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薬物動態学 相互作用

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「グレープフルーツジュース」で、血圧の薬を飲んだらダメなのは何故?

回答:薬が効き過ぎて、低血圧を起こす恐れがあるから

 高血圧に使う「Ca拮抗薬」と「グレープフルーツジュース」を一緒に飲むと、薬が効き過ぎて、低血圧を起こす恐れがあります。
これは、「グレープフルーツジュース」に含まれる「フラノクマリン」が、「Ca拮抗薬」の分解を邪魔することで起こります。
フラノクマリンとCa拮抗薬

 そのため、「Ca拮抗薬」を飲んでいる間は、「グレープフルーツジュース」の大量摂取を避ける必要があります。
また「グレープフルーツ」に限らず、「ブンタン」や「ダイダイ」など、「フラノクマリン」を含む柑橘系は同様の現象を起こす恐れがあるため、注意してください。

 これらの果物やジュースを日常的に摂っている人は、一度、そのままの状態で主治医に相談するようにしてください。急に果物やジュースを止めてしまうと、薬の効果も変わって体調に悪影響を与える恐れがあります。

回答の根拠:「フラノクマリン」によるCYP3A4阻害作用

 「グレープフルーツジュース」に含まれる「フラノクマリン」は、小腸にある酵素「CYP3A4」を阻害します。

 普段、この「CYP3A4」は「Ca拮抗薬」を解毒・分解していますが、「フラノクマリン」によって阻害されると「Ca拮抗薬」を分解できなくなります。その結果、「Ca拮抗薬」の血中濃度は高くなるため、薬が効き過ぎるようになります。
フラノクマリンとCYP3A4

 特に、『バイミカード(一般名:ニソルジピン)』を「グレープフルーツジュース」で服用した場合、水で服用した場合と比べて血中濃度が4倍にまで上がり、頭痛などの副作用を起こすことが確認されています1)。
また、『スプレンジール(一般名:フェロジピン)』も血中濃度の上昇によって血圧が低下し、高齢者では心拍数の増加などの副作用が起きたことが報告されています2)。

 1) Clin pharmacol Ther.67(3):201-14,(2000) PMID:10741622
 2) Clin pharmacol Ther.68(1):28-34,(2000) PMID:10945313

肝臓の代謝酵素には、基本的に影響しない

 この「CYP3A4」という酵素は肝臓にも存在し、様々な薬の分解に関係しています。「グレープフルーツジュース」が影響するのは小腸の酵素だけで、肝臓の酵素は阻害しないことがわかっています3)。ただし、2倍濃縮のジュースを1日600mL飲むような大量摂取を行った場合は、肝臓のCYP3A4も阻害する可能性があります4)。

 3) 大日本住友製薬 Ca拮抗薬とグレープフルーツの相互作用
4) Clin Pharmacol Ther.66(5):448-53,(1999) PMID:10579471

薬剤師としてのアドバイス:果肉を食べるだけでも、注意は必要

 グレープフルーツの生の果実にも「フラノクマリン」は含まれていますが、濃縮されたジュースほど大量には含まれていません。そのため、デザートとして少量食べる程度であれば問題ないこともあります。
しかし、果肉の摂取でもまるごと1個(約200g)食べたような場合は、血中濃度に影響するという報告もあります5)。ジュースでなければ大丈夫と自己判断することは危険です。

 5) 薬学雑誌.122(5):323-9,(2002)

 グレープフルーツが好きでずっと控えるのは辛い、という場合は、どの程度の量であれば食べても問題ないのか、高血圧の状況や薬の種類も含めて主治医に伝え、個別に対応してもらうことをお勧めします。

+αの情報①:『アムロジン』や『ノルバスク』は影響を受けにくい

 「Ca拮抗薬」の中でも『アムロジン(一般名:アムロジピン)』や『ノルバスク(一般名:アムロジピン)』は、「グレープフルーツジュース」と一緒に飲んでも血圧には影響しない、とする報告もあります6)。

 6) Br J Clin Pharmacol.50(5):455-63,(2000) PMID:11069440

 ただし、敢えて「グレープフルーツジュース」で服用するメリットは無いため、よほどの事情がない限りは控えることをお勧めします。

+αの情報②:グレープフルーツジュースで、薬の効き目が弱まることもある

 「グレープフルーツジュース」と一緒に飲むと、薬の効き目が弱まることもあります。
アレルギー治療に使う『アレグラ(一般名:フェキソフェナジン)』は、「グレープフルーツジュース」と一緒に飲むと、血中濃度が下がってしまうことが報告されています7)。

 7) Clin Pharmacol Ther.71(1):11-20,(2002) PMID:11823753

~注意事項~

◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。

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