ステロイド外用剤の『リンデロン』、DP・V・VG・Aの違いは?~4種の強さと使い分け
記事の内容
回答:それぞれステロイドとしての強さが異なる、別の薬
ステロイド外用剤の『リンデロン』には、DP・V・VG・Aの4種類があります。
同じ『リンデロン』でも、このアルファベットが違えば薬の成分・ステロイドとしての強さも異なる別の薬です。
皮膚の厚さは場所によって大きく異なるため、同じ薬を塗っても吸収される量が違います。そのため、薬を塗る場所によって、『リンデロン』も厳密に使い分ける必要があります。
塗り薬は、家に残っている薬を使ったり、家族・兄弟間で使いまわしたりといった、間違った使い方が特に起こりやすい薬ですが、医師・薬剤師に指示された使い方以外はしないようにしてください。
回答の根拠①:4種類の『リンデロン』の成分と強さ
そもそも、ステロイド外用剤には強さのランクが5段階(Ⅰ群~Ⅴ群)あり、塗る場所によって明確に使い分ける必要があります1)。『リンデロン』も4種がそれぞれ別の強さにランク分けされています。
※ステロイド外用剤の強さのランク
Ⅰ群:最も強い(Strongest)
Ⅱ群:非常に強い(Very Strong)
Ⅲ群:強い(Strong)
Ⅳ群:普通(Medium)
Ⅴ群:弱い(Weak)
1) 日本皮膚科学会 「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン (2016)」
1.『リンデロンDP』(Ⅱ群):ベタメタゾンジプロピオン酸エステル
5ランクあるステロイド外用剤のうち、2番目に強いⅡ群に該当します。
『アンテベート』や『マイザー』等と同じ強さのもので、主に手足や体幹といった部分に使用し、顔には使いません。
2.『リンデロンV』(Ⅲ群):ベタメタゾン吉草酸エステル
『リンデロンDP』よりも1ランク下の3番目、Ⅲ群に該当するステロイド外用剤です。
一般的に、体幹のうちお腹や首など皮膚の薄い部分にも使用できる強さです。
3.『リンデロンVG』(Ⅲ群+抗生物質):ベタメタゾン吉草酸エステル + ゲンタマイシン
『リンデロンV』の成分に、抗生物質である「ゲンタマイシン」を配合したものです。
化膿している際などには、”ステロイドで炎症止め + 抗生物質で化膿止め”という効果が期待できます。
4.『リンデロンA』(Ⅴ群相当+抗生物質):ベタメタゾンリン酸エステル + フラジオマイシン
一般的なステロイド外用剤ではなく、眼や耳といった場所に使用できる特別なステロイドです。
「フラジオマイシン」という抗生物質も配合されているため、眼や耳に細菌が感染し、炎症を起こしているような場合に使用します。
回答の根拠②:ステロイド外用剤は、強さによって使い分ける
人間の皮膚は、場所によって厚さが大きく異なるため、同じ薬を塗っても吸収される量が変わります。そのため、薬を塗る場所によって、ステロイド外用剤は厳密に使い分ける必要があります。
※薬の吸収率の比 2)
2) J Invest Dermatol.48(2):181-3,(1967) PMID:6020682
例えば顔と足のうらでは、薬の吸収が100倍近く異なるため、同じ薬を使うわけにはいきません。
皮膚が厚い手足に、弱いステロイド外用剤を使っても、あまり効果が期待できません。
皮膚が薄い顔に、強いステロイド外用剤を使うと、副作用で皮膚が薄くなってしまう恐れがあります。
「たかが塗り薬」と油断することなく医師・薬剤師の指示を守り、自己判断で勝手な使い方をしたり、家族・兄弟間で薬を使いまわしたりしないようにしてください。
薬剤師としてのアドバイス:虫刺されに『リンデロン』を使う場合は、特に注意
『リンデロン』は、虫刺されに処方されることがあります。しかし、よく効くからといって「リンデロン=虫刺されの薬」と認識することは非常に危険です。
足の虫刺されに処方された強力な『リンデロン』を、顔の虫刺されに使う、といった間違った使い方をしてしまう恐れがあるからです。
虫刺されの薬をもらう際には、どの場所に使える薬なのか、医師・薬剤師に予め確認しておくことをお勧めします。
特に、薬を1~2回塗っても治らない場合には、単なる虫刺されではなく、感染症など別の可能性を考える必要があります。また、虫刺されであっても動悸や冷や汗などのショック症状がある場合には、すぐに病院を受診するようにしてください。
ポイントのまとめ
1. ステロイド外用剤の『リンデロン』には、DP・V・VG・Aの4種類があり、薬の強さも成分も全く違う
2. ステロイド外用剤は、塗る場所によって厳密に使い分ける必要がある
3. 「たかが塗り薬」という油断、自己判断の使用や家族・兄弟間の使いまわしは危険
添付文書、インタビューフォーム記載内容の比較
◆含まれる有効成分
DP:ベタメタゾンジプロピオン酸エステル
V :ベタメタゾン吉草酸エステル
VG:ベタメタゾン吉草酸エステル + ゲンタマイシン
A :ベタメタゾンリン酸エステル + フラジオマイシン
◆ステロイドの強さのランク
DP:Ⅱ群
V :Ⅲ群
VG:Ⅲ群(+抗生物質)
A :V群相当(+抗生物質)
◆販売されている剤型
DP:軟膏、クリーム、ゾル
V :軟膏、クリーム、ローション
VG:軟膏、クリーム、ローション
A :眼・耳科用軟膏、点眼・点鼻用液
◆製造販売元
全て、塩野義製薬
+αの情報①:保湿剤との重ね塗りが効果的
『リンデロン』などのステロイド外用剤は、『ヒルドイド(一般名:ヘパリン類似物質)』などの「保湿剤」と一緒に使うことで、より高い効果を得ることができます3)。
重ね塗りをする場合、通常はまず保湿剤を広く全体に塗布してから、症状の酷い部分にステロイド外用剤をピンポイントで重ねる方法で使います。これは、ステロイド外用剤を不必要に塗り広げてしまわないためです。
しかし、塗布順序にとって効果に違いはない4)とされているため、塗布範囲が同じであればどちらを先に塗っても問題ありません。
3) Pediatr Dermatol.25(6):606-12,(2008) PMID:19067864
4) 西日皮膚.73(3):248-52,(2011)
+αの情報②:水虫に「ステロイド」~足の痒みは原因の特定を
「ステロイド」は過剰な免疫反応を抑える薬です。水虫などの感染症に使うと、菌を退治する免疫が弱まり逆効果になるため、基本的には使いません(※炎症が酷い場合を除く)。
原因がはっきりしない足の痒みは、安易に「ステロイド」を使う前に、皮膚科を受診することをお勧めします。
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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