『ザイザル』と『ジルテック』、同じアレルギーの薬の違いは?~光学異性体と効果・眠気の副作用
記事の内容
回答:『ザイザル』は、『ジルテック』の半量で同じ効果が得られる改良版
『ザイザル(一般名:レボセチリジン)』と『ジルテック(一般名:セチリジン)』は、どちらもアレルギーの治療に使う、眠気の少ない第二世代の「抗ヒスタミン薬」です。
『ザイザル』は、『ジルテック』の半分の量で同じ効果が得られる改良版で、6ヶ月の子どもから使えるのも特徴です。
眠気の副作用も少ない傾向にありますが、飲んだ後の自動車運転などは『ジルテック』と同様に避ける必要があります。
回答の根拠①:光学異性体の「R体」と「S体」の効き目
『ジルテック』には、光学異性体の「R体」と「S体」が1:1で含まれていますが、この「R体」と「S体」では薬理作用の強さ・長さが大きく異なります。
※光学異性体の違い 1)
①「R体」は、「S体」よりもヒスタミン受容体をブロックする作用が30倍強い
②「R体」は、「S体」よりもヒスタミン受容体をブロックし続ける時間が17倍長い
『ザイザル』は、この薬理作用が強力で長続きする作用の本体「R体」だけを抽出した薬です1)。
1) ザイザル錠 インタビューフォーム
実際、『ザイザル』は5mgで、10mgの『ジルテック』と同じ効果を発揮する2)ため、薬の量は半分で済みます。
2) Allergy.56(1):50-7,(2001) PMID:11167352
眠気の副作用は、同じかやや少ない
『ザイザル』と『ジルテック』では、眠気の感じ方には違いがないとする報告があります3)。
3) Ann Allergy Asthma Immunol.107(6):517-22,(2011) PMID:22123381
しかし「抗ヒスタミン薬」の眠気を考える指標の一つである「脳内ヒスタミン受容体占有率」では、『ザイザル』の方が『ジルテック』より占有率が低い4,5)ため、眠気が減ることを期待して切り替える場合もあります。
※脳内ヒスタミン受容体占有率
ザイザル:8.1%
ジルテック:15%
4) Expert Opin Drug Saf.14(2):199-206,(2015) PMID:25466429
5) Pharmacol Ther.113(1):1-15,(2007) PMID:16890992
回答の根拠②:6ヶ月の子どもから使える『ザイザル』
『ザイザル』と『ジルテック』は、どちらも子ども用のシロップ剤があり、小児用の用量も設定されています。
特に、『ザイザル』は6ヶ月の子どもから使えます1)。これは、「第二世代の抗ヒスタミン薬」の中では最も小さい時から使える薬です。
※第二世代の抗ヒスタミン薬の小児用量
ザイザル(一般名:レボセチリジン):6ヶ月から
ザジテン(一般名:ケトチフェン):6ヶ月から
アレグラ(一般名:フェキソフェナジン):6ヶ月から
ジルテック(一般名:セチリジン):2歳から
アレロック(一般名:オロパタジン):2歳から
クラリチン(一般名:ロラタジン):3歳から
アレジオン(一般名:エピナスチン):3歳から
デザレックス(一般名:デスロラタジン):12歳から
エバステル(一般名:エバスチン):小児用量なし
ビラノア(一般名:ビラスチン):小児用量なし
薬剤師としてのアドバイス:「抗ヒスタミン薬」には色々な種類があるので、気軽に相談を
今の日本では、特別な理由がない限り、眠くなりにくい「第二世代の抗ヒスタミン薬」を使うのが基本です。
第二世代の中で、『ザイザル』や『ジルテック』は比較的シャープな効き目を持つ薬ですが、その反面、『アレグラ(一般名:フェキソフェナジン)』や『クラリチン(一般名:ロラタジン)』といった薬よりは眠くなりやすい傾向があります。
しかし、こうした効果・副作用の感じ方には個人差が大きく、どの薬が自分に合っているかは、実際に飲んでみないとわからないという面があります。
「第二世代の抗ヒスタミン薬」には色々な種類の薬があるため、その中には効き目が十分で眠気も感じないといった自分に合ったものがあるはずです。効き目が不十分だと感じたり、あるいは眠気や口の渇きといった副作用を感じたりした場合には、気軽に医師・薬剤師に相談して欲しいと思います。
ポイントのまとめ
1. 『ザイザル』は、『ジルテック』の効果の本体である光学異性体「R体」を抽出した薬
2. 『ザイザル』は、6ヶ月の子どもから使えるほか、眠気もやや少ない傾向にある
3. 「抗ヒスタミン薬」にも色々あるので、自分にあった薬を探す
添付文書、インタビューフォーム記載内容の比較
◆適応症
ザイザル:アレルギー性鼻炎、蕁麻疹、湿疹・皮膚炎、痒疹、皮膚そう痒症
ジルテック:アレルギー性鼻炎、蕁麻疹、湿疹・皮膚炎、痒疹、皮膚そう痒症
◆通常の成人1日量
ザイザル:5mg
ジルテック:10mg
◆子どもへの使用
ザイザル:6ヶ月から(シロップ剤)
ジルテック:2歳から(ドライシロップ剤)
◆眠気の頻度(臨床試験時)
ザイザル:5.2%
ジルテック:6.0%
◆自動車運転などへの注意喚起
ザイザル:従事させない
ジルテック:従事させない
◆オーストラリア基準(妊娠中の安全性)
ザイザル:B2
ジルテック:B2
◆剤型の種類
ザイザル:錠剤(5mg)、シロップ
ジルテック:錠剤(5mg、10mg)、ドライシロップ
◆製造販売元
ジルテック:グラクソ・スミスクライン
ザイザル:グラクソ・スミスクライン
+αの情報:光学異性体の薬
『ザイザル』・『ジルテック』と同じように、光学異性体の関係にある薬が、たくさん登場しています。
それぞれ「R体」と「S体」とで薬理作用が違ったり、代謝の方法が違ったりするため、薬として有用な方だけを抽出することで、これまでにない特徴を持つ薬になっています。
※光学異性体の薬の例
『クラビット(一般名:レボフロキサシン)』・・・『タリビッド(一般名:オフロキサシン)』の「S体」
『ネキシウム(一般名:エソメプラゾール)』・・・『オメプラール(一般名:オメプラゾール)』の「S体」
『ルネスタ(一般名:エスゾピクロン)』・・・『アモバン(一般名:ゾピクロン)』の「S体」
『レクサプロ(一般名:エスシタロプラム)』・・・「シタロプラム(※日本未承認)」の「S体」
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
クラビットはタリビッドのS体ではないですか?
ご指摘ありがとうございます、「S体」が正しいですね。誤植でしたので修正いたしました。