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抗ウイルス薬 インフルエンザ

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インフルエンザの治療薬は、なぜ48時間以内に飲まないといけないの?

回答:ウイルスが増殖し終わる前に服用する必要があるから

 『タミフル(一般名:オセルタミビル)』など、現在使われているインフルエンザの薬は全て「ウイルスを退治する」薬ではなく、「ウイルスの増殖を抑える」薬です。そのため、ウイルスがまだ十分に増えていない状態、まだ増殖している段階で使う必要があります。

 この「増殖が終わる」までの目安が、「発症から48時間以内」です。
インフルエンザウイルスの数と48時間

 ただし、この48時間はあくまで一つの目安であって、48時間0分0秒という厳密な時間制限を意味するものではありません

回答の根拠:「ノイラミニダーゼ阻害薬」の作用

 現在使われているインフルエンザの治療薬は、以下の4種類があります。4種とも「ノイラミニダーゼ阻害薬」に分類される薬で、ウイルスが細胞の膜を破って飛び出してくるタイミングで作用し、ウイルスを細胞の中に閉じ込め、それ以上増えないようにする効果があります。

『タミフル(一般名:オセルタミビル)』
『イナビル(一般名:ラニナミビル)』
『リレンザ(一般名:ザナミビル)』
『ラピアクタ(一般名:ペラミビル)』

ノイラミニダーゼ阻害薬の作用点
 具体的には、インフルエンザウイルスは「ノイラミニダーゼ」という酵素を使って細胞の膜を破り、外へと飛び出してきます。「ノイラミニダーゼ阻害薬」はこの酵素を阻害し、増殖したウイルスが細胞外へ飛び出してくるのを防ぎます。ウイルスを直接退治できるわけではないため、このウイルスが細胞外へ飛び出す前に薬を使う必要があります。このタイムリミットの目安が「発症から48時間以内」です。

インフルエンザ治療の新薬『ゾフルーザ』

 インフルエンザの薬として、2018年に新しく『ゾフルーザ(一般名:バロキサビル)』が登場しました。
 この『ゾフルーザ』は、上記の「ノイラミニダーゼ阻害薬」とは異なる「エンドヌクレアーゼ阻害薬」という作用機序を持つ薬ですが、実際に得られる効果としては既存の薬と大差ありません。1回の服用で良いという便利さはありますが、高価なこと、耐性リスクもあること、使用実績に乏しいことから、積極的に使われる薬ではありません。

薬剤師としてのアドバイス:薬は早めが大事だが、「絶対必要」というわけではない

 『タミフル』や『リレンザ』はその作用の特徴から、48時間以内に治療を始めなければ十分な効果が得られません。そのため、薬を処方された初日「食後」や「朝夕」にこだわることなく、早めに治療を始めることが重要です。薬をもらった当日は、どのように薬を使えば良いか、何時間の間隔をおいて使えば良いか、主治医・薬剤師に確認するようにしてください。

 持病もなく健康な成人であれば、インフルエンザの薬は絶対に必要というわけでもありません。混雑した病院に行くのが大変であれば、水分補給に注意しながら安静しているというのも選択肢です(※『麻黄湯』などの漢方薬や、「アセトアミノフェン」はドラッグストアでも購入できます)。ただし、下記のような重症化リスクを抱える人や、重症化の兆候には十分に注意が必要です。

※インフルエンザが「重症化」しやすい人 1)
年齢:5歳未満(特に2歳未満)、65歳以上(特に介護施設の長期居住者)
女性:妊娠中または産後2週間
体質:BMIが40以上
持病:糖尿病、喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)、免疫不全、心不全・不整脈、腎障害・肝障害
服薬:「ステロイド」の内服中、「アスピリン」を長期服用している小児

※インフルエンザの「重症化」の兆候 2)
・呼吸困難や息切れ、呼吸が速い
・胸部や腹部の痛みと圧迫感
・眩暈や混乱、意識の混濁、反応が鈍い
・青みがかった肌
・ひどい嘔吐
・一旦症状が治まってからの再悪化

 1) CDC 「People at High Risk of Developing Serious Flu–Related Complications」
 2) CDC 「Influenza(Flu) What are the emergency warning signs of flu sickness?」

 このように、インフルエンザの「重症化」とは、38℃以上の高熱が出て関節が強く痛むことではなく、死亡や入院など生命に関わる事態に陥ることを指す点に注意が必要です。

 

+αの情報:『タミフル』と異常行動の因果関係は

 発売当初に問題となっていた『タミフル』と「異常行動」との因果関係は、現在否定されています
 つまり、薬の有無に関わらず、インフルエンザそのものが原因となって「異常行動」を起こす恐れがありますので、治療中はいつもより注意深く様子を見守る必要があります。

~注意事項~

◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。

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