抗生物質の飲み方が1日1回だったり、1日3回だったりするのは何故?
回答:まとめて飲むのが良いか、分けて飲むのが良いか、抗生物質によって違う
抗生物質の抗菌力は、「到達する最高血中濃度」か、「一定以上の血中濃度を維持する時間」によって決まります。 「到達する最高血中濃度」で抗菌力が決まる抗生物質は、1日量をできるだけ少ない回数にまとめて服用するのが効果的です。
「一定以上の血中濃度を維持する時間」で抗菌力が決まる抗生物質は、1日量をできるだけ複数に分割して服用するのが効果的です。
敢えて異なる飲み方で服用するメリットはありません。薬は、医師・薬剤師の指示通り、用法を守って使用するようにしてください。
回答の根拠①:「濃度依存性」の抗生物質
「到達する最高血中濃度」で抗菌力が決まる「濃度依存性」の抗生物質には、「ニューキノロン系」や「アミノグリコシド系」などが該当します。 例えば、「ニューキノロン系」の抗生物質である『クラビット(一般名:レボフロキサシン)』は、通常500mgを1日1回で服用します1)。
1) クラビット錠 添付文書
この『クラビット』を1日2~3回に分けて服用してしまうと、到達する最高血中濃度が低くなり、抗菌力が弱まってしまいます。
回答の根拠②:「時間依存性」の抗生物質
「一定以上の血中濃度を維持する時間」で抗菌力が決まる「時間依存性」の抗生物質には、「β-ラクタム系(ペニシリン系・セフェム系・カルバペネム系)」などが該当します。これら「時間依存性」の抗生物質は、「最小発育阻止濃度(MIC)」以上の濃度を維持した時間が抗菌力になります。
例えば、「セフェム系」の抗生物質である『メイアクト(一般名:セフジトレン)』は、通常1回100mgを1日3回服用します2)。
2) メイアクト錠 添付文書
これを1回にまとめて服用してしまうと、途中で血中濃度がMICを下回り、抗菌力が弱まってしまいます。
最小発育阻止濃度(MIC)とは
抗生物質がある程度の濃度で存在すると、細菌が発育・増殖できなくなります。これを「最小発育阻止濃度(MIC)」と呼びます。「時間依存性」の抗生物質は、MICを越えている時間が長ければ長いほど強い抗菌力を発揮します。
薬剤師としてのアドバイス:副作用や耐性菌の出現を防ぐために
医師・薬剤師が抗生物質を使う際には、上記のような理論に基づいて薬の種類や服用方法を選択します。1日3回で服用するように言われた薬を、面倒だからとまとめて1回で服用してしまうと、薬本来の効果が得られないばかりか副作用の危険も高まってしまい、非常に危険です。
特に、抗生物質はいい加減な方法で使うと「耐性菌」を生む原因となり、次から薬が効かなくなってしまう可能性もあります。世の中にある抗生物質の種類には限りがありますので、耐性菌を次から次へと出現させていると、いずれどんな薬も効かないような状態になってしまいます。
処方された抗生物質は指示通りに服用し、症状が治まってきても最後まで飲みきって、体内から菌を完全に退治するようにしましょう。
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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