アルコール依存症に「バクロフェン」が効く?~飲酒量を減らす効果
回答:効果が学会報告で発表されたところ
2015年4月の欧州肝臓学会(EASL2015)で、アルコール依存症患者に「バクロフェン」を1年間続けて投与したところ、アルコール摂取量が大幅に減り、それに伴って肝機能などが改善する、という報告がされました。
この報告では「バクロフェン」を使うことで、平均した1日のアルコール摂取量が106gから18gにまで大幅に減少しています。これは、日本酒(アルコール度数13%)を毎日4合飲んでいた人が、ビール(アルコール度数5%)を毎日1缶で済むようになっている、ということに相当します。
このようにお酒の量が減ることによって、γ-GTPやASTといった肝機能の値が改善したことも併せて報告されています。
あくまで未だ学会での発表ですが、統計学的にも信頼性の高い「前向き試験」でもあることから、今後こうした使い方の安全性が確認されれば、広く用いられるようになっていくと考えられます。
回答の根拠:バクロフェンの薬理作用
バクロフェンは『リオレサール』や『ギャバロン』といった名前で、現在はけいれんの治療薬として使用されています。
この薬には脳にある神経伝達物質GABA(γ-aminobutyric acid)の受容体に作用することで、過剰な神経活動を抑える効果があります。基本的にGABAは脳の興奮を抑えて精神を落ち着ける作用があります。そのためGABAの働きを強めることで、お酒に対する激しい欲求も落ち着けるのではないか、と言われていますが、詳しいところはまだはっきりと解明されていません。
薬剤師としてのアドバイス:現在のアルコール依存症治療薬
バクロフェンをアルコール依存症に使用するには、これから薬の安全性や有効性を更に検討していく必要があります。
厚生労働省が安全性と有効性を確認したら”保険適用”となり、一般にも使用されていくことになります。そのため、今はまだどんな副作用が起こるのかもはっきりわかっていないため、安易に使うことができません。
現在、アルコール依存症の治療薬としては、『ノックビン(一般名:ジスルフィラム)』と『シアナマイド(一般名:シアナミド)』、『レグテクト(一般名:アカンプロサート)』という3種類の薬が用いられています。
『ノックビン』、『シアナマイド』はアルデヒド脱水素酵素を阻害するため、アルコールを摂取するとアセトアルデヒドが身体に蓄積します。これは二日酔いの状態と同じ状態です。
つまり、お酒を飲むと強制的に二日酔いのような吐き気や頭痛を催すため、お酒を飲みたいという気持ちが湧かなくなります1)。
1) ノックビン原末 添付文書
家族の前などで「今日はお酒を飲まない」と宣言した上でこの薬を飲むことで、より効果的であると言われています。しかし、二日酔いになっても良いからとお酒を飲んだり、そもそもお酒を飲みたいが故に薬を飲まなかったりするといったことが問題として挙げられていました。
※ピロリ菌の二次除菌に使用する『フラジール(一般名:メトロニダゾール)』にも似た作用があるため、この薬を使っている間は飲酒を控えることをお勧めします。
『レグテクト』は脳の神経伝達物質であるグルタミン酸の活動を抑えることで、お酒を飲みたいという欲求を抑える効果があります。グルタミン酸は、基本的に脳を興奮させる働きがあります。そのため、お酒を飲みたいという欲求を抑えることができるとされています。
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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