危ない頭痛の見分け方は?~色々な頭痛をトリアージする
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回答:頭痛の原因は様々、長く続くときは病院へ
頭痛は様々な要因によって起こります。緊急で病院を受診しなければならない危険なものから、病院で薬をもらう必要があるもの、市販薬で対応できるもの、対応も様々です。
ひとことに”頭痛”と言ってもその原因は様々なので、家族や友人が”頭痛”だからといって、自分の薬を分けたりすることは、絶対にやめてください。間違った対応をすると、効果がないばかりか、致命的な病気を見落としてしまう恐れもあります。
じわじわと、数週間~数ヶ月かけて痛みが強まってきた場合
頭をケガしている可能性があります。軽いものであれば打撲や切り傷が残っている際は、『ロキソニン』等の痛み止めで対応が可能です。
しかし、重傷であれば骨折や脳に出血した後の血の塊(血腫)ができている場合があります。一度、早めに病院で検査をする必要があります。
多量のアルコールを飲んでいる人や、高齢者、『ワーファリン(一般名:ワルファリン)』等の血液をサラサラにする薬を飲んでいる人に多いケースです。
頭を強く打ったという自覚が無いことも多いですが、頭を打ってから3週間以上経過しても頭痛が治まらない場合は病院を受診することをお勧めします。
突然、3分もかからない短期間のうちに痛みがピークに達した場合
「くも膜下出血」や「脳出血」といった危険な頭痛である可能性があります。すぐに病院を受診する必要があります。
「くも膜下出血」は、突然”バッドで殴られたような”激しい痛みが現れるのが特徴です。痛みが軽い場合でも、何の前触れもなく急に(1~3分ほどで)痛みが出てきたときや、首が硬直して動かなくなる、頭を左右に振ると痛みが増すといった症状がある場合には、「くも膜下出血」を疑う必要があります。
「脳出血」では急な頭痛と併せて、言葉が出てこない、片方の手や舌がマヒして動かない、といった症状が一緒に現れます。
頭痛と一緒に、発熱もしている場合
いわゆる「風邪」か、「インフルエンザ」といった感染症の可能性があります。早めに内科を受診し、抗生物質や抗ウイルス薬による治療を受けましょう。
特に小さな子どもが「インフルエンザ」に感染した際、頭痛があっても『ロキソニン』等の痛み止めを使うのは避けるべきです。これは、痛み止めが「インフルエンザ脳症」を誘発する恐れがあるためです。「インフルエンザ」の際は、家に残っているからといって安易に解熱鎮痛薬を使わないようにしましょう。
子どもの「インフルエンザ」の高熱や頭痛には、インフルエンザ脳症を起こさない『カロナール(一般名:アセトアミノフェン)』を使います1)。
1) 日本小児神経学会 「インフルエンザ脳症はどうしたら予防できますか?」
頭痛と一緒に発熱もしている上に、”首を動かすと痛む”場合
髄膜炎を起こしている恐れがあります。一見すると、風邪と見分けがつかないことが多いですが、小児で発熱と頭痛があれば必ず疑う必要があります。
首を上下左右に振った時に痛みが強くなる特徴があります。痛みを主張できない小さな子どもの場合でも、布団から起こす際に強く痛がるといったケースが見られます。
細菌性や結核性の髄膜炎は特に症状が重く、乳幼児がかかる感染症の中では重篤なものの一つとされています。発症すると約10~30%の患者が亡くなり、治癒しても約25%の患者に難聴やてんかん、知能障害といった後遺症が残ることが知られています2)。
2) 日本神経感染症学会「細菌性髄膜炎診療ガイドライン」
細菌性髄膜炎は、「ヒブワクチン」を接種することで予防が可能です。
ずっと持続する頭痛があり、日に日に悪化している場合
頭痛が少しずつ悪化していく場合、何らかの病気が進行している恐れがあります。すぐに病院を受診し、精密な検査を受ける必要があります。
「脳腫瘍」の場合、早朝に頭痛が激しくなるのが特徴です。また、腫瘍が大きくなるににつれて痛みが強くなっていく傾向があります。
「側頭動脈炎」の場合、側頭部がズキンズキンと痛みます。また、関節痛や筋肉痛などの全身症状が現れます。炎症が目の血管にまで至ると失明してしまうこともあります。
何ともない日もあれば、痛みがある日もあり・・・という頭痛を繰り返している場合
いわゆる慢性的な頭痛の症状です。
後頭部や首を中心に、頭全体が締め付けられるような痛みは「緊張型頭痛」の特徴です。肩凝りや眼精疲労、同じ姿勢を続けることで筋肉が凝り固まり、血液の巡りが悪くなって起こります。
凝った場所を温めたり、軽い運動をすることで痛みが和らぎます。また、『ロキソニン』などの一般的な痛み止めも効果的です。
こめかみを中心にズキンズキンと痛み、動くと痛みが悪化する、吐き気がある、普段は気にならない光や匂いが不快に感じるなどの症状は「片頭痛」の特徴です。
「緊張型頭痛」とは異なり『ロキソニン』などの一般的な痛み止めでは効果がありません。「トリプタン製剤」と呼ばれる片頭痛のための治療薬を、病院で処方してもらう必要があります。
片方の目をえぐられるような激しい痛みが15~180分ほど続き、それが数日~数週間にわたって連続で起きたと思ったら、その後は数ヶ月~数年単位で何ともない、ということを繰り返すのは「群発頭痛」です。
「群発頭痛」は、じっとしていられないほどの痛みで、日常生活にも支障を来します。あまりの痛さに、自分の頭を銃で撃ち抜く人もいるほどで”自殺頭痛”とまで呼ばれています。
元々は片頭痛の治療薬である『イミグラン(一般名:スマトリプタン)』の皮下注射や、酸素の吸入が治療方法として認められています3)。
3) 日本頭痛学会 「慢性頭痛の診療ガイドライン (2006)」
また、痛み止めを1ヶ月に15日以上使っている場合には「薬物乱用頭痛」を疑う必要があります。この場合、薬を止めることで症状は改善していきます。
顔面もピリピリと痛む場合
電気が走るような、針で刺すような痛みは、”神経の痛み”である可能性があります。
帯状疱疹が治ったあと、顔から頭にかけてピリピリと痛みが残る場合があります。これは帯状疱疹の原因ウイルスが神経を傷つけていったことで起こります。こうした”神経の痛み”には『ロキソニン』など一般的な痛み止めは効きません。『リリカ(一般名:プレガバリン)』など、神経障害性疼痛に効く薬を使う必要があります。
数秒から数分の間、眉の内側から刺すような痛みが走る場合、「三叉神経痛」の可能性があります。朝の洗顔や髭剃り、歯磨きといった活動がきっかけで起こることがありますが、ほとんどの場合は数日で自然治癒します。
薬剤師としてのアドバイス:普段と様子が違ったら、すぐ病院へ
上に列挙したものはあくまで一例であって、他にも高血圧や緑内障、副鼻腔炎など様々な要因によって頭痛は起こります。痛みであれば何でも『ロキソニン』が効くわけではありません。自己判断で薬を勝手に使わないようにしましょう。
自分の頭痛の正体は何か、その正体に適した薬は何か、という判断は医師や薬剤師などの専門家に委ねるべきところです。いつもと少しでも様子が違うなと思ったら、病院を受診することをお勧めします。
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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