『マグミット』と『プルゼニド』、同じ便秘薬の違いは?~作用と刺激の強さ、耐性、相互作用と効き始めの時間
記事の内容
回答:便を柔らかくする『マグミット』、腸を刺激して動かす『プルゼニド』
『マグミット(一般名:酸化マグネシウム)』と『プルゼニド(一般名:センノシド)』は、どちらもお通じを良くする便秘薬です。
『マグミット』は、腸に水分を集めて便を柔らかくする薬です。刺激が少なく、「耐性」もできにくいのが特徴です。
『プルゼニド』は、腸を刺激して動きを活発にさせる薬です。他の薬と相互作用を起こさず、効き目が現れる時間を予測しやすいのが特徴です。
そのため、便秘の原因や、併用薬・生活スタイルに合わせて使い分けるのが一般的です。また単独では効果が不十分な場合には、『マグミット』と『プルゼニド』を併用することもあります。
回答の根拠①:便秘の原因による使い分け
『マグミット』は、腸内の浸透圧を高めることで水分を集め、便を柔らかくする作用があります1)。
『プルゼニド』は、腸に刺激を与えて腸の蠕動運動を活発にさせる作用があります2)。
1) マグミット錠 添付文書
2) プルゼニド錠 添付文書
そのため、便が硬いことが原因で便秘になっている場合は『マグミット』、腸の動きが弱っていることが原因で便秘になっている場合は『プルゼニド』が、それぞれ適した薬と言えます。
回答の根拠②:副作用や「耐性」の問題が少ない『マグミット』
『プルゼニド』の作用で腸が動いた際、人によってはこの動きで「腹痛」を感じることがあります。実際、『プルゼニド』は副作用として「腹痛」を起こしやすい薬です2)。
また『プルゼニド』は、あまり長期に渡って使い続けていると「耐性」ができて薬が効きにくくなることがあります。その結果、薬の量が増えたり、薬に頼りがちになってしまったりする恐れがあるため、長期の連用は控える必要があります2)。
『マグミット』では、こうした腹痛の副作用や「耐性」はほとんど問題になりません。そのため、一般的に『マグミット』の方がやさしい便秘薬として使われています。
※副作用としての腹痛の頻度 1,2)
『マグミット』・・・記載なし
『プルゼニド』・・・11.9%
※耐性に対する注意喚起 1,2)
『マグミット』・・・記載なし
『プルゼニド』・・・長期の連用を避けるよう記載
回答の根拠③:相互作用を起こしにくく、効き始めを予測しやすい『プルゼニド』
『マグミット』に含まれる「マグネシウム」は、他の薬の吸収に影響を与えることがあります1)。そのため、こうした相互作用を起こす恐れのある薬は同じタイミングで服用せず、2~4時間程度の間隔をあけるなどの対応が必要です。
※「マグネシウム」で吸収が低下する薬の例
『ミノマイシン(一般名:ミノサイクリン)』などのテトラサイクリン系抗菌剤
『クラビット(一般名:レボフロキサシン)』などのニューキノロン系抗菌剤
『ボノテオ(一般名:ミノドロン)』などのビスホスホネート製剤(骨粗鬆症の薬)
『プルゼニド』では、相互作用に特に注意が必要な薬はありません2)。
薬が効き始めるまでの時間
『マグミット』が効き始めるまでの時間は、早い人で1時間、遅い人で7時間程度と、大きくばらつきがあります。これは効き目に個人差があることの他にも、『マグミット』には200mg・250mg・330mg・500mgの4種類があり、飲む量によっても効果の現れ方は大きく変わるからです3)。
3) マグミット錠 インタビューフォーム
一方『プルゼニド』は、用量に関わらず8~10時間で効き始めることがわかっています2)。
このことから『プルゼニド』は、寝る前に飲んでおけば翌朝のお通じに効くなど、効き始めを逆算した飲み方ができるため、頓服としても使いやすい薬と言えます。
薬剤師としてのアドバイス:原因のわからない急な「便秘」には要注意
原因のわからない急な「便秘」は、腸が痙攣を起こしていること、腫瘍などで腸閉塞が起こっていることなどが原因として考えられます。こうした場合に便秘薬を使うと、症状が悪化する恐れがあります。
便秘薬は症状に合わせて使うため、家にも薬が残っているというケースは多々ありますが、どんな便秘にでも効くわけではありません。いつもと違う症状の時に使ったり、家族や知人の薬を使ったりしないようにしてください。
ポイントのまとめ
1. 『マグミット』は水分を集めて便を柔らかくする、『プルゼニド』は腸の動きを活発にさせる
2. 『マグミット』は、副作用や耐性の心配が少ない
3. 『プルゼニド』は、相互作用を起こす薬がなく、効き始めの時間を予測しやすい
添付文書・インタビューフォーム記載項目の比較
◆便秘薬としての薬効分類
マグミット:機械的下剤
プルゼニド:刺激性下剤
◆適応症
マグミット:便秘症、胃・十二指腸潰瘍や胃炎(急・慢性胃炎、薬剤性胃炎を含む)、上部消化管機能異常(神経性食思不振、いわゆる胃下垂症、胃酸過多症を含む)、尿路蓚酸カルシウム結石の予防
プルゼニド:便秘症
◆副作用として腹痛が起こる頻度
マグミット:記載なし
プルゼニド:11.9%
◆連用による「耐性」のリスク
マグミット:記載なし
プルゼニド:あり(薬に頼りがちになるため、長期連用は避ける)
◆併用注意に挙げられている薬の数
マグミット:20種以上
プルゼニド:なし
◆妊婦・授乳婦への使用
マグミット:可
プルゼニド:原則禁忌 (※オーストラリア基準【A】)
◆効果が現れるまでの時間
マグミット:2~7時間程度
プルゼニド:8~10時間
◆剤型の種類
マグミット:錠(200mg、250mg、330mg、500mg)、細粒
プルゼニド:錠(12mg)
◆製造販売元
マグミット:協和化学
プルゼニド:田辺三菱
+αの情報①:『プルゼニド』は妊娠中に使えるのか
『プルゼニド』は、子宮収縮に影響する可能性もあり、安易に使うべきではないとする見解があります4)。
しかし、便秘体質の人は、妊娠初期には「つわり」が酷くなる、妊娠後期には腹部の圧迫感がより強くなるなど、通常よりも体調不良が強く現れる傾向があります。胎児への影響は特になく、「オーストラリア基準」でも最もリスクが低い【A】に評価されています。
4) プルゼニド錠 インタビューフォーム
このことから、『プルゼニド』を使った方が良いと判断された場合には、妊娠中でも使うことがあります。
+αの情報②:新しい便秘薬『アミティーザ』
2012年末に、『マグミット』とも『プルゼニド』とも異なる、新しい機序の便秘薬『アミティーザ(一般名:ルビプロストン)』が発売されています。
『アミティーザ』には腸の働きを整える作用があり、『マグミット』より高い効果が期待できるほか、『プルゼニド』のような腹痛や耐性が少ないのが特徴です。
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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