うつ病に効く漢方薬がある?~補助的な位置づけと、神経症・不眠への適応
回答:あるが、あくまで補助的な薬として使う
漢方薬には、不安や抑うつ・不眠・不安・焦燥感などの症状に効くものがあります。 しかし、いわゆる「うつ病」や「強迫性障害(強迫神経症)」・「パニック障害」など、症状の重いものを漢方薬だけで治すことは非常に難しいため、あくまでSSRIなどの抗うつ薬を主軸に、漢方薬は補助的なものとして使います。
特に、SSRIなどの抗うつ薬を急にやめると副作用が出る恐れもあります。漢方薬が処方された場合でも、抗うつ薬を自己判断で勝手にやめたりしないようにしてください。
回答の根拠:神経症や不眠などに効果のある漢方薬
精神系の症状(例:神経症・不眠など)に適応のある漢方薬には、一例として以下のようなものがあります。ただし、他の漢方薬と同じように、使う人の体質や症状によって使い分ける必要があります。〇実証向け
『柴胡加竜骨牡蠣湯』・・・もともと体力があるが、気力がうまく発散できない状態、ヒステリーに
『黄連解毒湯』・・・・・・・・・のぼせ気味でイライラする、高血圧傾向にある状態に
『柴朴湯』・・・・・・・・・・・・・「小柴胡湯」と「半夏厚朴湯」を併せたもの。気分が塞いで、喉に違和感のある状態に
『大承気湯』・・・・・・・・・・・便秘を伴う人の神経症に
『桃核承気湯』・・・・・・・・・産後の精神不安に
〇中間証向け
『温清飲』・・・・・・・・・・・・・のぼせる体質の人の神経症に
『抑肝散』・・・・・・・・・・・・・症状が”興奮的”、”攻撃的”なもの(※認知症の周辺症状にも)
『抑肝散加陳皮半夏』・・・「抑肝散」よりも体力が低下していて、慢性化している状態に
『加味逍遥散』・・・・・・・・・主に女性の更年期障害による疲れやすさや精神不安に
『香蘇散』・・・・・・・・・・・・・胃腸の弱っている人の、軽いうつ状態に
『半夏厚朴湯』・・・・・・・・・気分が塞いでノイローゼ傾向、喉や胸に異物感・つかえがある状態に
『半夏瀉心湯』・・・・・・・・・吐き気や嘔吐があり、下痢傾向にある状態に
『柴胡清肝湯』・・・・・・・・・かんの強い子ども向け
『女神散』・・・・・・・・・・・・・産前・産後の神経症に
〇虚証向け
『温経湯』・・・・・・・・・・・・・足腰が冷える体質の人の、不眠や神経症に
『桂枝加竜骨牡蠣湯』・・・体力が衰えている人の、神経衰弱やノイローゼに
『帰脾湯』・・・・・・・・・・・・・虚弱体質で血色が悪く、不眠や貧血がある状態に
『加味帰脾湯』・・・・・・・・・虚弱体質で血色が悪く、不眠や貧血がある状態に
『茯苓飲合半夏厚朴湯』・・・胃炎のある神経症に
『柴胡桂枝乾姜湯』・・・・・貧血・冷え性気味で、イライラや不眠がある状態に
『酸棗仁湯』・・・・・・・・・・・心身が疲れ切って眠れない状態に
『苓桂朮甘湯』・・・・・・・・・神経質でノイローゼの傾向がある状態に
薬剤師としてのアドバイス:漢方薬をうまく併用して、薬の量を抑える
あくまでうつ病の治療の中心はSSRIなどの抗うつ薬ですが、こうした薬は量を増やすと副作用も増えてしまいます。うつ病の治療では、この副作用によって治療を続けられなくなってしまうことが多々あります。その結果、薬を飲んだり飲まなかったりといったケースも増え、「副作用ばかりで効かない」という印象が強まってしまっている面があります。
そのため、うつ病の治療では薬の量を増やすのは最終手段として、できるだけ副作用を少なく抑えながら治療を続けることが重要です。
漢方薬は、こうした治療を進める上で、「認知行動療法」と並んで重要な選択肢の一つになっています。
+αの情報:精神安定や鎮静のために使われる生薬の組み合わせ
精神安定や鎮静を目的とする漢方薬は「安神剤」と呼ばれ、不眠や不安・動悸・苛立ちなどの諸症状を改善する目的で使われます。こうした目的の漢方薬では、主に「竜骨(りゅうこつ)」、「牡蠣(ぼれい)」、「酸棗仁(さんそうにん)」、「茯苓(ぶくりょう)」といった生薬を組み合わせた処方が一般的です。
※「竜骨」・「牡蛎」
「竜骨」・・・”魂を安んじる”と表現され、心の”邪”を消し、精神を安定させる生薬です。
「牡蠣」・・・鎮静と疲れやすさを改善する生薬で、免疫賦活作用があります。
→「竜骨」+「牡蠣」の組み合わせは、強力な鎮静効果を持ち、精神を安定させる効果を発揮します。
※「酸棗仁」
「酸棗仁」・・・強壮作用があり、炒れば催眠作用があります。抗ストレス作用、中枢抑制作用があります。
※「茯苓」
「茯苓」・・・精神安定作用と胃腸機能を改善する作用があります。
→「茯苓」+「桂皮」を組み合わせは、頭痛やめまい・不安を改善する効果を発揮します
→「茯苓」+「甘草」を組み合わせは、動悸や息切れ・不安・不眠を改善する効果を発揮します。
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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