『バイアグラ』で失明することがある?~NAIONとの因果関係
回答:添付文書にもリスクが記載
海外では『バイアグラ(一般名:シルデナフィル)』を服用していた際に、稀に視力低下・喪失の原因となりうる「非動脈炎性前部虚血性視神経症(NAION)」という症状が起こることが報告されてきました。しかし、これまでは”薬剤との因果関係”がはっきりとわかっていませんでした。
2015年になり調査が進んだ結果、『バイアグラ』を飲んでから約1日ほどの期間は、このNAIONを発症するリスクが2倍近くに高まることが報告され、添付文書も改訂されました1)。
1) バイアグラ錠 添付文書
引き続き、特に45歳以上で、糖尿病や高血圧、高脂血症、喫煙などの危険因子を持つ人が『バイアグラ』を使用する際には、急な視力低下等に注意する必要があります。
回答の根拠:他の同効薬も含めて、「PDE5阻害薬」全体でリスク上昇
2005年には既に『バイアグラ』を服用してから36時間以内に「非動脈炎性前部虚血性視神経症(NAION)」を発症した人の症例を報告しています2)。
2) J Neuroophthalmol.25(1):9-13,(2005) PMID:15756125
このNAIONは、視神経に血液が流れにくくなることで、急に視力が低下したり、最悪の場合には失明する恐れのある症状のことです。糖尿病でも血管が詰まることで視神経に支障を来すことがあり、当時は薬が原因なのか、持病が原因なのかがはっきりせず、薬との因果関係はわからないままでした。
そのため、あくまで注意喚起として”因果関係は明らかになっていないが”という表現で添付文書に記載されていました。
今回、『バイアグラ』だけでなく、『シアリス(一般名:タダラフィル)』や『レビトラ(一般名:バルデナフィル)』といった「PDE5阻害薬」に分類される全ての薬で、このリスクが上昇することが明らかになりました。薬を服用してから、半減期の5倍の時間が経過するまでは、NAIONを発症するリスクが約2倍に高まる、と報告されています3)。
3) Jounal of Sexual Medicine.12(1):139-51,(2015) PMID:25358826
薬を使用している場合は、服用後の急な視力低下が起きた場合はすぐに薬の服用を中止し、眼科を受診するようにしてください。
※半減期の5倍の時間 1,4,5)
『バイアグラ(一般名:シルデナフィル)』・・・半減期3.23時間 →5倍は約16時間
『シアリス(一般名:タダラフィル)』・・・・・・・・半減期14~15時間 →5倍は約3日
『レビトラ(一般名:バルデナフィル)』・・・・・半減期3.2~5.3時間 →5倍は約1日
4) シアリス錠 添付文書
5) レビトラ錠 添付文書
補足説明:個人輸入では副作用が起きても自己責任
薬を正しく使用していたにも関わらず、大きな副作用に見舞われてしまった場合、「医薬品副作用被害救済制度」という公的機関の補償を受けることができます。
しかし、個人輸入をして使用していた場合などは、”正しい使用”と見なされず、この制度の対象外となります。万が一の事態に備えて、薬はきちんと医師や薬剤師の指導のもとで使用しましょう。
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
この記事へのコメントはありません。