睡眠薬は、いつ飲んだら良いの?~筋弛緩作用、催眠効果の減弱、健忘症
記事の内容
回答:布団に入る直前に飲む
睡眠薬は就寝直前、布団に入る直前に飲むのが基本です。
特に、効き始めるのが早い短時間型の睡眠薬の場合、30分以内に効果が現れ始めるものもあります。薬を服用してから入浴したり、階段を昇り降りしていると、急な睡魔に襲われたり、足元がふらついたりして思わぬ事故を招きかねません。
1日の活動を全て終えて、あとは眠るだけの状態になってから服用するようにしてください。
回答の根拠①:筋弛緩作用で足元がふらつく
ベンゾジアゼピン系の薬は、「筋弛緩作用」も併せ持っています1)。
そのため、眠気を感じていなくとも、筋肉があちこち緩んでいて、足元がふらつくことがあります。
1) ソラナックス錠 添付文書
薬を服用したあと、眠気を感じてから寝室に向かう、という人も少なくありませんが、足元がふらついた状態での階段の昇り降りは非常に危険です。
薬を服用した後は、布団に入ることをお勧めします。
筋弛緩作用の少ない『マイスリー』
入眠障害に用いる『マイスリー(一般名:ゾルピデム)』は、筋弛緩作用が弱く2)、特に夜間に起きてトイレに行く機会が多い高齢者に対しては、転倒などのリスクを軽減できる薬として、広く使用されています。
2) マイスリー錠 インタビューフォーム
回答の根拠②:睡眠薬の効果が弱まる
睡眠薬は、あくまで睡眠を助けるためのものであって、いつでも強制的に眠れるようになるものではありません。
たとえ睡眠薬を服用しても、その後ずっとパソコンやスマートホン等の明るい液晶画面を見続けていたりすると、脳はいつまでたっても睡眠モードに移行しません。
睡眠薬を服用した後は、部屋を暗くし、布団に入って目を閉じていることをお勧めします。
光刺激による体内時計の調節
『ロゼレム(一般名:ラメルテオン)』は、体内時計を司る「メラトニン」という物質の働きを助けることで、催眠効果を発揮する薬です。
この「メラトニン」は、眼から入ってくる光の刺激で分解されてしまうため、スマートホン等の液晶画面による悪影響はより大きいと言えます。
回答の根拠③:記憶が飛ぶことがある
『ハルシオン(一般名:トリアゾラム)』などの短時間作用型ベンゾジアゼピン系の睡眠薬を使うと、薬が効き始めてから眠りにつくまでの出来事や、夜間に起きた際の出来事を記憶していないことがあります3)。
3) ハルシオン錠 添付文書
そのため、薬を服用してから何か用事をしたり、夜中に電話が鳴って受け答えをしたりしても、翌朝その記憶が残っていない可能性があります。
こうした健忘症は稀で、しかも一時的なもので脳に障害の残るものでもありませんが、日常生活や仕事上に様々なトラブルを生む恐れがありますので、避けるに越したことはありません。
薬剤師としてのアドバイス:誤った生活習慣も、不眠の大きな原因になる
不眠症が心身の健康に与える悪影響は極めて大きなものです。そのため、必要に応じて睡眠薬の力を借り、適切な睡眠時間を確保することは重要です。
しかし、睡眠薬に頼り切りになり、誤った生活習慣を放置することは避けるべきです。
起きたら雨戸やカーテンを開けて朝日を浴びる、昼寝をし過ぎない、適度に運動する、カフェインを摂り過ぎない、夜になってからパソコンやスマートホン等の明るい液晶画面を長時間見ない、寝る時には部屋を暗くする、必要以上に長時間布団の中で過ごさない・・・など、生活習慣を見直すことも大切です。
特に慢性的な不眠症に対しては、睡眠薬をいたずらに増やすよりも、こうした「認知行動療法」を優先させようとする動きもあります。
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
この記事へのコメントはありません。