「ルテイン」って眼や心臓に良いの?
記事の内容
回答:眼や心臓に良いと期待されている栄養素だが、食事で十分に摂取できる
食事から豊富な「ルテイン」を摂取した場合、白内障や加齢黄斑変性などのリスクを減らすことが知られており、また食事として摂取する量であれば過量摂取の危険もなく、妊婦・授乳婦についても特別な危険がない栄養素であると言われています。
特に眼に関しては「機能性表示食品」として受理されています。
しかし、サプリメントとして摂取した場合には、食事とは桁の異なる多量を摂取することも可能になるため、そういった際の安全性や有効性についてはまだ明確にされていません。
「ルテイン」は、緑黄色野菜や果実、卵黄などに広く含まれる栄養素で、自然界に豊富に存在しています。バランスの良い食生活を心がけている限り、特別に不足するものでもありません。
回答の根拠①:眼への効果は期待されているが、はっきりとはわからない
現在はまだ、医薬品として効果・効能を謳えるほど、明確な安全性と有効性の根拠が揃っていません。そのため、「ルテインは〇〇に効く」という表現を使うと薬事法違反になります。
「ルテイン」の摂取によって、加齢黄斑変性のリスクを減らすことができるとする報告1)と、「ルテイン」単体の摂取ではこうしたリスクを減らすことはできないとする報告2)があります。
1) Br J Nutr.107(3):350-9,(2012) PMID:21899805
2) BMJ.335(7623):775,(2007) PMID:17923720
また、2015年5月に発表された論文で、1日10mgのルテインを摂取するのが、初期の加齢黄斑変性の治療には最も妥当である、と述べているものもあります3)。これから安全性と有効性の根拠が確立していくことが期待されています。
3) Biomed Res Int.2015;2015:564738 PMID:25815324
つまり、まだ議論の余地が多く残っており、有効性についてはまだまだはっきりとわからない部分が多い、と言えます。
回答の根拠②:動脈硬化や酸化ストレス、コレステロールについては、やや懐疑的
「ルテイン」の販売店の中には、糖尿病や高血圧、動脈硬化などにも効果が期待できるとしている販売店もありますが、
ルテインの摂取で糖尿病発症のリスクには影響しないこと4)
血液中の酸化ストレスを軽減しないこと5)
コレステロールを下げないこと5,6)
・・・など、きちんと統計処理を行った文献には否定的な意見が多く存在します。
4) Diabetes Care.27(2):362-6,(2004) PMID:14747214
5) Atherosclerosis.227(2):380-5,(2013) PMID:23398944
6) J Atheroscler Thromb.20(2):170-7,(2013) PMID:23154578
一方、乾燥肌の患者の皮膚で皮膚の水分量が増えたとする文献もありますが、この試験では「ルテイン」の他にもアスコルビン酸(ビタミンC)なども同時に投与されており、皮膚に関してはアスコルビン酸の影響も大きいという点も考慮すべきです7)。
7) Int J Cosmet Sci.24(6):331-9,(2002) PMID:18494887
薬剤師としてのアドバイス:栄養素としては必要なものです
「ルテイン」は、緑黄色野菜や卵黄にも豊富に含まれており、バランスの良い食事をしている限り、特に不足するといったことはありません。最も手軽な健康法は、きちんと緑黄色野菜をバランスよく摂ることで、これによって「ルテイン」だけでなく他の栄養素もしっかりと補えます。
努めて眼によい食生活を送ろうとする際には、「ルテイン」が豊富なブロッコリーやケール等を積極的に摂取することも良いでしょう。
しかし、ブロッコリーやケールはビタミンKも豊富なため、『ワーファリン(一般名:ワルファリン)』を服用中の方は摂取できません。薬の効果が弱まり、血が固まって血管が詰まってしまう恐れがあります。
サプリメントとして摂取することも選択肢の一つですが、薬との相互作用の研究もまだ進んでいないため、何かの薬を服用している際は必ず主治医と相談するようにしてください。
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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