と考えるのが妥当です。
回答の根拠③:偽アルドステロン症という副作用
”偽アルドステロン症”は、副腎ホルモン「アルドステロン」が過剰に分泌されたときと同じ症状を起こすことを言います。
「アルドステロン」は血圧を上げるホルモンのため、高血圧やむくみといった症状が現れます。
また、「アルドステロン」はカリウムを排出するため、低カリウム血症を起こし、脱力や筋肉痛、こむら返りなどを引き起こします。これが進行すると不整脈などにつながる恐れがあります。
この”偽アルドステロン症”は「甘草」に含まれる「グリチルリチン」という成分によって起こることがわかっています。そのため、「甘草」が1日に5g程度を越えないように注意する必要があります。
現在、「甘草」は100種以上の処方に使われている重要な生薬です。しかし、1種類を用法・用量通りに服用していて、「甘草」が1日に5gを越えることはありません。
ただし、人によっては漢方薬を複数服用していたり、市販の漢方薬を一緒に使っている可能性もあるため、一度「甘草」の1日量を確認しておくことをお勧めします。
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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