「有意差」って何?~偶然の産物、誤差ではないことの保証
記事の内容
回答:意味の有る差、ということ
「有意差」とは、偶然や誤差で生じた差ではない、「意味の有る差」のことを意味します。
見た目のグラフや数字がどれほど大きく違っていようと、「有意差」がついていなければ、それは統計学的には差がないことになります。
平たく言うと、「有意差」のつかなかった差は、単なる偶然や誤差で生じた意味のない差だと解釈されます。
詳しい回答①:誰もが納得する、一定の判断基準が必要
薬を飲んで血圧が下がった場合、それは「確実に薬の効果」によるものなのか、あるいは単なる「偶然」や「誤差」でしかないのか、それを判断する必要があります。
しかし、この判断は主観的に行えるものではありません。そのため、統計を使った一定の判断基準を利用します。
誰の目にも明らかな偶然
例えば、サイコロを3回振ったとします。このとき、3回とも「6」の目が出たとします。
この結果を見て、「このサイコロは、「6」の目を出す不思議なサイコロである!」と結論付けることは、妥当でしょうか。
恐らく、ほとんどの人が「いや、単なる偶然だろう」と言うはずです。次にサイコロを振ったら違う数字が出るかもしれない、という可能性があるからです。
誰の目にも明らかな必然
では、サイコロを100億回振ったとします。このとき、「6」の目が99億9999万9998回出て、あとは「1」と「3」の目が1回ずつ出たとします。
この結果を見て、「このサイコロは、「6」の目を出す不思議なサイコロである!」と結論付けることは、妥当でしょうか。
恐らく、ほとんどの人が頷くはずです。次からサイコロを振っても、ほとんど確実に「6」が出続けるからです。
偶然か必然か、微妙なもの
それでは、サイコロを100回振ったとします。このとき、「6」の目が25回出たとします。
サイコロの目は6種類なので、100÷6=16.66で16~17回ほど「6」の目が出るのが普通です。
25回も「6」の目を出すということは、不思議なサイコロと言っても良いのでしょうか。あるいは、今回たまたま「6」の目が出やすかっただけで、明日同じことを試したら違う結果になるのでしょうか。
どちらとも言い切れず、非常に微妙なところと言えます。
微妙なので、皆が納得できる何か一定の判断基準によって、これが偶然なのか、はたまた必然なのかを判断する必要があります。
このときの判断基準となるのが「有意差」です。
100回サイコロを振ったら「6」の目が25回出るサイコロがある。これは他の普通のサイコロと比べて、明らかに「6」の出る確率が高いものなのか、あるいは偶然の結果、誤差の範囲でしかないのか。
これを統計学的な計算によって判定します。この判定によって「必然の結果」で生じたものだ、とされた場合、「有意差」あり、となります。
その結果、このサイコロは「6」を出しやすい不思議なサイコロである、と初めて言えるようになります。
詳しい回答②:医学や薬学は、再現性のある科学である
医学や薬学は、おまじないや宗教ではありません。
その治療を行えば必ず効果がある(再現性がある)、と科学的に証明されていなければなりません。そのため、常にこの「有意差」の有無が必要になります。
民間療法や健康食品が効能・効果をうたってはいけないのは、この再現性が証明されていないからです。つまり、ある人には効果があったとしても、それは偶然や他の要因によって得られた効果である可能性があり、他の人にも効果があるとは言えないのです。
グラフの差や数字の大小が問題ではない
「有意差」があるかどうかと、グラフの見た目や数字の大小の差は関係ありません。統計学的な計算の結果、「有意差」があると判定されるかどうか、が問題です。
新薬Aは、血圧を5mmHgだけ低下させ、これが「有意差」であると証明された。
新薬Bは、血圧を見かけ上40mmHgも低下させたが、その差は「有意差」であると証明されなかった。
・・・というような結果が出たとき、薬の効果が認められるのはAだけです。Bの結果は偶然や誤差によるものなので、Bには効き目が無い、と判断されます。
グラフの見た目や、数字の大小に惑わされないよう、きちんとデータを読み取る習慣をつける必要があります。
p<0.05とは
有意差は、主に統計的な処理をした結果の「p値」によって設定します。
ただし、p<0.05でなければ「有意差」と言えないというわけではなく、医学・薬学の慣習としてp<0.05が用いられているだけのものです。
さらに精度の高い統計処理を行う場合にはp<0.001など、別の数字を使うこともあります。
わかりやすいです