インフルエンザと診断されたのに、抗生物質を処方されたのは何故?
回答:細菌による二次感染を治療するため
インフルエンザは「ウイルス」が原因で起こるため、「細菌」を退治する抗生物質では治療できません。「ウイルス」と「細菌」は全く異なるものです。しかし、インフルエンザにかかっている時は、細菌による二次感染が非常に起こしやすいことがわかっています。この細菌二次感染の兆候が見られた場合には、抗生物質が処方されることがあります。
そのため、処方された抗生物質はインフルエンザの治療のためではなく、インフルエンザによって起こる細菌性二次感染の治療と考えるのが妥当です。
回答の根拠:細菌二次感染の怖さ
1918~1919年にかけて全世界で大流行し、全人類の3割が感染し、5,000万人以上が亡くなったと言われている”スペイン風邪”は、A型インフルエンザウイルスが原因で起きています。しかし、死亡者の直接の死因はインフルエンザではなく、細菌二次感染による肺炎であるとされています。
これは、インフルエンザを発症したあと、いったん症状が治まり熱も下がってくるが、5日ほど経過した後に再び発熱する、という経過をたどった患者が多数いる、という記録が残っているためです1)。
1) 財団法人労働科学研究所 東京医事新説第2107号
現在は抗生物質が発明され(抗生物質の開発は1940年頃です)、細菌二次感染がそれほど問題ではなくなってきました。
しかし、それでも2009年に流行した新型インフルエンザの死亡者は、肺炎球菌による細菌二次感染者を起こしていたこともわかっています。
こうした細菌二次感染は、高齢者や心臓に疾患を持つ人、呼吸器に疾患を持つ人などでより起こりやすい傾向があります。そのため、こういった高齢者や基礎疾患を持つ人はインフルエンザワクチンの優先接種対象であると共に、肺炎球菌ワクチンの優先接種対象にもなっています。
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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