『ゾーミッグ』や『アマージ』等の「トリプタン製剤」を、あらかじめ飲んでおいたら片頭痛は予防できる?
記事の内容
回答:できない
「トリプタン製剤」は全般的に半減期が短く、すぐに血液中から消失してしまいます。そのため、予防的に服用しても効果は期待できません。
「トリプタン製剤」は、片頭痛の発作が起きてから使用する薬です。
例外的に、月経周期によって悪化する片頭痛の場合に限り、『アマージ(一般名:ナラトリプタン)』を予防的に服用することもあります。
ただし、この場合も使用期間や使用回数は医師によって厳密に指示されます。「トリプタン製剤」は必要以上に使用すると、かえって頭痛を起こしやすくなることもあります。決して、自己判断ではむやみに予防的に使用しないでください。
回答の根拠①:「トリプタン製剤」の短い半減期と、予防投与の是非
「トリプタン製剤」は全般的に半減期が短い薬です。
※各トリプタン製剤の半減期
『イミグラン(一般名:スマトリプタン)』 → 1.8時間
『ゾーミッグ(一般名:ゾルミトリプタン)』 → 2.9時間
『レルパックス(一般名:エレトリプタン)』 → 3.2時間
『マクサルト(一般名:リザトリプタン)』 → 1.6時間
『アマージ(一般名:ナラトリプタン)』 → 5.1時間
そのため、片頭痛が起こりそうだからと早めに薬を飲んでおいたとしても、実際に片頭痛が起きてきた頃には既に薬が身体から抜けてしまっている、といったことになります。
こうした観点からも、トリプタン製剤を予防的に使用することは全く理にかなっていません。
実際、現在発売されている「トリプタン製剤」は、いずれも添付文書に本剤は片頭痛の頭痛発現時に限り使用し、予防的に使用しないこと、と記載されています1)。
1) ゾーミッグRM錠 インタビューフォーム
回答の根拠②:『アマージ』の予防効果に対する可能性
現在、「トリプタン製剤」の予防的な使用は保険適応でも認められてはいません。
しかし、重度な月経時片頭痛に限っては予防的に使用することがあります。これは、月経周期が一定している場合、片頭痛の発生が予測できるからです。
この場合、月経の2~3日前から1週間程度の期間、「トリプタン製剤」を続けて服用します2)。特に『アマージ』は半減期が5.1時間とトリプタン製剤の中では最も長く、薬の効果が持続する薬のため先行投与に適しています3)。
2) Neurology.51(1):307-9,(1998) PMID:9674831
3) Headache.47(7):1037-49,(2007) PMID:17635595
こうした予防的な使い方でも、「トリプタン製剤」は「月経の2~3日前から1週間程度」という厳密に決められた方法かつ短期間で服用します。これは薬の使い過ぎで起こる「薬物乱用性頭痛」を防ぐという意味でも重要です。
決して、自己判断で予防的に飲んだり飲まなかったりという使い方をする薬ではありません。
薬剤師としてのアドバイス:「トリプタン製剤」の使い過ぎに注意
「トリプタン製剤」を月に10回以上使うことが続くと、薬物過剰による別の頭痛「乱用性頭痛」を引き起こす恐れがあります。
こういった場合、予防薬を使うなど、頓服薬である「トリプタン製剤」の使用を減らす必要があります。
片頭痛を予防する薬としては、『ミグシス(一般名:ロメリジン)』や『トリプタノール(一般名:アミトリプチリン)』などの薬に保険適用が認められています。
こうした薬は非常に安価なので、「トリプタン製剤」を頻繁に使うようであれば、一度主治医の先生と予防薬について相談することをお勧めします。
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します
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