狭心症の薬『ニトロペン』、飲み込んでしまった場合はどうすれば良い?~舌下投与と初回通過効果
記事の内容
回答:効果は全く無いので、改めてもう1錠を舌下に置く必要がある
『ニトロペン(一般名:ニトログリセリン)』などの硝酸薬は、心臓の血管を広げる狭心症の治療薬です。
この薬は、舌下に置いて使わなければ効果が全く得られません。そのため、もし飲み込んでしまった場合には、改めてもう1錠を舌下に置いて使用する必要があります。
回答の根拠:飲み込んだ場合、心臓に届く前に肝臓でほぼ全て分解されてしまう
薬は内服する(飲み込む)と消化管から血液中に吸収された後、まず肝臓を通ってから、全身を巡って効果を発揮します。このとき『ニトロペン』は、一度肝臓を通っただけでそのほとんどが分解されてしまうため、全く効果が得られません1)。
しかし、舌下に置いて口腔粘膜から薬を吸収させると、肝臓を通らずに直接心臓へ届きます。そのため、『ニトロペン』は内服する(飲み込む)のではなく、舌下に置いて使う必要があります1,2)。
1) ニトロペン舌下錠 インタビューフォーム
2) Lancet.113(2890):80-1,(1879)
生体を守る、肝臓の「初回通過効果」
口から摂取したものが全身を巡る前にまず肝臓を通るのは、万が一、毒物などを摂取してしまった際に、脳や心臓といった重要な臓器に毒が回ってしまわないよう、最初に解毒・分解して生体を守るためです。
このように、内服した(飲み込んだ)薬が最初に肝臓を通った際に解毒・分解されることを、肝臓の「初回通過効果」と呼びます。
舌下に置くのと同様、皮膚に貼りつける方法(経皮)でも、この「初回通過効果」を回避することができます。同じ硝酸薬のテープ剤『ニトロダーム(一般名:ニトログリセリン)』などが、経皮投与の狭心症薬として使用されています。
薬剤師としてのアドバイス:「効きにくい」ではなく、全くの「無効」であることに注意
『ニトロペン』を飲み込んでしまった場合に注意すべきことは、「効果があまりない」ではなく、「全く効果がない」ということです。そのため、改めて新しい錠剤を使う必要があります。
そもそも『ニトロペン』は、使って数分経っても効果が得られない場合は、追加で使うこともできる薬です。飲み込んでしまった場合に、次の1錠を使うことを躊躇する必要はありません。
なお、『ニトロペン』は長く常備薬として保管していることもあり、包装が破れている、いつの間にか使用期限が切れている、というケースも多く見受けられます。定期的に、薬の使用期限については確認することをお勧めします(※薬が砕けているだけであれば、そのまま舌下に入れて仕えます)。
ポイントのまとめ
1. 『ニトロペン』を飲み込んでしまった場合は、次の1錠を舌下に入れて使う
2. 『ニトロペン』は、内服しても効果は「全く」得られない
3. 常備薬として保管している場合、包装の破損や期限切れに注意
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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