骨粗鬆症の薬、起きてすぐ飲んで、その後寝転んだり物を食べたらダメなのは何故?~ビスホスホネート製剤の用法の理由
回答:効果を高め、副作用を防ぐため
骨粗鬆症の薬の中でも『ベネット(一般名:リセドロン酸Na)』や『ボナロン(一般名:アレンドロン酸Na)』などの「ビスホスホネート系」の薬は、飲み方が複雑ですが、すべて理由があります。
正しい飲み方をすることで、治療効果を高め、副作用を防ぐことができます。
①起床して最初の飲食前に服用する
→食後に服用すると、薬の吸収が大きく低下し、治療効果に影響します。
②多めの水(約180mL)で服用する
→喉や食道に薬がひっかかると、その場所で炎症や潰瘍を起こす恐れがあります。
③服用した後30分は水以外の飲食を控える
→薬を服用して30分以内に飲食すると、薬の吸収が大きく低下し、治療効果に影響します。
④服用した後30分は横たわらない
→横になると薬の成分が逆流し、食道が薬に曝されることで炎症や潰瘍を起こす恐れがあります。
回答の根拠①:食事による吸収の大きな低下
『ベネット』は、食事から3時間後の服用であっても、吸収が90%以上低下してしまいます1)。
これは、多少吸収が悪くなる、というものではなく、治療効果が得られなくなってしまう恐れもあるほどの大きな低下です。
Cmax AUC
起床時 2.85 10.42
食前30分 2.11 3.83
食後30分 0.19 0.67
食後3時間 0.38 1.52
1) ベネット錠 添付文書
※Cmax・・・最高血中濃度(血液中の薬の濃度が最も高くなった時の濃度)
※AUC・・・・血中濃度曲線下面積(生体で薬がどのくらい利用されたのかの指標、血中濃度曲線の積分値)
また、「カルシウム」や「マグネシウム」を豊富に含むミネラルウォーターで薬を飲む、一緒にサプリメントを摂る、他の薬と一緒に飲む、といったことも、「ビスホスホネート系」の薬の吸収に影響します。
服用にはできるだけ普通の水を使い、別の薬やサプリメントを飲む場合は30分以上の間隔をあけて飲むなどの対応が必要です。
回答の根拠②:食道への影響
「ビスホスホネート系」の薬が食道などの粘膜に長く付着していると、その場所が炎症を起こし、食道炎や食道潰瘍を起こす恐れがあります。
薬を水無しで飲んだりすると、喉にひっかかってしまう恐れがあります。
また、薬を飲んだ後に身体を横にすると、薬の成分が胃から逆流してくる恐れがあります。
どちらの場合も、喉や食道が薬の成分と長く触れている原因となり、食道炎・食道潰瘍を起こす原因となります。
そのため、喉にひっかからないよう、多めの水でしっかりと飲みこむ必要があり、また薬を飲んだ後も逆流してこないよう身体を起こしている必要があります。
吐き気によって薬を戻してしまう場合や、逆流性食道炎を患っている場合なども特別な対応が必要です。
薬剤師としてのアドバイス:飲み忘れた場合の対応
もし薬を飲み忘れて食事をとってしまった場合などは、翌日の朝起きたときに服用してください。食後では非常に吸収も悪くなりますので避けてください。
ただし、月に1回の薬を服用している場合は最低でも7日以上は間隔をあける必要があります。次の服用予定日が1週間以内にある場合は、一度病院や薬局に相談し、飲み方を変更するための相談をしてください。
しかし、ビスホストネート製剤は服薬実行率が80%を越えて初めて治療効果が現れる2)、とする文献もあり、あまりに飲み忘れが多い場合には、注射製剤などに切り替える必要もあります。
2) Mayo Clin Proc.81(8):1013-22,(2006) PMID:16901023
人によっては、月1回や週1回よりも、毎日飲む薬の方が飲み忘れが少なくなることもあります。服用間隔が長くなれば必ず飲み忘れが少なくなる、と思いこまずに、その人にとって最適な用法を選ぶ必要があります。
※ビスホスホネート系の薬
『アクトネル、ベネット(一般名:リセドロン酸)』
『フォサマック、ボナロン(一般名:アレンドロン酸)』
『ボノテオ、リカルボン(一般名:ミノドロン酸)』
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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