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専門用語解説 漢方薬

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漢方薬や生薬の「上薬」、「中薬」、「下薬」って何?

回答:中国古典による分類

 中国最古の薬学専門書である「神農本草経」では、365種の植物・動物・鉱物を薬として紹介し、その中で人体に対する影響の強さによって、上薬120種、中薬120種、下薬125種に分類しています。

 今でいう、第一類医薬品、第二類医薬品、第三類医薬品、という分類と似たようなものです。

 病気を予防する薬を”上薬”として上のランク、病気を治療する薬を”下薬”として下のランクに位置していることから、生薬は病気を治療するためのものではなく、病気を予防し、虚弱な身体を強くし、元気に生きるためのものという考え方であったことがわかります。

上薬(上品)とは

 ”上薬”は命を養う薬とされ、生薬そのものに強力な作用は持っていないものの、処方全体の作用を調節し、他の薬の副作用を軽減する目的で配合されるものです。

◆現在も漢方薬に使われている上薬の例
「人参(にんじん)」
「雲母(うんも)」・・・花崗岩の雲母のこと
「甘草(かんぞう)」
「大棗(たいそう)」・・・ナツメの果実
「地黄(じおう)」
「五味子(ごみし)」
「麦門冬(ばくもんどう)」
「細辛(さいしん)」
「菖蒲(しょうぶ)」
「沢瀉(たくしゃ)」
「牛膝(ごしつ)」
「黄連(おうれん)」
「防風(ぼうふう)」
「独活(どくかつ)」
「茯苓(ぶくりょう)」・・・サルノコシカケの一種
「辛夷(しんい)」・・・モクレンのつぼみ
「龍骨(りゅうこつ)」・・・古代の象や牛など哺乳類の骨の化石
「牡桂(ぼけい)」・・・桂皮、シナモン
「蒼朮(そうじゅつ)」
「白朮(びゃくじゅつ)」
「牡蠣(ぼれい)」・・・食用される身ではなく、海産二枚貝の貝殻
「ヨクイニン」・・・ハトムギの種

 他にも、今は食品として用いられている「胡麻(ごま)」、「枸杞(くこ)」、「蜜蝋(みつろう)」、果物である「葡萄(ぶどう)」やミカンの皮「橘柚(きつゆう)」、お香として有名な「麝香(じゃこう)」なども”上薬”に収載されています。

中薬(中品)とは

 ”中薬”は体質を改善する薬とされ、大量に摂取すると副作用が出るが、正しく使用すれば穏やかな作用で新陳代謝を上げ、病気を水際で食い止めるものです。また、”上薬”の効果を底上げする作用もあります。

◆現在も漢方薬に使われている中薬の例
「柴胡(さいこ)」
「葛根(かっこん)」・・・クズの根
「当帰(とうき)」
「麻黄(まおう)」
「川芎(せんきゅう)」
「芍薬(しゃくやく)」
「乾姜(かんきょう)」
「石膏(せっこう)」・・・天然の硫酸カルシウム
「百合(ひゃくごう)」
「乾姜(かんきょう)」・・・生姜の根と茎
「黄芩(おうごん)」
「防已(ぼうい)」
「牡丹(ぼたん)」
「呉茱萸(ごしゅゆ)」
「栝楼根(かろこん)」
「厚朴(こうぼく)」
「猪苓(ちょれい)」・・・サルノコシカケの一種
「桃仁(とうにん)」・・・桃の種、「桃核仁(とうかくにん)」とも
「杏仁(きょうにん)」・・・アンズの種、「杏核仁(きょうかくにん)」とも
「枳実(きじつ)」・・・ダイダイやカラタチの未熟果実

 他にも、クチナシの果実「梔子(しし)」や「梅実(ばいじつ)」、近年食材としても注目されているホンダワラ「海藻(かいそう)」、薬になることで有名なアカシカの幼角「鹿茸(ろくじょう)」なども”中薬”に収載されています。

 昔は”中薬”として、子どもの夜泣きには「蚱蝉(さくぜん)」というクマゼミの成虫や、病死した蚕「白殭蚕(びゃくきょうざん)」等も使ったようです。

下薬(下品)とは

 ”下薬”は、実際に病気を治療する効果の中心となるもので、強い効果を持つ反面、摂取する量や期間に注意が必要とされるものです

◆現在も漢方薬に使われている下薬の例
「大黄(だいおう)」
「附子(ぶし)」
「半夏(はんげ)」
「桔梗(ききょう)」
「黄柏(おうばく)」
「連翹(れんぎょう)」

 また、いわゆる”食塩”である「大塩(だいえん)」や、鉄の粉「鉄精(てつせい)」が”下薬”に収載されています。

 他にも、ナメクジ「蛞蝓(かつゆ)」や、ヘビの抜け殻「蛇蛻(じゃぜい)」、ミミズ「白頸蚯蚓(はっけいきゅういん)」、アブ「木虻(もくぼう)」、ヤスデ「馬陸(ばりく)」、ホタル「蛍火(けいか)」、ダンゴムシ「鼠婦(そふ)」、血を吸うチスイビル「水蛭(すいしつ)」、コウモリ「伏翼(ふくよく)」、ゴキブリ「庶虫(しゃちゅう)」など、今は口に入れることが考えられないようなものも”下薬”に収載されています。

 

~注意事項~

◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。

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