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知っておくべきこと 薬の飲み方

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家に残っている薬(残薬)、もらった時と同じ症状だったら飲んでも良い?

回答:ダメ

 ダメです
 自己判断で家にある薬を勝手に使うことは、以下の5つの理由からお勧めできません。

1. 勝手に使った場合の副作用は、補償されない
2. 同じ症状だと思っても、違う病気であることも多い
3. 時間が経つと、適した薬も変わる
4. 薬には使用期限がある
5. 自己判断で使うとデメリットの大きな危険な薬がある

 基本的に、処方された薬は残さず、処方された時に使い切るようにしてください
 それでも何らかの事情で薬が残っている場合は、その薬を持って病院へ行き、使って良いかどうかを医師に確認してもらうようにしてください。

 またその際、次にまた似たような症状が出た場合、その薬を使っても良いかどうかを確認しておくことをお勧めします。
 胃薬や整腸剤、アレルギー薬、痛み止めのように使い方がそれほど難しくない薬であれば、常備薬として置いておくよう医師から指示されることもあります。

使うべきでない理由①:勝手に使った場合の副作用は、補償されない

 薬は、医師・薬剤師の指示通りに正しく使っていても、副作用が起きてしまうことがあります。
 こうした「避けられない副作用」が起きた場合には、「医薬品副作用被害救済制度」という公的機関の補償を受けることができます。

 ところが、自己判断で勝手な使い方をした場合や他人の薬を使った場合など、正しく薬を使わなかった際には、この制度の対象外となってしまいます。
 実際、この制度の不支給理由の25%程度は「医薬品を適正に使用していないため」というものです1)。万が一の際には補償を受けられるよう、勝手な使い方はお勧めできません。

 1) 独立行政法人「医薬品医療機器総合機構」 医薬品副作用被害救済制度に関するQ&A

使うべきでない理由②:同じ症状に見えても、異なる病気であることも多い

 自分では「同じ症状」と思っても、専門家から見れば全く異なる病気であることはよくあります。

 「頭痛」でも、片頭痛には『ロキソニン(一般名:ロキソプロフェン)』などの痛み止めは効果が期待できないため、「トリプタン製剤」が必要です。
 「腹痛」でも、胃が荒れている場合に『ロキソニン』などの痛み止めを服用すると、更に胃が荒れてしまい逆効果になります。
 「吐き気」でも、「吐き気」と言っても、その原因が胃や腸にあるのか、あるいは三半規管や脳、精神的なものであるかによって、使うべき薬は異なります。
 「痒み」でも、水虫で痒い部分にステロイド外用剤を塗ると、水虫菌を退治しようとする免疫を抑えることになるため、逆効果になります。

 こうした症状の見極め・診断は医師に任せるべきもので、決して素人が自己判断で「同じ症状」と判断できるものではありません。

使うべきでない理由③:時間が経つと、最適な薬も変わる

 以前に薬をもらった際には適した薬であっても、今の体調や状況でも同様に適しているとは限りません。
 症状も変われば、体調や季節、環境も変わっています。特に、妊娠中から授乳中に変わると、安全に使用できる薬も大きく変わります

 こうした事情から、処方箋も発行から4日以内が使用期間で、それ以上古い処方箋では薬は調剤できない規則になっています。

使うべきでない理由④:薬には使用期限がある

 薬が見るからに腐ることはありませんが、使用期限を過ぎると効き目が弱まったり、成分が変化してしまったりすることがあります。こうした変化によって、効果が得られないどころか、予想できないような副作用を起こす恐れもあります。

 そのため、古い薬は回収できないような処理を施した上で廃棄するようにしてください。

 なお、薬のシートには「ロット番号」と呼ばれる製造管理のための番号が刻印されています。この番号を、製薬メーカーのWebサイト等で調べることによって、正しく保管されていた際の「有効期限」を知ることができます。

使うべきでない理由⑤:自己判断の使用が極めて危険な薬がある

 抗生物質は、誤った使用方法をすると「耐性菌」を生み、次から薬が効かなくなってしまう恐れがあります。そのため、抗生物質を処方された際は、症状が治まってきても最後まで飲み切る必要があります。
 『タミフル(一般名:オセルタミビル)』など、ウイルスを退治する薬も同じです。

 また、ステロイド外用剤は塗る場所によって厳密に使い分けが必要です。顔など皮膚の薄い部分に、強力なステロイド外用剤を使ってしまうと、皮膚が薄くなるなどの副作用のリスクが高くなります。

 これらの薬は自己判断で勝手な使い方をすると危険です。薬が残っている場合は必ず医師・薬剤師に適切な処理方法を相談するようにしてください。

薬剤師としてのアドバイス:薬局の活用方法~受け取る薬の調節

 「いつも使っている薬が家に余っている」というような場合は、薬局を活用してください。

 「どの薬がどれだけ家に残っているか」を薬局で薬剤師に伝えて頂ければ、お渡しする薬の量を調節することが可能です。こういった情報伝達は、お薬手帳に書き込んでおくことで確実に伝えることができます。

※薬局で伝える項目
・薬の名前
・薬の名前についている数字(mgなど)
・薬の総数
・いつ処方された薬か

 

~注意事項~

◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。

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【書籍】
■羊土社
薬の比較と使い分け100(2017年)
OTC医薬品の比較と使い分け(2019年)
ドラッグストアで買えるあなたに合った薬の選び方を頼れる薬剤師が教えます(2022年)
■日経メディカル開発
薬剤師のための医療情報検索テクニック(2019年)
■金芳堂
医学論文の活かし方(2020年)
服薬指導がちょっとだけ上手になる本(2024年)

 

【執筆】
じほう「調剤と情報」「月刊薬事」
南山堂「薬局」、Medical Tribune
薬ゼミ、診断と治療社
ダイヤモンド・ドラッグストア
m3.com

 

【講義・講演等】
薬剤師会(兵庫県/大阪府/広島県/山口県)
大学(熊本大学/兵庫医科大学/同志社女子大学/和歌山県立医科大学)
学会(日本医療薬学会/日本薬局学会/プライマリ・ケア連合学会/日本腎臓病薬物療法学会/日本医薬品情報学会/アプライド・セラピューティクス学会)

 

 

【監修・出演等】
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