ただの水を「毒」と思わせる技法~簡単に騙されないために
世の中には、怪しげな健康食品やサプリメントを売っている会社やWebサイトがたくさん存在しています。「天然のものが良くて、人工のものは悪い」というような、何の根拠もない間違ったことを言っているようなところまであります。
特に、インターネット上では真偽さまざまな情報が入り乱れており、何が正しい情報なのか判断することが難しい状態にあります。
納得した上での選択であれば問題ありませんが、騙されて大事なお金や健康・時間を失ってしまうのは避けたいところです。
今回は、そんな人を騙すウソ情報の一例として、普通の「水」を、さも危険な”毒”であると思わせる方法を紹介します。
”水”を毒だと主張する方法~DHMOの逸話
1997年、ネイサン・ゾナー氏は、極めて危険な化学物質「一酸化二水素(DHMO)」の有害性を指摘し、この物質の使用規制を求めて署名活動を始めました。
DHMOの危険性とは、
①酸性雨の主な成分であり、温室効果によって地球温暖化の要因になる
②末期がんの患者の腫瘍細胞から、必ず検出される
③多くの金属を腐食、劣化させる
④触れることで火傷の症状を起こすことがあり、特に固体状態のDHMOでは皮膚に損傷を起こす
⑤高レベルのDHMOに曝されることで植物の成長が阻害される
DHMOにはこのような危険性があるにも関わらず、世界中の工場や発電所では毎日膨大な量が使用されている。また、川や海にもそのまま排出され、既に世界中の海や川、湖、母乳や南極の氷に至るまで高濃度で検出されるほど、汚染が進んでいる。
しかしながら、現在DHMOを規制する法律はどこにもない。更に恐ろしいことに、DHMOは無色透明、無味無臭で身近にあるため、知らないうちに汚染が進んでしまう。
・・・こういったものです。上記の文章を読むと、なんだか「DHMO」というものがとても危険なもののように思えてきます。実際、9割近くの人が彼の主張に共感し、署名をしたと言われています。
この話を聞いたあとに、「わが社の製品は、DHMOを一切使っていない安全・安心な化粧品です」と言われたら、つい買ってしまうかもしれません。
ところが、「DHMO(一酸化二水素)」というものは、化学式で書けば「H2O」、つまりただの水です。
①~⑤の項目にも、その後の文章にも、全く”嘘”は書かれていません。すべて水に関する事実です。
ネイサン・ゾナー氏は、「How gullible are we?」・・・我々はどうやって騙されるか?というタイトルでこの実験を行い、話題になりました。
ただの水でも危険物質に仕立て上げられる
ただの水であっても、上記のようにネガティブな部分だけを極端に強調すれば、いかにも”危険な化学物質”であるかのように仕立て上げることが可能です。
誰もがよく知る「水」であれば、種明かしが理解しやすいかもしれません。しかし、これが薬やワクチンのようなものであったらどうでしょうか。危険物質ではない、という専門家の意見にきちんと耳を傾けるでしょうか。耳を傾けても、どこかに漠然とした不安が残ってしまうのではないでしょうか。
怪しげな健康食品や情報商材を販売するところでは、このように「危険でないものを、わざわざ危険なものに仕立て上げて、不安を煽る」という方法がよくとられています。その不安につけこんで、本来は不要な商品を売りつけようとするのです。
”水は危険”だと思い込まされて不便な生活を強いられる、水を使っていないという高額なヘンテコ商品を買わされる・・・という滑稽なことにならないよう、情報は冷静に収集する、わからないことは複数の専門家の意見を参考にする、といった習慣を身につけることが大切です。
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