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解熱鎮痛薬・NSAIDs 専門用語解説

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痛みの違いから考える薬の効き方~「体性痛」「内臓痛」「神経障害性疼痛」の分類

痛みを正しく判別し、適切な薬を使うことが大切

 『ロキソニンは腹痛に効くのか?』、『ロキソニンだけで片頭痛は治らないのか?』といった日常的な疑問から、『癌では病巣部から離れた場所に痛みを感じるのは何故か?』、『内臓痛にNSAIDsは効かないのか?』といった病気の謎まで、こうした疑問は「痛み」を正しく理解することで解決することができます。

 痛みの神経学的な分類、「体性痛」、「内臓痛」、「神経障害性疼痛」という分類は、特にがんの疼痛ケアに重要なものですが、普段の腹痛や頭痛に対しても応用することができます。

体性痛①:物理的な損傷による痛み

 体性痛は、組織に何らかの損傷や炎症が起きた際に感じるものです。この痛みを感じる場所は、損傷がある部位に限られています。一定の強さの痛みに加えて、時に拍動性の痛みや疼くような痛みを合併します。

 さらに身体を動かすことによって痛みが増強することも特徴です。骨や関節など深部組織に痛みの原因となる損傷があるような場合には、損傷部から離れた場所に痛みを感じることがあります。

体性痛②:鋭い痛みと、疼くような痛みに分かれる理由

 体性痛は、外側系と呼ばれる新脊髄視床路の「Aδ線維」と、内側系と呼ばれる旧脊髄視床路の「C繊維」という2種類の感覚神経を経由して伝わります。この2種類の感覚神経は伝導速度が異なり、伝える痛みが異なります。
・Aδ繊維(直径3μm、伝導速度15m/s)」・・・身体を動かした時や損傷部位を刺激した時に感じる、鋭い痛み
・C繊維(直径1μm、伝導速度1m/s)」・・・・・疼くような、場所がハッキリしない広く鈍い痛み

 これらの神経の終末には「侵害受容器」があります。損傷を受けた組織はプロスタグランジンなどの物質を放出します。この「侵害受容器」がプロスタグランジン等によって刺激を受けると痛みを感じることになります。『ロキソニン』等のNSAIDsは、プロスタグランジンの産生を抑えることによって痛みを和らげますので、体性痛に効果があります。

内臓痛①:内臓の炎症、閉塞、圧迫、痙攣による痛み

 内臓痛は食道、胃、小腸、大腸などの消化管の炎症や閉塞、肝臓や腎臓、脾臓などの炎症や腫瘍による圧迫、臓器被膜の急激な伸展が原因で発生する痛みのことです。例えばがんでは、癌細胞が内臓へ浸潤したり、がん組織が大きくなって他の組織を圧迫することで内臓痛を起こします。あるいは胃腸炎では消化管の炎症に加え、腸が異常な動きをしていることで内臓痛を起こします。

 内臓痛は、体性痛とは異なり、機械的な刺激では痛みが起こりません。そのため身体を動かしても痛みが増強しません。「深く絞られるような」あるいは「押されるような」と表現される痛みで、痛む場所がぼんやりしていて明確ではないのが特徴です。

内臓痛②:痛みが広い範囲で漠然と、時には病巣と離れた場所で感じる理由

 内臓痛も「Aδ繊維」と「C繊維」によって伝わりますが、「C繊維」の割合が多く、また複数の経路に分散されて伝達されます。そのため、痛みが広い範囲にわたって漠然と感じられると考えられています。
 また、内臓の周辺で炎症が起きると、神経の興奮閾値が低下し、普段は反応しないような刺激によって「C繊維」が活性化されるようになります。こうしたことが原因で、痛みがだんだんと強くなっていく、病巣部から離れた場所で痛みが発生する、といった現象が起こると考えられています。

 内臓痛も体性痛と同様、「侵害受容器」を介して痛みが伝わるのでNSAIDsによって和らげることが可能です。しかし、痛みを抑えるよりも、痛みの原因となっている内臓の閉塞や痙攣を抑える薬の方が適切である場合もあります。日常の「腹痛」にロキソニンを安易に使わない方が良いのはそのためです。

神経障害性疼痛①:神経が損傷して起きる痛み

 神経組織が直接損傷を受けた際に感じる痛みのことです。障害された神経の支配領域によって様々な痛みとして現れます。特にがん性疼痛では神経組織の浸潤が起こるために高い頻度で生じます。

①灼熱痛:焼けるような痛み
②電撃痛:発作的に生じる、槍で突き抜かれるような痛み
③痛覚過敏・鈍麻:痛覚に対する感受性が亢進・低下する
④感覚過敏・鈍麻:刺激に対する感受性が亢進・低下する
⑤アロディニア(allodynia):通常では痛みを起こさない、触れるなどの刺激で痛みを感じる

神経障害性疼痛②:痛みに過敏になる理由

 末梢の感覚神経が障害を受けると、神経は自然発火するように勝手に持続的な興奮を起こし、神経の興奮閾値が低下(末梢性感作)します。この末梢性感作が起こると、脊髄神経を興奮させるグルタミン酸やサブスタンスPといった神経伝達物質が放出され、NMDA受容体が活性化し、更に脊髄神経は強く興奮するようになります。このことが痛覚過敏やアロディニアの原因と考えられています。

 糖尿病による神経障害や、帯状疱疹の後遺症として残る痛みにもこのタイプの痛みがあります。神経障害性疼痛は、体性痛や内臓痛と異なり、侵害受容器が刺激されていない状況で痛みが発生しているため、NSAIDsのような「侵害受容器での痛み伝達を阻害する」薬の効果は期待できません。
 現在は『ノイロトロピン(一般名:ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液)』や『リリカ(一般名:プレガバリン)』など、神経障害性疼痛に有効な薬が登場しています。

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